産業社会におけるデジタル化の価値(3)
デジタル社会の進展に伴い重要性が増すセキュリティ対策(2/3 ページ)
ネットワーク接続先の多様性と変更頻度
オフィスネットワークは、産業オートメーションネットワークと比較して一般的に大規模である傾向があります。イーサネット、イントラネット、Wi-Fiネットワークを介して接続された従来のITアプリケーションに、さらに多くのPC、タブレット端末、スマートフォンを接続する可能性があります。オフィスネットワークは大規模なだけでなく、従業員が頻繁に出入りし、変化する傾向にあり、PCやその他のデバイスの接続や切り離しが頻繁に行われます。
生産現場においてイーサネットを介して接続されたPC、HMI、コントローラーは、オフィスネットワークより一般的に少数です。また、産業オートメーションネットワークは静的です。既に稼働中の生産システムに別のマシンとそのHMI、またはコントローラーを追加するケースはほぼありません。そして、ネットワークの構成要素も長期間にわたり同じであることがほとんどです。
通信パターンも同様のことがいえます。センサーは単一のコントローラーとしか通信せず、コントローラーが通信する方法は恒常的かつ予測可能です。センサーから“正常なパターンからのズレ”が検出された場合、ネットワークの問題またはサイバー攻撃(不正アクセス)の可能性が示されます。変更はあまり頻繁ではないため、柔軟性を犠牲にして、セキュリティを強化する産業オートメーションネットワークの厳格な変更管理手順を実施することが可能です。ネットワーク規模が小さいと、オフィスネットワークでは実用的ではないネットワークリンクを簡単にインストールできます。しかし、このような状況もIIoTが普及するにつれ、よりダイナミックな変化への対応が必要となるでしょう。
オフィスネットワークでは、PC、タブレット端末、プリンタ、その他の標準ハードウェアが接続されます。これらのデバイスの多くにイーサネットポートが装備されており、イーサネットIPおよびその他の標準プロトコルを介して通信します。モニターまたはネットワークプリンタのような周辺装置として接続されるアイテムは、通常、業界標準プロトコルを介して通信します。これらのデバイスで実行されるソフトウェアは、ネットワーク通信、多くのデバイスのプラグアンドプレイに関して高度に標準化されており、一般的にはパッチやバグフィックスで絶えずアップグレードされています。
一方、産業オートメーションネットワークは、HMI、コントローラー、モータードライブおよびその他の独自コンポーネントを接続します。これらのコンポーネントのほとんどはイーサネットポートを備えていますが、レベル0のものは一般的にアナログ電流や電圧ループなどの簡単な方法で通信しています。対して、十分に高度なデバイスは、イーサネットIPやModbus TCPなどの通信にさまざまな固有対応したイーサネットプロトコルを使用できます。ネットワークは、これらの異なるプロトコルで動作するように構成できますが、今後生産現場からさまざまな情報を収集しようとした場合、このような固有対応ではなく共通規格への準拠、リアルタイム性を確保したイーサネットを実装することが重要になります。
セキュリティアップデート
一般的に、オフィスのネットワークおよびシステムは、常に最新のソフトウェアアップデートやパッチが適用され、最新のサイバーセキュリティ対策が施された状態に保たれています。サービスの定期的な中断は、自動更新のためにしばしば発生しますが、一般的に他のデバイスへの自動更新によって修正が行われるため、ほとんど問題になりません。例えば、プリンタソフトウェアがWindowsプリンタドライバの最新の更新プログラムと互換性のない場合がありますが、この問題はプリンタメーカーが自動的にソフトウェアを更新してWindowsに対応しているため、すぐに解決されます。
一方、産業オートメーションソフトウェアの場合は状況が異なります。全てのコンポーネントとネットワークが1つの製造元によって提供されていても、ソフトウェアの変更は実装前にテスト/検証する必要があり、自動更新は許可されません。そして、コンポーネントとネットワークが異なるベンダーによって提供されている場合、さらに注意が必要です。PCベースのHMI上でWindows OSを更新するなど、1つのコンポーネントに対する変更は、PLCとのイーサネット通信に影響する可能性があります。
産業オートメーションコンポーネントまたはネットワークのアップデートはインストール前に慎重にテストする必要があるため、エンドユーザーの多くはアップデートを制限しています。これにより、産業オートメーションネットワークはオフィスネットワークよりも安定しており、ソフトウェアの更新頻度はごくわずかです。最新のアップデートを適用できないという点については、稼働時間を向上させるため、多くの企業が妥協を強いられています。
以上のような性質の異なるネットワークを接続することで、作業セル、生産ラインをまたいだ通信が行われるようになり、リアルタイム生産情報が監督レベル、運用ダッシュボード、MES、その他の運用およびビジネスインテリジェンスアプリケーションに送信されます。そして、高度に自動化された生産システムが垂直統合され、今日のスマートファクトリー(つながる工場)の基礎として機能します(図2)。
IIoTは、M2M(Machine-to-Machine)の進化形であり、個々のマシンを接続するだけでなく、現場のマシン、生産システムおよび機器の「多対多」ネットワークを実現します。このシステム内の通信の多くは、ワイヤレスであり、オープンスタンダードに基づいています(インターネットは究極のオープン環境といえます)。インターネットのオープン性は普及している相互通信の大きな利点ですが、重要なシステムをパブリックなインターネットに公開するリスクは依然として存在します。
デバイスとプラットフォーム/アプリケーション層の間には、ゲートウェイ、M2M接続端末、LAN、モバイル通信ネットワークおよびインターネットがあります。これは、IIoTソリューションプロバイダーが、重要なITオーバーヘッドやシステムアーキテクチャ、ポリシーなどの変更を必要とせずに、生産現場とビジネスレイヤーとの間で、データを安全かつプライベートに取得できる手段です。
基本的に、IIoT接続ソリューションプロバイダーは、カスタマイズされたネットワークまたはクラウドソリューションを開発する必要はなく、ローカルまたはクラウド経由でデータを送信する分散アプリケーションを使用して接続を提供する必要があります。これにより、製造業企業は、工場システムで実行される生産プロセスと、コアコンピタンスとなる製造手法に集中することができます。
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産業社会におけるデジタル化の価値
「デジタル化」とは何か? デジタル化が産業社会にもたらす変化と価値について、全4回で解説する。
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