今こそ考えたい製造業IoTのセキュリティリスク
生産ラインの安定稼働を維持したまま、セキュリティリスクに備えるには?(2/2 ページ)
ただし前述の方法は、あくまでもメンテナンス作業などのタイミングで実施するスポット的な対策でしかない。機器に挿し込んだタイミングでしか検知、駆除できず、継続的なチェックが行えないからだ。
そこで、これらに加えて「ネットワークでの検査/検知」が重要となってくる。
「ウイルスに感染して、不正なプログラムが実行された場合、感染端末からは不正な通信やパケットが発信される。その際、ネットワーク上で不審なパケットを検知できれば、感染源の特定が可能となり、Trend Micro Portable Security 2で迅速に駆除を行うといったように、感染後の初動を早めることが可能だ」と上田氏は述べる。また不正アクセスの場合、「不審な挙動」が行われることが多い。例えば「何度もログイン試行を行い失敗する」「特定の端末から特定の端末へファイルを送信し、リモートで実行を行う」などといったものだ。こうした不審な挙動をネットワーク側で検知できれば、脅威が工場内に侵入してきたとしても、情報流出や不正操作による設備の稼働停止など影響が大規模に至る前に対応が可能となる。「トレンドマイクロでは、『Deep Discovery Inspector』と呼ばれる製品により、ネットワーク上の異常を検知する機能を提供している」(上田氏)。
Deep Discovery Inspectorは、工場ネットワーク内を常に監視して、異常な振る舞いやウイルス感染を迅速に検知してくれる製品だが、ここで気になるのがネットワーク負荷の問題だろう。いかなる理由があろうと、生産ラインの安定稼働の妨げになってはならないからだ。これに対し上田氏は、「Deep Discovery Inspectorはネットワークスイッチのミラーポートに接続して利用するため、本来の工場ネットワーク側へ負荷を掛けることなく利用できる」と説明する。
ここまでは既存の工場への対策が中心だったが、工場や生産ラインの新規立ち上げのタイミングであれば、さらに踏み込んだセキュリティ対策を講じることができる。「トレンドマイクロでは、軽快に動作するロックダウン型ウイルス対策製品『Trend Micro Safe Lock』を用意。あらかじめ動作してもよいアプリケーションだけをホワイトリストとして登録しておくことで、不正プログラムなどの実行を排除できるというものだ。あらかじめセキュリティ要件として盛り込んだ上で設備を用意することで、安全性と可用性を両立させた設備を構築することができる。通常のウイルス検索のような負荷も掛からず、パターンファイルの更新なども発生しない」(上田氏)。
やはり重要なのは「人の意識」
こうしたソリューションを活用することで、オープンな汎用技術のメリットを受けつつ、製造業ならではのニーズに応えられる堅牢なシステムを作り上げることができる。しかし、そこにはまだ“意識面でのギャップ”も残っている。
この点について上田氏は、そもそも製造業におけるリスク対策の意識は決して低くないと指摘する。「想定外のことで生産ラインが止まらないよう、製造業ではさまざまな投資が行われている。ただし、ほとんどの場合が“物理空間”に対してのリスクが前提である。サイバー空間が引き起こすリスクについても、“(生産ラインが)止まる”という結果は一緒。ならば、この部分に関しても同じようにリスク管理が必要だ」と上田氏は述べる。
「物理空間において、生産ラインで使われているモータが異常に振動したり、火花が発生したりした場合、生産ラインが停止する前に点検、メンテナンス作業を迅速に行うだろう。こうした“兆候を捉える”という観点では、サイバー空間でも同じであるべきだ。例えば不審なアクセスなどの兆候を発見した場合、物理空間におけるリスクと同じように意識して対処すべきである。そのためにはガイドラインを整備し、対策を行い、それを基にPDCAサイクルを回してブラッシュアップしていく取り組みが不可欠だ」(上田氏)。
この「サイバー攻撃のリスクを意識する」という取り組みを円滑に進めるための鍵はどこにあるのだろうか。トレンドマイクロのソリューションを既に導入している企業の多くは、“経営層がリスクを理解し、トップダウンで現場に検討を促すことからスタートした”という。「OA側は情報システム部門、工場側は生産技術部門とそれぞれ分かれて管理されている場合が非常に多いので、両方のシステムを理解している人は少ない。経営層からの指示があれば、両者が歩み寄り、密なコミュニケーションが取れる。基本的にはお客さま側で体制を整える必要があるが、ガイドラインの整備を含めトレンドマイクロやSI事業者が“橋渡し役”になることもできる」(上田氏)。
プロトコルや機器の汎用化が進むことで、工場ネットワークにも「マルチベンダー」の波がやってくる。特にセキュリティにおいては、複数の製品が動くことで「抜けや漏れがないか」をチェックし対処することが重要だ。さらに製造業では、抜けや漏れがなく対策可能だったとしても、被害に遭ってしまったときの対応に時間がかかってしまうと、それがそのままダウンタイムとして損害の拡大につながる。そのため、万が一の際に、迅速に対処できる対策や体制が整っているかも重要だ。これまで生産ラインを止めないようにさまざまな(物理空間上での)リスクを想定していたはずなので、そこにもう1つ「サイバー攻撃」のリスクを付け加えるべきである。そのために必要な技術を、適切に取り込むことをぜひ考えていただきたい。
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今こそ考えたい製造業IoTのセキュリティリスク
製造業に革新をもたらすといわれる「IoT(Internet of Things)」。スマート化された工場の明るい未来だけがフォーカスされがちだが、ネットワークにつながることでもたらされるのは恩恵ばかりではない。本インタビュー企画では、製造業IoTを実現する上で重要となる「セキュリティ」にフォーカスし、製造業IoTで起こり得るセキュリティインシデントとその対策について紹介する。◎こんなキーワードに興味のある方にオススメ:[工場セキュリティ][製造業セキュリティ][IoTセキュリティ][制御システムセキュリティ][セキュリティリスク][セキュリティソリューション]
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