宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(31)
「Windows 10」以前のOSを使い続けるということを考える
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届け! 今回は、最新OSではないレガシーOSを安全に使うための考え方について紹介します。
先日、電車の中にあるデジタルサイネージで、マイクロソフトのCMが流れていました。内容はもちろん、最新OSである「Windows 10」にアップグレードしよう! というものです。リリースされて早3年が経過していますので、確かにそろそろ移行が完了してもよいころだとは思います。既に、ほとんどの個人PCはWindows 10になっているでしょうしね。
しかし、こと企業内、特に製造業の現場では、「Windows 2000」や「Windows XP」をベースとするエンベデッドOSが今も現役で稼働している事例も多くあります。例えば、製造設備の表示部(UI回り)にWindows系のOSが使われるケースが見られますが、中には機器の製造ベンダーが倒産してしまいOSのアップグレードどころか保証もないといった場合もあるでしょう。このようなときは、アップグレードをするよりも「いかに安全に使うか」の方が企業にとって重要なことかもしれません。
もちろん、本来ならば可能な限り最新のアップデートパッチを適用し、かつ最新OSにアップグレードすべきです。ただ、さまざまな事情によりそのような手段が取れないケースもあり得ます(特に製造業では)。そのような場合、アップデート/アップグレード以外の方法で、機器の安全を確保する必要があります。今回はその方法について考えてみましょう。
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基本は「スタンドアロン」運用だが……
まず考えるべきは、魑魅魍魎(ちみもうりょう)渦巻くインターネットから距離を取ることでしょう。これは既に、ほとんどの国内製造業が実践していることでもあると思います。最近では、自治体や学校も「インターネット分離」の名の下に、大切なデータが存在するエリアのセグメントを分け、インターネットから離れることで、安全を確保するように努めているそうです。
あの「WannaCry」騒動の当初も、特にヨーロッパ圏など海外での被害報道に比べ、日本においてはほとんど実被害が報道されませんでした。これは一説によると、“しっかりとインターネットから分離されていたこと”が被害拡大を防いだ一因だったとされています(しかし、その後現在に至るまで登場している、“WannaCry亜種”の国内感染例はそれなりにありますので、慢心してはならないというのが実情ですが……)。
とはいえ、この点で一番のリスクとなり得るのは「分離したつもり」になっているということです。工場などのネットワークでは、持ち込まれたUSBメモリを介して外部から脅威が侵入することも考えられますし、テザリングを使ってインターネット接続してしまうリスクもあるでしょう。このような思わぬ侵入がないよう、リスクの可能性をできる限りつぶしていく必要があります。
旧Windowsを使わなくてはならない端末を絞り、動作を把握する
もう1つのリスク低減方法は、古いOSが動く装置や設備において“動作を制限する”ということです。
こうした機器上で古いWindows系のエンベデッドOSが稼働していたとしても、そこでOffice文書を作成したり、ネットサーフィンをしたりすることは基本的にあり得ません。であれば、装置や設備の動作に関わるアプリ(プロセス)だけを動かす設定にして、余計なプロセス、特にマルウェアなどが動作しない環境にしておくべきです。
エンベデッド系のOSではそうした機能があらかじめ備わっていることもありますし、最近ではサポートの切れた旧OSのために、このようなアプリケーション制限を適切に設定するツールも増えてきました。もし、まだそのようなソリューションを導入せずに旧OSを使っているのであれば、早急に導入検討することをオススメします。
アップグレードしなくてもやり方はある……個人PCも一緒?
個人的にはWindowsもmacOSも、Linuxも全て例外なく「最新のOSにすべきだ」と考えています。唯一例外は、まさに製造現場の装置や設備において、汎用(はんよう)OSであるWindowsなどを利用しているケースで、かつインターネットと分離して、想定可能なリスクを下げた場合にのみ利用できる、といった条件付きです。
とかく企業内においては、OSアップグレードに慎重な姿勢を取る場合が多く、そのため、そこで働く従業員である人たちもなぜか「アップグレードは怖い」という印象をお持ちだと思います。
しかし、企業内においてもオフィス業務を行うPCを含め、現在ではサイバー攻撃が当たり前になっています。だからこそ、サイバー攻撃が狙う脆弱(ぜいじゃく)性がなくなるようにアップグレードを行う必要があります。企業内、特に製造現場の装置や設備に対して「アップグレードは慎重にすべきだ」と学んだからといって、個人PCに対しても同様に慎重になり過ぎる必要はありません。ぜひ、しっかりとアップグレードを行うようにしてください。
製造業においては、リスクを適切に評価し、安全側に寄せた考え方をするのが当たり前だと思います。そのリスクの一つとしてサイバー攻撃も考慮していただき、「古いOSを利用しなくてはならないが、それでも安全に運用できる方法はないか」ということを考慮しつつ、今あるものを有効活用するようにしてください。決して、「古いOSをだましだまし使い、何も起こらないことを天に祈る」的な対処方法にならないように……。
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著者紹介:
宮田健(みやた たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追い掛けている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。現在、ITmediaエンタープライズにて、もはや誰もが人ごとではないITの課題や話題を紹介する「半径300メートルのIT」を連載中。また、それをまとめた書籍「デジタルの作法~1億総スマホ時代のセキュリティ講座」も発売中。
筆者より:TechFactoryでの本連載では、ITセキュリティの「あるべき論」「正論」だけでなく、モノづくりに携わる方たちに「気楽に」「楽しく」セキュリティを考えていただけるように、さまざまな話題を取り上げたいと思います。「セキュリティっていわれてもねえ……」と思わず考えてしまった皆さまに覚えていただけるようなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
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