宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(24)
IPA発表の「情報セキュリティ10大脅威 2018」から学べること
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策。しかし、堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学をお届け! 今回は、IPAが公開した「情報セキュリティ10大脅威 2018」を基に、注目すべきトピックについて紹介します。
2018年1月、情報処理推進機構(IPA)は「情報セキュリティ10大脅威」の2018年版を公開しました。個人、組織それぞれで注目すべき10個の脅威を紹介し、あらためてその内容を確認するために公開されている、大変有用な資料です。
2018年の組織における10大脅威については、これまで上位を独占してきた「標的型攻撃」や「ランサムウェア」に加え、「ビジネスメール詐欺」「セキュリティ人材の不足」などが新たにランクインしました。今回は、TechFactory読者の皆さんが注目すべき、幾つかの脅威をピックアップしたいと思います。
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無視できない「IoT機器の脆弱性の顕在化」
まず、第7位の「IoT機器の脆弱(ぜいじゃく)性」について見てみましょう。IoT機器はインターネットとつながることでその真価を発揮しますが、これは同時に攻撃者ともつながってしまうことを意味します。
攻撃者がIoT機器を乗っ取ることで、IoT機器が収集したデータを盗んだり、改ざんしたりすることができます。さらに、IoT機器を不正に操作することで、攻撃者が指定したサーバに大きな負荷をかける「DoS攻撃」を行い、IoT機器を設置し被害を受けた側が別の攻撃の加害者になってしまうこともあり得ます。実際、2017年はブロードバンドルーターが攻撃者に狙われ、多くの実被害を出しました。
また、IoT機器は自動車のコントロールや医療機器としても展開されています。そのような人の命を預かるIoT機器が攻撃されてしまうと大変なことになります。IoT機器は極めて重要なパラメーターを預かり、操作(制御)を行うものもあるので、攻撃者の手の内に落ちてしまうことは絶対に避けなくてはなりません。
攻撃者の魔の手から身を守るには、IoT機器の脆弱性管理が大変重要です。IoT機器の開発者は被害を予防するため、「IoT開発における セキュリティ設計の手引き」を参考にしながら、開発段階からセキュアなプログラミングを行うこと、そして脆弱性が発見されたときには適切に修正およびアップデートを行うことが重要です。
さらに重要になる「既知の脆弱性対応」
そして2018年、新たにランクインしたのが「脆弱性対策情報の公開に伴い公知となる脆弱性の悪用増加」です。これはIoT機器では特に注目すべきポイントです。
例えば、組み込みシステム向けの「Windows」をOSとして使っている場合、マイクロソフトの発表する脆弱性情報は必ず確認すべきです。マイクロソフトをはじめとするソフトウェア/OSベンダーは、脆弱性の修正プログラムが公開されるタイミングで脆弱性に関する情報を公開しています。このとき、脆弱性の攻撃方法までは公開されないものの、その内容や修正プログラムから「一体どのような攻撃手法を許す脆弱性なのか」を推測できます。そのため、攻撃者はこの時点で新たな攻撃手法を得るわけです。
もちろん、既に公開されている修正プログラムを適用しておけば、その脆弱性から身を守ることが可能です。しかし、IoTに限らず多くのシステムは簡単に修正プログラムを適用できず、検証作業に時間を取られています。攻撃者はその隙を狙い、既知ながら対応が間に合っていない脆弱性を利用し、攻撃を仕掛けてきます。
特にIoTのシステムは台数も多く、そう簡単には修正プログラムを展開できないでしょう。そのため、IoTにおいては第4位にランクインした「脆弱性対策情報の公開に伴い公知となる脆弱性の悪用増加」は大きな脅威になるといえます。
脆弱性が明らかとなり、その修正プログラムは既に公開されている。しかし、すぐに適用することは難しい――。こうした隙を突かれないためには、IoTデバイスだけでなくネットワーク側で防御策を展開し、システム全体で守ることが重要です。
例えば、企業でも導入が進む「Webアプリケーションファイアウォール(WAF)」を、IoTシステムでも導入することで緩和が図れるかもしれません。脆弱性はいつ明らかになるか分かりませんので、IoTシステムを構築する際は「攻撃されること」を前提に対策を検討すべきです。
IoTシステムへの攻撃が「お金になる」と知られたら……
「IoT」という言葉はバズワード期を抜けて、実際に導入、検討が行われるフェーズにあると思います。
万一、「IoTシステムは、セキュリティ的に“チョロい”」と思われたら、投資対効果に敏感な攻撃者は全力で狙いに来ることでしょう。脆弱性が残っていたり、修正プログラムを適用していなかったりするシステムを見つけ、数万台のIoTデバイスをボット化し、手足として攻撃に使うかもしれません。また、攻撃者のコントロール下に置かれたIoTデバイスを人質とし、身代金を要求してくるかもしれません。そうならないためには、脆弱性のコントロールをきっちりと行う必要があるのです。
IoTシステムは私たちにとっても、攻撃者にとっても「金のなる木」です。自分たちが作った大切なシステムの指揮権を、しっかりと手元に置くための知識を身に付けておきましょう。IPAの情報セキュリティ10大脅威2018の詳細な解説は、2018年3月下旬に公開される予定です。まずはここから始めてみてはいかがでしょうか。
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著者紹介:
宮田健(みやた たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追い掛けている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。現在、ITmediaエンタープライズにて、もはや誰もが人ごとではないITの課題や話題を紹介する「半径300メートルのIT」を連載中。また、それをまとめた書籍「デジタルの作法~1億総スマホ時代のセキュリティ講座」も発売中。
筆者より:TechFactoryでの本連載では、ITセキュリティの「あるべき論」「正論」だけでなく、モノづくりに携わる方たちに「気楽に」「楽しく」セキュリティを考えていただけるように、さまざまな話題を取り上げたいと思います。「セキュリティっていわれてもねえ……」と思わず考えてしまった皆さまに覚えていただけるようなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
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