大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
「鶏と卵」を抜け出しそうな、Armサーバの現在地(3/3 ページ)
Vulkan
このThunder Xとほぼ同じタイミングで開発がスタートしつつ、どうも製品出荷を断念したらしいのがBroadcomの「Vulkan」である(Photo09)。2013年には日本でも説明会を開くなど意欲的であり、また2015年には物理実装に向けて、TSMCの16FF+を利用したトライアルの結果がARM TechCon 2015で発表されたが、その2015年に同社がAvagoに買収された結果、NetLogic(や、そのNetLogicが買収したRMI Corporation)が持つネットワークプロセッサのマーケットを維持することに興味を失ったらしい。
自社による製品出荷は断念したものの、BroadcomはVulkanをIPとして他社へ供給するビジネスを開始する。その第一号の顧客がCaviumだったらしい。同社が2017年11月に出したプレスリリースによれば、TSMCの7nmプロセスに向けてさまざまなIPの用意ができたとしているのだが、提供するIP一覧の中に"Comprehensive portfolio of Arm cores and peripherals"が含まれており、これは恐らくVulkanベースのプロセッサコアを7nmに向けて最適化したものと思われる。
AMD
もう一つ、これら各社とほぼ同じタイミングでアーキテクチャライセンスを受けたメーカーがAMDである。同社はまずCortex-A57ベースの「Opteron A1100」という製品を出し、次にProject Skybridgeと呼ばれる「x86コアとピン互換なArmコア」を提供、その次に完全新設計のK12コアを投入予定だった。
ただ、まずSkybridgeは「顧客のニーズが無い」ということでキャンセル。K12は2017年中に投入というアナウンスはあった(Photo10)ものの、現時点では未出荷である。これについて、そもそも2015年にこれを発表したMark Papermaster氏に聞いたところ「(x86の)Zenコアは非常にニーズが高い一方、K12は市場からのニーズが低い。なので、K12については作業をホールドしている」との事だった。
富士通
アーキテクチャライセンスを受けた時期は若干後らしく、まだ製品は出荷されていないものの、作業が進んでいるのが富士通のポスト「京」向けプロセッサである。こちらはバックエンドがSPARCと完全に共通で、命令セットのみARMv8Aとなっている。こちらは2020年に一般供用開始の予定なので、恐らく2018年中にプロセッサは上がってくると思われる。
Qualcomm
2017年にこのリストに加わったのが、Qualcommmの「Centriq 2400」である。最大48コア・2.6GHz駆動という数字を見るとCaviumのThunderXを連想しそうだが、10nmプロセスを採用し、4wayのスーパースカラー/アウトオブオーダーを搭載した重厚なコアである(Photo11)。
続くArmサーバへの新規参入で「弾み」はつくか
というわけで、現状はCortex-A57/A72を搭載したプロセッサが多数登場しており、そこに加えて、CaviumやQualcommなどの独自プロセッサが、もう少しすると富士通のHPC向けプロセッサが登場する、というのがArmサーバ市場の今である。そして、新しく参入したのがAmpere Computingである。
APMはX-Gene 3のサンプル出荷を開始したと書いたが、この少し前、同社はネットワーク向け半導体ベンダー大手のMACOMに買収された。ところがMACOMはネットワークプロセッサに興味がなく、このためX-Geneの部隊と資産はCarlyle Groupというファンドに売却されてしまった。このCarlyle GroupがX-Geneの部隊をまとめてスピンアウトさせたのがAmpere Computingである。CEOに(2015年にIntelのプレジデントを辞任した)Renee James氏が就任したことで話題になった(Intel元社長、サーバ向けArm SoCで再始動)。
Armがサーバマーケットである程度のシェアをとるためには、ソフトウェアを含むエコシステムを構築する必要がある。ただしエコシステムを作るためには、まずサーバ用途に利用できるArmベースのプロセッサが必要である。ただプロセッサを作るには、それが売れるという見込みが(多少は)必要で、見込みのためにはエコシステムが必要、という「卵と鶏」の関係にある。
しかしながら、ここまで紹介してきたようにArmベースのサーバ向けプロセッサも出そろってきた。もしこのあと本格的にソフトウェアがそろい始めてエコシステムが立ち上がる様なら、AMDもホールドしていたK12を投入してくるかもしれないし、ARMv8Aのアーキテクチャライセンスは紹介した以外の企業も有しているので、さらに参入ベンダーが増える可能性もある。
一度弾みがつくと急速にマーケットが広がるだけに、「弾みがつくかどうか」がArmサーバのシェアを決めることになる。何かきっかけがあれば、2018年中に弾みがつきそうな気がする。
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大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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