矢野経済研究所 国内故障予知ソリューション動向
AIを活用した故障予知は課題も多く、緩やかなペースで進展
矢野経済研究所は、設備機器ベンダー、プラント事業者、ITソリューションベンダーを対象に実施した「国内故障予知ソリューション動向に関する調査」の結果概要を発表した。
矢野経済研究所は2017年8月30日、設備機器ベンダー、プラント事業者、ITソリューションベンダーを対象に実施した「国内故障予知ソリューション動向に関する調査」の結果概要を発表した。
◎「故障予知/予知保全」関連記事 ~IoT・AI活用、導入事例、課題~ など
» コニカミノルタが語る「故障予知からのビジネスモデル構築」その収穫と課題
» AIを活用した故障予知は課題も多く、緩やかなペースで進展
» AIによる予兆保全は2018年「成長期」へ
同調査によると、現在、製造・保全分野で取り組みが進みつつあるAI活用だが、先行して活用が進んでいた商業向け(Webマーケティングなど)分野と比較すると、データや解析結果の精度に対する要求が高いことなどから、開発状況は緩やかだという。その理由について矢野経済研究所は、データ解析の結果に誤りがあった場合、人命にかかわる重大な事故などにつながる可能性もあるため、製造・保全分野では特にデータポイント間の関係性や構造といった因果関係を把握することが重要視されていると分析する。
以下、AI活用における商業向けと製造業向けの違いをまとめた表を示す。
故障予知ソリューションにおけるAI活用の課題とは?
製造・保全分野では、特に故障予知に対するAI活用が注目されているという。近年、製造業では設備機器などの稼働データを取得しやすくなってきたことを背景に、これまでのTBM(時間基準保全)の考え方から、CBM(状態基準保全)の考え方へシフトしつつある。製造・保全分野では、こうした稼働データに対して、AIを適用することで故障予知につなげたい考えだが、まだ課題も多いと矢野経済研究所は指摘する。具体的には、「精度の問題」「因果関係の問題」「個別性の問題」が挙げられるという。
もう1つ課題となっているのが、クライアントが納得する精度まで的中確度を高める必要があるという点だ。同調査に関連し、矢野経済研究所が実施した「データ分析やIoTの利活用、故障予知、保全に関するアンケート調査」(対象:国内の年商100億円以上の製造業217社)の中で、「故障予知の当たる確率がどの程度まで高まれば故障予兆システムを導入してもよいと思うか?」質問したところ、「10回のうち8回」が58社(構成比36.5%)、「10回のうち5回」が38社(同23.9%)、「10回のうち7回」が25社(同15.7%)という結果が得られ、製造業ユーザーが求める的中確度はかなり高いということが分かった。
また、仮に故障を予知できたとしても、代表的なAI手法であるディープラーニング(深層学習)は因果関係が分からない“ブラックボックス型”の手法であることから、故障原因の特定が難しいという課題もある。さらに、収集した運転データから故障予知のモデルを作成できたとしても、設置環境に左右されるため、他の設備機器へそのまま活用することが難しく、都度モデルを作成する必要があり、手間が掛かってしまう。ただその一方で、因果関係の見えやすいホワイトボックス型のAI手法を活用するなどして、課題を乗り越えていく可能性もあると矢野経済研究所は見ている。
ちなみに、製造業のトップ企業では既にビッグデータを活用した故障予知の研究が進められている。同調査結果によると、今後、大手製造業の工場において、2019年ごろに30社程度、2025年ごろに85社程度(いずれも構築社数累計)がビッグデータやAIを活用した故障予知ソリューションを構築するだろうとしている。
◎併せて読みたいお薦めホワイトペーパー:
» 「カイゼン」を中心にデータ活用が進む製造業、課題はROIと人材
» 77.3%が“つながる工場”実現に向けて取り組みを開始――経営層も投資に意欲
» PTCはIoTベンダーになったのか? CAD、PLMユーザーに向けたメッセージ
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
市場動向(製造IT)
製造業向けITツール/サービスに関する市場動向、実態調査、セキュリティインシデントなど、製造業におけるIT活用の“今”をお届けします。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー