スマートファクトリージャパン 2018
なぜConnected Industriesは必要か? 製造業に迫る4つの「危機」(2/2 ページ)
Connected Industriesとは何か
「Connected Industries」とは、日本の産業が目指す姿(コンセプト)として提唱された概念であり、大まかに言えば「目的を持って人・物・技術・組織などがつながることで、新たな価値創造を図ること」である。“つながる”モノは千差万別であるため、「どのようにつなげるか」の方法や技術はそれぞれで異なる。
Connected Industriesは「目指す姿(概念、コンセプト)」であるために抽象的であり、具体論とは切り離して理解しなくてはならないが、そのハードルを越えてこそ、新たな価値創造につながるというのが経済産業省の示す基本的な方針である。
「(Connected Industriesが)抽象的だという批判もあるが、そうした抽象的な概念、システム思考といった部分にチャレンジする必要がある。“目に見える形が思い浮かばない”“何をしたらいいのか”“これまで製造業を支えてきたのはカイゼンと要素技術開発だ”“工場でのカイゼンこそが全体最適だ”という指摘は正しいと思うが、それを乗り越えなくてはならない」(多田氏)
多田氏は「ただつながるのではく、目的を持ってつながることが大切」と繰り返し主張し、Connected Industriesの事例をいくつか紹介した。
Connected Industriesの事例
多田氏がものづくり白書から紹介した事例の1つが、愛知県の日進工業だ。樹脂加工を得意とする愛知県の自動車部品メーカーである日進工業は、セル生産で発生する手書き伝票をなくすため、製品管理システムを構築した。この構築がきっかけになり、生産性向上を目的とした設備稼働状況監視システムの開発に着手。機械ごとの稼働率や生産数、チョコ停の発生原因などを蓄積して、現場へフィードバックすることで、機械稼働率を7%向上させた。
この開発した設備稼働状況監視システムを「MCMシステム」として子会社から発売したところ、1セット10万円という低価格で設備監視が可能になることから、既に1000セットの出荷実績を誇る製品となった。日進工業の例は「生産性向上」という目的を持って「機械をつなげての見える化」に着手し、生産性の向上はもちろん、外販という新たな収入源確保も実現した例といえる。
この他にも多田氏は、京都府のHILLTOP(職人の切削技術をデジタル化、ヒトはデザインに注力)や東京都のミラック光学(顕微鏡製造の技術を用いて、はこだて未来大学の松原教授と協力してAI搭載画像検査システムを開発)といった事例を紹介しながら、「目的を持ってつながること」の重要性を訴えた。
Connected Industries実現への課題
Connected Industriesを「目的を持ってつながる事で、新たな価値を生むこと」と考えた場合、まず浮上する課題はセキュリティだ。情報が外部に渡る場合、意図した相手に渡れば「つながる」だが、意図しない相手に渡ればそれは「漏えい」だ。大多数の企業で担当者の設置やポリシー策定といったセキュリティ施策が行われているが、ものづくり白書によれば、「対策の必要性を感じない」という企業も存在している。
サイバーセキュリティも同様に必要であり、マルウェアやランサムウェアの危険性が高まる中、各社が対応策を講じているが、「セキュリティに不安を感じない」とする企業も存在する。その理由として「対策しているから」「自社は関係ないから」が挙げられている。前者はとにかく後者についてはサプライチェーンの弱点を狙った攻撃も存在するため、危険な考えといえる。多田氏も「意識改革が重要」と指摘する。
セキュリティに次いで多田氏が指摘したのは、「アプローチ」の問題だ。製造業における改善というテーマにおいて、どうしても工場における加工組立が注目される傾向にある。歴史的ないきさつからも無理はないといえるが、従来のやり方では個別最適にとどまる可能性が高く、つながることを前提とするConnected Industriesの実現は遠くなる。
多田氏は「自前主義からの脱却」「全体最適化を実現するシステム思考」「バリューチェーン全体に及ぶ最適化」などの言葉でConnected Industriesを実現するためのアプローチを説明し、こうした新しい思考を持った(適した)人材の育成も急務であると訴えた。
最後に多田氏は来場者に対し、「これまでの現場力とは“カイゼン”“すりあわせ”だったが、これからはデータの取得と資産化、職人技の体系化、暗黙知の形式知化、デジタルデータとして資産化する力などが求められる。このデジタル時代の現場力を再構築するには経営の力も必要だ」と訴え、「5年後、10年後も製造業が日本産業を引っ張れるように後押ししていきたい。問題意識を持って取り組んでもらえるとうれしい」と講演を締めくくった。
◎併せて読みたいお薦めホワイトペーパー:
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