JCU/島津製作所/きもと/関東学院大学 ELTRAコート
ミリ波レーダーに対応する自動車エンブレムの電磁波透過膜の成膜が低コストに
インジウムを用いて電磁波透過膜の成膜を行う従来手法と比較し、最大50%のコスト削減を実現しながら同程度の電磁波減衰率を実現する、新しい電磁波透過膜の成膜技術を、JCU、島津製作所、きもとの3社と、関東学院大学が共同開発。ミリ波レーダーに対応する自動車エンブレム分野での展開を狙う。
近年、自動車や歩行者を検知するための車載用センサーとして、ミリ波と呼ばれる高周波を使用する「ミリ波レーダー」に注目が集まっており、ミリ波レーダーを搭載する自動車は2030年に4700万台を超えるといわれている。
ミリ波レーダーは、車体正面のエンブレムの内側に設置されるケースが多いため、ミリ波レーダー搭載車のエンブレムは、電磁波を透過する必要がある。自動車のエンブレムは光沢や色彩といった意匠性も必要となるため、現在、ミリ波レーダーに対応するエンブレムは、海外企業が開発したインジウムを蒸着させる手法で電磁波透過膜の成膜を行っている。
しかし、インジウムは希少金属である上に成膜が難しいため、コストや歩留まりが課題となっており、ミリ波レーダーを搭載する自動車のエンブレムの電磁波透過膜を低コストかつ効率的にコーティングする技術が求められてきた。
◎編集部イチ押し関連記事
自動車産業の未来
» 自動車産業、変革の時代をどう生きる? 未来への処方箋
» 燃費規制の厳格化を追い風に、車載モータの新たな需要が拡大
» 「eコックピット」は自動運転車の普及に伴い増加――2022年には830万台超へ
» 「自動追い越し」など実現するレベル2自動運転、2020年には500万台規模へ
» 「事故低減」「優れた運転体験」は自動運転市場を拡大しない
国産新技術「ELTRAコート」がクルマの自動運転や安全性の向上に貢献
こうしたニーズに対し、JCU、島津製作所、きもとの3社は、関東学院大学 材料・表面工学研究所と共同で、電磁波透過膜の成膜技術を開発。この新しい電磁波透過膜の成膜プロセスを「ELTRA(エルトラ)コート」と名付け、自動車エンブレムの分野への展開を狙う。
素材の表面に、特殊な塗料を使用して有機膜の下地層を形成し、スパッタリングと呼ばれる方法で下地層の上からクロムで被膜をする。これを加熱すると、有機膜とクロム被膜の熱膨張率の違いから応力差が生じ、クロム被膜に極めて微細なクラック(ひび割れ)が発生。このクラックにより、ミリ波を含む電磁波が透過する。
特殊な塗料を用いた有機膜の下地層の形成は、きもとと関東学院大学 材料・表面工学研究所が共同で技術開発を行った。この特殊な塗料の塗布やクロムスパッタリングについては、島津製作所の装置や技術を利用することで実現。そしてJCUが、この成膜プロセスを自動車エンブレムの分野に応用することを提案し、実現に至った。
同技術による電磁波透過膜の性能評価では、電磁波減衰率を低く抑えられることが確認されているという。既存のミリ波レーダーが使用する周波数76GHz帯もしくは将来実用化が期待される周波数79GHz帯、いずれにおいても従来のインジウムを用いる方法と比較して最大50%のコスト削減を実現できると同時に、同程度の電磁波減衰率を実現しているとする。
JCU、島津製作所、きもとは、関東学院大学とともに国産技術で自動車の自動運転や安全性の向上に貢献すべく、同技術をELTRAコートと命名し、島津製作所が技術や装置を提供する事業を開始。島津製作所では、ELTRAコートの技術を応用し、自動車エンブレムをはじめとするさまざまな分野に電磁波透過膜を展開し、この事業で2020年度に売上高50億円を目指すという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
市場動向(自動車)
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー