宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(19)
自社のセキュリティ対策、足りないものは何か? 「無料の教科書」で学ぶべし(1/2 ページ)
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策。しかし、堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学をお届け! 今回は、トレンドマイクロが発表した調査レポート「法人組織におけるセキュリティ実態調査 2017年版」を読み解く。
トレンドマイクロが2017年9月、国内における法人組織がどのようなセキュリティ対策を行っているのか、そして意識の変化はあるのかなどを地域、業種、規模ごとにまとめた調査レポート「法人組織におけるセキュリティ実態調査 2017年版」を発表しました。
トレンドマイクロに限らず多くのセキュリティベンダーは、このような独自調査のレポートを定期的に、無償で公開しています。これがなかなか示唆に富むデータであるだけでなく、多くの“気付き”を提供してくれます。読みものとしても大変よくまとまっているので、「ITセキュリティ」が自分の業務に少しでも絡んでいる人にとっての「無償の教科書」といえるかもしれません。
多くのレポートには、冒頭に「エグゼクティブサマリー」が付いています。この部分を読むだけでも全体像を十分に把握できます。もう少しポイントを押さえたいという方は、プレスリリースやメディアの記事にも手を出してみましょう。
ランサムウェアが意識を変えた?
このレポートの冒頭で、
2016年は、法人組織におけるセキュリティが1つのターニングポイントを迎えた1年だったかもしれません。
と述べられているように、ITセキュリティの体制、対策は、大きな事件や法改正をきっかけに変化が起きることが多いです。興味深いと思ったのは、マイナンバー制度開始や自治体情報システム強靱(きょうじん)化向上により、官公庁、自治体のセキュリティ対策包括度が前年比で4.3ポイント上昇していること。この自治体情報システム強靱化は、日本年金機構への標的型攻撃による情報漏えい事件を受け、インターネット分離のためのネットワーク分割や自治体情報セキュリティクラウドの整備による、かなり素早く展開された仕組みです。これがしっかりと数値として見えているのは素晴らしいことだと思います。
そして、一般企業におけるITセキュリティ、2016年最大の事件といえば「ランサムウェア」です。2017年に入っても「WannaCry」が世界中で猛威を振るい話題になりました。この話題が功を奏しただけでなく、実際に14.1%の企業が「ランサムウェアによるクライアント端末の感染」があったと報告しています。これは「なりすましメール受信」に次ぐ、セキュリティインシデント発生原因の2番目に位置しています。
話題にならない攻撃――“標的型攻撃”の対策は?
ランサムウェアはデータを人質に取り、対価として金銭を要求します。その場合、感染したことを分かりやすく伝えなければ、いつまでたっても身代金が受け取れません。このように、ランサムウェアは「目立つ」感染の仕方をします。マルウェア全体で見るとこのような感染の仕方は珍しい方で、多くは「深く、静かに、気付かれないように」感染します。その代表例が、企業ごとにオーダーメイドの攻撃手法を使い、未知の攻撃としてパターンファイルをすり抜ける「標的型攻撃」です。
このレポートでも、標的型サイバー攻撃によるクライアント感染が、特に運輸・交通・インフラ(20.4%)、建設・不動産(19.4%)、そして製造(16.7%)で目立っていることが明らかになっています。このような重要インフラを取り扱う業種は、この点でも注意しなくてはならないことが再認識できます。
ランサムウェアも標的型攻撃も、被害が実際に発生していることもあって、世の中的にセキュリティ予算は“増加傾向”にあるようです。回答した製造業の企業では、「増加に向けて調整中」と答えた企業が26.9%ありました。
しかしこの点に関しては、やや辛辣(しんらつ)な意見も書き記されています。
全体的にみると、この動きは規模・業種・地域問わず見られた動きですが、その一方で「セキュリティインシデントや重大被害を経験しているか否か」と「セキュリティ予算増加意向」には大きな相関関係があることも分かりました。重大被害を経験していない場合でも、9.5%が増加、19.5%が増加に向け調整中ということからも、ランサムウェアが社会に与えた影響がどれだけ大きいのかが伺い知れますが、同時に深刻な事態を経験しないと予算を含めてのセキュリティ対策強化という形で温度感が上がらない法人組織の課題も依然として大きいといえます。年間被害額の項目でも言及した通り、数千万、数億円といった膨大な被害額を伴う深刻な事態を経験する前に、着実にセキュリティ予算増強と対策強化をより多くの法人組織が行うことが望まれます。
この世界はまだ「自分が痛い目を見ないと分からない」という状況が続いています。多くの企業が情報漏えいやマルウェア被害を受け、実際に痛い目を見ています。最近ではかなり詳細なレポートが公開されることも多いので、「人の振り見て我が振り直せ」の考え方も取り入れられるようにならないといけないかもしれません。
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
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