TechFactory通信 編集後記
北朝鮮関与のランサムウェア「WannaCry」は実験だった
製造業にとっても大きな脅威となったランサムウェア「WannaCry」について、カスペルスキーの分析官が「攻撃実験の失敗だった」という見解を示しました。増加するサイバー攻撃に製造業はどう対処していくべきなのでしょうか。
2017年の産業制御システムセキュリティに関する話題として、ランサムウェア「WannaCry」を避けて通るわけにはいかないでしょう。前例の無い大規模な感染を見せ、感染は医療機器やATM、デジタルサイネージなど組み込み機器でも報告されました。
国内への攻撃も多く観測され、トレンドマイクロの調べでは2017年5月時点で国内への攻撃を1万6000件以上、観測したとしています。また、2017年12月には米大統領補参観が「北朝鮮からのサイバー攻撃だ」と断言したことで、再び大きな話題となっています。
製造業にとって大きな脅威となったWannaCryですが、感染規模の割には実質被害が少ない、要求金額が小さいといった指摘がなされていたのも事実です。この点について、カスペルスキーの分析官であるヴィセンテ・ディアス氏は来日しての講演にて「攻撃実験の失敗だった」という見解を示しました。
WannaCryは実験の失敗
ディアス氏はあくまでも推測としますが、「WannaCryはある実験が制御できない状態になってしまったもの」と語り、同じランサムウェアであるExPetr(Petya、New Petya、NotPetya)などとは異なるものだと指摘しました。
明確な意図(悪意)ではなく、何者かによる実験の失敗であったとしてもWannaCryが広い感染と被害をもたらしたことは事実です。ディアス氏と同じくカスペルスキーのアンドレイ・スヴォーロフ氏はナイジェリアの犯罪組織が500社あまりの産業機器関連企業に不正アクセスしようとしていた事例を挙げ、注意を促します。
「産業制御システムを目的とした攻撃は増加し、近い将来にはサイバー犯罪者がPLCやSCADAなどを目的にすることが考えられる。(WannaCryのように)広大な影響を及ぼすことができれば、それは犯罪組織にとっての収入源になるからだ」(スヴォーロフ氏)
工場内の生産システムを含む産業制御システム(ICS)は一般的に外部ネットワークから切り離された環境で運営されているため、WannaCryのような外部からの攻撃に強く、インシデントの発生数は少ないというのが定説でした。ですが、StuxnetやIndustroyerといったマルウェアは明らかに産業機器を狙った脅威であり、実際に被害をもたらしています。
スヴォーロフ氏は自社調査の結果として、「ここ1~2年の間で企業におけるインシデントは急速に増加しており、ICSだけに限っても年間数件の発生が認められている」と、ICSに関するインシデントは増加傾向にあると語ります。
しかし、スヴォーロフ氏は重ねてインシデントがイコール、サイバー攻撃「ではない」ことに注意すべきだと語ります。インシデントは「人為的ミス」「詐欺や窃盗」「サイバー攻撃」の3つに分類することができ、それぞれに適切な対応をすることが、産業制御システムの安定稼働につながるというのがスヴォーロフ氏の主張です。
ただ、IT(Information Technology)に比べて、産業制御システムのようなOT(Operation Technology)は外部からの攻撃を念頭にしたセキュリティ施策はあまり行われておらず、ましてや人為的ミスや窃盗への対策といった包括的なインシデント対策となれば、多くが現場レベルでの対応に止まっているのが現状です。
サイバー攻撃はもちろんですが、製造業IoTの普及や促進、製造現場における人手不足などもインシデントの原因となり得ます。一朝一夕に解決できる問題ではありませんが、産業制御システムへのサイバー攻撃については、米ICS-CERTのような組織だった情報収集と提供が大きな役割を持つようになるでしょう。
日本のIPA(情報処理推進機構)も産業サイバーセキュリティセンター(ICSCoE)を2017年4月に設立、産業制御システムセキュリティに関する情報提供や人材育成、安全性検証などを行っています。カスペルスキーを含め、トレンドマイクロやマカフィーといったセキュリティベンダーも製造業に向けたセキュリティ情報/サービスの提供に注力しています。製造業IoTの普及は明るい未来として描かれがちですが、セキュリティインシデントという注意すべき側面もあることを忘れずにいたいと思います。
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TechFactory通信 編集後記
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