TechFactory通信 編集後記
「中華品質」などとやゆできない、「日本品質」を巡る厳しい現実
世界が日本をどう見ているのか……。
「ジャパンクオリティー」という言葉は、高品質な日本製品の優位性を世界に誇る表現として使われてきました。しかし、今後は“品質が疑わしい製品”を表現する言葉として世界中に浸透していくことになるかもしれません。
ご存じの通り、大手鉄鋼メーカーである神戸製鋼所の検査データ偽装問題が国内のみならず、世界中で波紋を呼んでいます。
世界から「ジャパンクオリティー = 低品質」と評価される日も近い!?
アルミや銅製品の他、鉄粉製品に関しても強度などのデータ改ざんを行ったとし、子会社を含むグループで不正を行っていたことが明るみとなりました。その後も、鋼線や特殊鋼など9製品でデータ改ざんや検査の未実施が確認されたとし、次から次へと不正が判明。同社グループ製品の出荷先約500社にその影響が拡大していると報じられています。当初、同社 会長兼社長の川崎博也氏は「鉄鋼事業では(不正は)ない」としていましたが、その発言の翌日に鋼線、特殊鋼で不正が新たに発覚したことで、同社への不信感がよりいっそう強いものとなりました。
問題が判明した製品の出荷先には、自動車、鉄道、航空宇宙、防衛、電機分野などが含まれます。万が一、大規模なリコールに発展すれば、多額の費用が発生し、同社の経営の根幹を揺るがしかねません。
既に、同社から製品供給を受けた企業では、安全性の確認が急ピッチで行われています。JR東海やJR西日本などで運行中の鉄道車両にも同社製品が使われていますが、「安全性に影響はない」としています。またJR東海では開発中のリニア中央新幹線(試験車両)にも同社アルミ製品を使用していましたが「安全性に問題はなく、開発スケジュールにも影響はない」と発表。また、自動車業界でも直接購入したアルミ板について、トヨタ自動車、ホンダ、マツダが「安全性を確認した」「自社の安全基準を満たしている」としています。そして、海外では米司法省が調査に乗り出し、問題製品を使用している可能性のあるGMやフォード、ボーイングなどが影響について調べているといいます。欧州でも、ヨーロッパ航空安全局が安全性の確認がとれるまで同社製品を使用しないよう航空会社などに勧告したと報じられています。
今後、点検や部品交換にかかるコストを請求する動きや、「安全性に問題あり」となった場合のリコール費用の負担、そして海外企業/消費者からの損害賠償請求や訴訟といった可能性も十分にあり得ます(「『第2のタカタ』になりかねない」という報道もされています)。いずれにせよ、巨額な負担が生じる事態は避けられないのではないでしょうか。
影響範囲があまりにも広く、私たち一般消費者の安全にも影響を与えかねない今回の不祥事。毎日新聞では「不正が40年以上前からあった」という元社員からの証言が得られたと報じています。これが事実であるならば「これまで世界に誇ってきたジャパンクオリティーとは何だったのか?」、そう指摘されても何も言うことができません。最終製品で世界をリードすることが難しくなっている今、品質こそ日本が世界に誇れる最後の砦(とりで)。今回のようなことで、汗を流し、地道に戦っている多くの製造業の足を引っ張ってもらいたくないものです。
そういえば、資格を持たない従業員に完成車両の検査をさせていた日産自動車も、新たに3工場での無資格検査が発覚。これに伴い、日産グループの国内全6工場で生産する国内向け車両の出荷を停止しました(ちょうど、このコラムを書いているときに記者会見が行われました)。
ほんの一部企業による不祥事だと信じていますが、日本の製造業は本当にどうしてしまったのでしょうか……。こうした事態に陥った経緯なども想像できる部分もありますが、不正が常習化してしまう前に歯止めをかけることはできなかったのでしょうか。こうした事態が繰り返されるようでは「ジャパンクオリティー = 低品質」という評価が下されてもおかしくない、そんな現実が待ち受けているような気がしてなりません。
◎編集部イチ押し関連記事
最先端のモノづくり現場
» NEC・レノボ製品の“1日修理”を実現するNECパーソナルコンピュータ 群馬事業場
» 機械と人の融合が可能にした最高画質、4K有機ELテレビはこうして作られる
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechFactory通信 編集後記
「モノづくり総合版 TechFactory通信」に掲載された、TechFactory担当者による編集後記の転載記事一覧です。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー