TechFactory通信 編集後記
オートバイ販売動向に見る「MaaS」のヒント
昨今話題の「MaaS(Mobility as a Service:サービスとしてのモビリティ)」をより理解するためのヒントは、オートバイにある……かもしれません。
「柱の傷はおととしの~」とは、こどもの日がある5月、耳にする機会が増える童謡「背くらべ」の歌い出しですが、柱ならぬ自分の左手人差し指にある傷を見る度、オートバイに乗りたという気持ちがわいてきます。
この傷は運転中のバイク前輪がスリップして左ハンドルが網フェンスに食い込み、グローブをしていたにもかかわらず裂傷を負ったものです。10年近い時間が経過しましたが、傷跡は消えていません。オートバイに乗ればこんな痛い思いをすることがありますし、雨が降れば水浸し。寒い日はより寒く、暑い日はより暑く。乗車定員はせいぜい2人で家庭サービスにも不向きです。
つらつらと書いていても、オートバイに乗る合理的な理由が見つかりません。「運転が好きだから」「思ったときに思った場所に行ける」など乗る理由は浮かびますが、まあ、「好きだから乗る」に尽きる趣味の乗り物なのでしょう。
一方で4輪車(自動車)ではMaaS(サービスとしてのモビリティ)という話題が示すよう、「移動(輸送)手段としての自動車と、趣味で乗る自動車を別の視点から考えよう」という意見が注目されています。
では、移動(輸送)手段としての需要が限られており、趣味としての要素が強いオートバイという乗り物にどれだけ市場性があるのか、MaaSについて考察する際のヒントになるかと思い立ち、手始めにオートバイの販売動向を調べてみました。
日本自動車工業会が公開しているオートバイの販売台数を見る限り、国内需要は低下する一方です。1980年に237万台であった販売店向け出荷台数は2016年には33万8000台まで低下しています。最も落ち込んでいるのはいわゆる原付バイクで1980年の197万8000台から2016年には16万2100台に低下し、90%以上のマイナスです。
前述の資料によれば、原付バイクが年間100万台以上売れていたのは1990年代前半まで。当時は原付バイクでオートバイに触れ、より大型の車両にステップアップするという流れがありました。原付バイクは価格も安く、カテゴリー全体への導入役でもあったのです。ですが、排ガス規制対応による価格上場、電動アシスト自転車の進化、駐輪場不足などの理由もあり、原付バイクの市場は縮小しました。
話をオートバイ全体の市場性に戻すと、2017年の軽二輪車(125cc~250cc)新車販売台数は前年比121.9%のプラス。小型2輪車(250cc~)についても、前年比1.7%増と3年ぶりのプラス成長を示しています(いずれも全日本軽自動車協会連合会調べ)。
この統計数値を並べてみると、趣味の乗り物としてのオートバイは復権していると感じますが、過去にさかのぼって125cc以上のオートバイ新車販売台数を調べると、年間で30万台以上が売れた1980年代をピークに緩やかな減少曲線を描いており、ここ10年はピーク時期の約3分の1、年間10万台程度となっています。
とはいえ、各社も手をこまねいていたわけではなく、既存モデルの延長線にある新モデルを定期的に投入した他、大型スクーターやアジア圏生産の廉価モデル、三輪モデルの充実などさまざまな施策を講じており、ファンの関心は高いレベルで保たれています。東京モーターサイクルショーの動員がここ数年良好なのはその証拠でしょう。
オートバイは移動(輸送)手段としての需要が限られているため、実用性に訴えるよりも、常に「魅力ある乗り物」であることが求められます。魅力という属人性の強い要素をどのように創造していくか、とも言い換えられます。
大型スクーターは快適性と爽快感を両立させてヒットしましたし、アジア諸国での生産モデルはコストパフォーマンスの良さで人気を得ました。3輪モデルは商用車としての需要を高めました。
既存製品の改良も正しいアプローチですが、既存製品にはない魅力を創造するという姿勢は、「製造業のサービス化」や「サービスとしてのモビリティ(MaaS)」といった考え方を進めるうえで、頭に入れておくべきだといえるでしょう。
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TechFactory通信 編集後記
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