設計者CAEは普通の解析と何が違う?(4)
モデルの比較検証を「設計者CAE」の中心に、最も効果的な運用方法を考える(2/2 ページ)
ゴールの見えない解析依頼にどう応えるべきか?
ここからは、“次の悩み”について考えていきましょう。
図2に、装置用架台(筐体)の代表的なモデルを示します。角形鋼管とベースとなる鋼材の溶接構造で、これらをネジで固定しています。装置のベースになる部分ですので、剛性確保は必須です。
ある日、架台の設計者から次のような解析依頼が来ました。
依頼者(設計者):架台をCAEで解析してほしいのですが……。
筆者(解析担当者):いいよ。何をするの?
設計者:振動です。
解析担当者:振動? 振動って具体的に何を調べたいの?
設計者:振動するかどうかです。
解析担当者:何か共振でも心配しているのかな?
設計者:う~ん……。いいから、うまいことやってくださいよ。
実はこのやりとり、過去筆者が経験したものです。皆さんも、同じような経験はありませんか? 恐らく、他の設計者やリーダーに「解析をやってもらえば」とでもアドバイスされたのでしょう。しかし、このやりとりの内容から分かる通り、解析を行う上での“ゴール”が全く見えません。
もし、今同じ依頼が舞い込んできたら筆者は次のように答えるでしょう。
「フレーム構造に着目した固有振動数から見ることにしない?」
「ベースへの負荷は分かる? 変位も見てみよう」
「架台内の熱源の影響による架台の経時変化は大丈夫?」
「設置床環境はどのような場所? グレーチング(※1)? コンクリート?」
「共振を心配するような振動源は架台上にある? あるならその周波数は?」
など
※1:鋼材を格子状に組んだ溝蓋構造の床でクリーンルームではよく見られる。強固な床に比べれば床そのものの剛性はないため、架台に影響がある場合も考えられる。
しかし、技術も知識も未熟だった当時の筆者は悩みました。もし解析を断れば、「な~んだ、できないのね」「しょせん解析なんて」などと言われかねません。そして何より、せっかく稼働率が上がってきたCAEの評価を下げることはしたくありませんでした。しかし、ゴールのない解析を要求されている以上、満足する答えを出せる確証などありません。さて、どうしたものか……。
悩みに悩んだ筆者は、結果的にCAEツールのサポート窓口などに相談し、(今回のケースの場合)「固有値解析」を行うのに至ったわけなのですが、依頼者である設計者がこの解析結果に納得できたのかは不明です。
このケースにおける各担当の心情を整理してみました。
■依頼者
・設計上、発生し得る問題の分析(=リスク分析)ができていない
・CAEで“分からない何かを”証明できると思っている/ただCAEを行うことで安心しようとしている/上司への説明目的のためだけにCAEを行っている
■解析担当
・CAE運用を定着させる上で、依頼は断りたくない
・本来、何を検証すべきかを考えるのは設計者の仕事だ/こういう依頼は面倒だと感じている
いかがでしょうか。筆者はこうした問題を解決した上で、設計者CAEの効果的な運用ができるようになるまで数年を費やしました。その解決策として役立ったのが、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)シートの運用です。
FMEAは、故障や不具合の防止を目的としたとても有名な分析方法です。知識や運用経験がない方でも、一度はこの名前を聞いたことがあるかもしれません。これからCAE運用を行っていく方のために、次回はFMEAについて取り上げます。お楽しみに! (次回に続く)
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設計者CAEは普通の解析と何が違う?
「設計者CAE」という言葉が設計現場で聞かれるようになって久しいですが、3D CAD推進とともにきちんと設計者CAEに取り組んでいる企業もあれば、まだ途上あるいは全く着手していないという企業もあるかと思います。本連載では、設計者CAEがもたらすメリットや実際に導入していく上での注意点を、現場目線でご紹介します。◎こんなキーワードに興味のある方にオススメ:[CAE][設計者CAE][3Dデータ][3D推進][3次元設計][設計品質向上][ツール導入]
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