グローバル製造業/エグゼクティブセミナー2017
勝ち残るため「何」を提供するのか、日立製作所に見る事業創造の手法(1/2 ページ)
製造業といっても製品の製造販売だけではなく、サービスを強化する方針やIoTを利用した新たな価値創造が注目されている。シンクロン・ジャパンらが開催したセミナーより、日立製作所の講演を紹介する。
IoTに代表されるデジタル化の波、過熱するグローバル競争による製品市場の成熟化に伴い、日本の製造業を取り巻くビジネス環境は大きな変革の時期を迎えている。こうした中で、高い収益性や差別化が見込めるサービス事業、中でも、アフターサービス強化への戦略転換やIoTを活用した新たな価値創造に注目が集まっている。
日本の製造業ではアフターサービスの領域でまだ積極的なイノベーションや業務改革が遅れているとわれるが、国内外の一部の先進企業ではこの機会を大きなチャンスと捉えて、経営戦略の一環としてアフターサービス改革への挑戦を既に始めているという。
東京都内で開催された「グローバル製造業/エグゼクティブセミナー2017」(ビジネス・フォーラム事務局、シンクロン・ジャパン共催、クオリカ協賛)では「大変革時代を勝ち抜くためのアフターサービス改革とその進め方」をメインテーマに、日立製作所(社会イノベーション事業)による特別講演や、ブラザー工業(マシナリー事業)によるグローバル部品在庫最適化の取り組みに関する事例講演に加え、シンクロン・ジャパンやクオリカによるアフターサービス領域の国内外の最新動向も交えながら、こうした先進企業の実践事例や課題解決策などが紹介された。
特別講演として登壇した日立製作所 グローバル事業推進本部 企画部 主管の加藤兼司氏は、「デジタル技術を活用した新しいサービス事業の創造とグローバル展開」と題して、IoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」による社会イノベーション事業への取り組みなど、同社の取り組む新しいサービス事業について説明した。
7800億円の赤字から「サービス」の原点回帰
日立製作所は売上収益9兆1622億円(2016年度)、連結従業員数は30万人に上る国内最大規模の総合電機メーカーだ。売り上げ構成比をみると社会・産業システムが23%と最も大きく、以下、情報・通信システム、高機能材料、電子装置・システム、建設機械などと続く。海外比率は48%で、今後は55%程度まで引き上げる方針だという。
この日本を代表する企業である日立製作所も2008年には約7800億円という最終赤字を記録した。これを契機に事業の見直しに取り組み、まずは原点回帰ということで、企業理念・創業の精神を見直したという。
日立製作所は創業者の小平浪平氏により、1910年に久原鉱山の機械修理工場として茨城県日立市で誕生した。加藤氏は「日立製作所も最初は機械修理工場であり、メンテナンスサービス、アフターマーケットから始まった」と企業そのものの原点がアフターサービスであり、その後、モノ造りを始めた、という流れを紹介した。創業の精神は「和」「誠」「開拓者精神」とあり、企業理念は「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」である。
同社のものづくりは5馬力モーターの製造から始まる(1910年)。そこから家電、発電機、コンピュータ、新幹線、医療機器、建機など製造製品は量産系製品の分社化を経て大きく広がった。そして最近では社会イノベーション事業への傾注が進んでいる。
成長に向けた事業ポートフォリオの転換にも取り組んでおり、最近ではクルト&クルト(トルコのヘルスケアサービス企業)やサルエアー(産業用コンプレッサーなどのサービスを手掛ける米企業)、テンプル(エレベーターなどのアフターサービスを手掛ける英企業)などサービス系企業の買収を意欲的に行い、一方で、日立国際電気や日立工機などの一部のモノづくり会社は事業を譲渡している。
このように事業を整備した上で、OT(制御・運用)、IT(把握・分析・予測)、プロダクト・システム(ハード・材料・EPC、SI)の3つを融合し、デジタル技術を活用した社会イノベーション事業を創造し、会社全体の成長をけん引していく方針だ。ちなみに、現在の会長は中西宏明氏。社長は東原敏昭氏で両氏とも、新幹線の運行管理システムなどオペレーションテクノロジーを担当する大みか事業所(茨城県日立市)出身である。この人事からも同社の方向性がうかがえる。
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