IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト(6)
ソフトウェアテストの試練(前編)―IoTとAI、ビッグデータの試練を乗り越える開発(4/4 ページ)
AI時代のソフトウェア開発
AIと言ってもいろいろだが、ここでは以下のようなAIシステムを想定する。
AIは決定的なシステムでなく、機械学習や遺伝的アルゴリズム、ヒューリスティックスなどを含む非決定的なシステムである(図5)。このAIの開発では、これらの非決定的なアルゴリズムを念頭にソフトウェア開発を行う。非決定的なシステムの企画から要求分析、設計、製造、テスト、運用まで一気通貫に対応する必要がある。
しかしAIシステムと言えども、全てが非決定的ではなく、実は多くの部分は従来の決定的なアルゴリズムで作成されている。ここでもAI部(非決定的部)と非AI部(決定的部)で異なる開発プロセスを採用したくなる。しかし管理が面倒になるので、やはり統一した開発プロセスが欲しい。
AIシステムを開発する上でもっと深刻な問題がある。AIは研究所色が強い部門で開発するが、多くの非AI部分は従来の開発部門が開発する。両者は文化が異なり、開発プロセスが異なり、テストに対する取り組みも考えも異なる。相いれない両者の調整が必要になり、これが開発やテストをより一層面倒にしている。
この結果、妥協的な解決として、開発プロセスはアジャイルになる。これであれば、臨機応変に調整が可能で、非決定的なアルゴリズムにも、非決定的な研究所にも対応できる。しかし1週間程度の反復期間(*)が適当なのかはプロジェクトや製品に大きく依存するので調整する必要がある。アジャイル開発のスクラムをそのまま適用しようとすると、大火傷を負うことになるのは(AIの機械学習でもあっても)学習できる。
(*)各アジャイルによって呼び方は異なる。スクラムであればスプリント、ASDであればタイムボックスなど。1週間から2週間の期間を指す
とあるテスト現場より(4)
A:「AIって、よく聞くんですけど、おいしいんでしょうか?」
B:「おいしいから、みんなで寄ってたかってるんだろうな。蟻みたいに」
A:「それで何があればAIっていえるんですか?」
B:「AIかな。愛だよ。……すまん、無視してくれ。出来心だ」
ビッグデータ時代のソフトウェア開発とは
ビッグデータのシステムでは名前の通り、大量かつ非定型、予測不可能なデータの収集と分析を中心に動作するシステムである。ビッグデータシステムの開発では、上記のようなデータを中心に企画から設計、実装、テスト、運用を考える必要がある。
ここで重要な鍵となるのは、ビッグデータは非定型なデータであることと、分析結果こそが肝心なことである。それに反するが将来の分析に備えて、生のビッグデータも捨てられないことである。
また最近では個人情報やプライバシーの問題、さらにセキュリティの問題もあるので、データの取り扱いが面倒になっている。これはテストでも同様で、上記の問題が起こらないように、テスト用データも十分に管理する必要がある。同じことがログを取るときやデバッグするときにもいえる。
ビッグデータシステムでは最初のトライアル開発のときはウォータフォールでもアジャイルでもいいが、分析結果を検討して行う再開発以降はアジャイル的になる可能性が高い。分析結果によっては新規開発と同じようになり、ウオーターフォールで開発することになるかもしれない。
今回は従来の開発プロセスとして、ウオーターフォール型開発やアジャイルソフトウェア開発を最初に見て、次に新時代のIoTやAI、ビッグデータのシステム開発を見てきた。次回は新時代のソフトウェアテストについて、見ていくことにする。
著者紹介
五味 弘(ごみ ひろし):OKI(沖電気工業) シニアスペシャリスト、エバンジェリスト。博士(工学)。
ソフトウェアの開発支援・教育に従事。電子情報技術産業協会(JEITA)専門委員会の委員長や情報処理振興機構(IPA)などの委員など。情報処理学会(シニア会員)。三重大学などの非常勤講師やリサーチフェローも務める。IoTやAI時代のソフトウェア開発の知見融合が関心事。
著書に『はじめてのLisp関数型プログラミング』(技術評論社、2016年)、共著書に『IoTセキュリティ』(日経BP社、2016年)、『定量的品質予測のススメ』(オーム社、2008年)、『プログラミング言語論』(コロナ社、2008年)などがある。雑誌執筆や講演なども多数。著者の個人サイトはhttp://gomi.info/。
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IoTとAI、ビッグデータ時代のソフトウェアテスト
言うまでもなくソフトウェアテストは重要だが、IoTやAIなどの新しい概念によってソフトウェア自体の在り方が変わりつつある中、旧来からのテストを踏襲するだけでは成果は得られない。新時代のソフトウェアテストについて、考察する。
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