設計者CAEは普通の解析と何が違う?(3)
CAEの稼働率が上がるに従い募る不安、「この解析結果は正しいのか?」を大切に(2/2 ページ)
最低限の原理原則は理解すべし
いかがでしょうか。皆さんの中に「ウィザード通りに設定しているので、CAEの結果も間違いない」と思っている人はいないでしょうか。本当にそれでいいのでしょうか?
筆者は前述のような思いから、有限要素法をあらためて学ぶことにしました。どのように学んだのかというと、3D CAD推進プロジェクトで関係のあったパートナー企業に講師を紹介してもらい、複数回の座学と実践的なCAE運用に関する講義を受講したのです。その当時はまだこのような講座もほとんどなかったため、講師の方と生徒が一緒になって次回の講習内容を決めたり、役立ちそうな外部セミナーがあれば積極的に受講したりしていました。
こうした学びの場で、マトリックスを用いて解くのか、運動方程式を用いて解くのか……という突っ込んだ内容を習得したわけではなく、あくまで有限要素法の原理原則を学んだに過ぎません。しかし、そこが単なるオペレーターに終わってしまうのか、そうならないかの“分かれ目”だと思います。
前回、CAEは「誰でも、何でもできる夢のツール」ではない! と説明しましたが、解析に対してバックボーンのない人(裏付けのない人)だと、このワナに陥ってしまうかもしれません。もちろん、ツールとして「全く使えない」とは言いませんが、「その解析結果の信頼性」はどうでしょうか? 最低限の原理原則を理解していれば、こうした判断も可能でしょう。
設計者CAEに取り組む人は、研究開発部門の専任解析者ではありません。ですから、どこまで理論や原理原則を学び、それらを理解すればいいのか? という疑問を抱くかもしれません。これは人それぞれの判断になるかもしれませんが、実践の中で、どうしても解析が必要となり、その基礎の部分を自ら理解しようという姿勢は、必ずや今後の自信につながるはずです。
その証拠が今の筆者です。現在では、やや難しい解析も行えるようになりました。そうすると、「標準の解析システムのままでは、これから先できないことがありそうだ」「特定の理論を解析に入力する必要がありそうだ」といった次の課題、新たに学ぶべきことが見えてきます。そういう意味で、一歩ずつ理解を深め、やれることを少しずつ増やしていくという姿勢が、設計者CAEにとって重要なことなのかもしれません。
解析結果の信頼性を検証するための取り組み
さて、話を戻しますが、筆者は解析の基本について理解を深めるために、解析結果と実態の比較も行いました。「この解析結果は本当に正しいのか?」という疑問に対する探究です。
例えば、角形鋼管の溶接構造体に対し、その変位を実態と比べました。実験系は限りなくシンプルにし、歪ゲージを張り、重りによる負荷によって解析プロット位置の歪値を測定。解析結果との比較検証の実施と、重りの増減による線形性の確認を行いました。
横軸は荷重(表示単位として×10[N])、縦軸は歪(表示単位として1×E-5[mm]が10)を示します。200[N]の荷重をかけた際のセンサーの値は、系列1(緑色)の位置で3.054E-5、系列2(紫色)の位置で1.755E-5となりました。実は解析結果の値と実験値には違いが生じました。実験系について、歪ゲージの張り方によって、その結果も異なります。
正直、誤差要因は大きかった気がします。また、歪ゲージの張り付け位置と解析のプロット位置が完全に同じではありませでした。一方、解析モデルでの部品と部品の結合は“ボンド結合”となり、溶接状態が必ずしも正しくモデル化されているわけではありません。そのため、この実験自体が正解だったのか? という思いもありましたが、その傾向を見ることができましたし、何よりも“実験により、解析値との比較検証を行う”という運用を始めるきっかけとなりました。これが今でいうV&V(Verification and Validation:検証と妥当性確認)を行うための材料なのかもしれません(次回に続く)。
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設計者CAEは普通の解析と何が違う?
「設計者CAE」という言葉が設計現場で聞かれるようになって久しいですが、3D CAD推進とともにきちんと設計者CAEに取り組んでいる企業もあれば、まだ途上あるいは全く着手していないという企業もあるかと思います。本連載では、設計者CAEがもたらすメリットや実際に導入していく上での注意点を、現場目線でご紹介します。◎こんなキーワードに興味のある方にオススメ:[CAE][設計者CAE][3Dデータ][3D推進][3次元設計][設計品質向上][ツール導入]
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