ローム「音質設計技術」
電子部品メーカーが「顔の見える企業」になることの意味(2/2 ページ)
音質設計技術において、具体的には「ボリューム回路の抵抗ラダーに使う抵抗素子の設計」「電源/GNDのインピーダンス共有化」や、「ボンディングワイヤの材質」「差動段素子の配置」などがパラメータとして用意されており、これらの調整により「狙い通りの音質」(同社)を持つ製品の開発が可能となった。
前述のハイレゾ用SoCを始め、ホームオーディオ向けサウンドプロセッサ「BD34704KS2」「BD34705KS2」にもこの設計思想は導入されており、BD34704KS2/BD34705KS2の場合には「小音量時にも情報量が変わらないこと」を目的として開発が行われている。
オーディオ用であっても電子部品である以上、電気特性を満たすことは絶対的に必要であるが、オーディオの場合、部品を導入するメーカーは「電気特性を満たす」ことに加えて「音を良くする」ことを最大の目的とする。その実現のため、部品メーカーがどこまで寄り添えるかを考えた結果が、この開発手法の導入であるといえるだろう。
これはロームが垂直統合モデルという生産手法を採用しており、目的にそった製品の企画開発、特定製品での利用を前提としたカスタマイズが容易であるという背景も存在するが、社内に試聴室を設け、担当エンジニアや導入メーカーも同席してのリスニングテストを実施するといった努力も続けており、それがヤマハ「CX-A5100」やデノン「AVR-X2300W」、Technics「SC-C500」といった製品への同社LSI採用へとつながっている。
読み解く「カギ」は垂直統合モデル
同社は伝統的に民生機器に強く低耐圧半導体を主力としてきたが、2010年代に入ってから民生機器のコスト競争が進む市場背景もあり、「パワーデバイス」と「車載」「産業機器」を軸として事業を展開してきた。既にこれらは効果をあげており、2015年度(2016年3月期)にはパワーデバイスだけで576億円を売り上げるまでに至っている。
音質設計技術の確立をはじめとしたオーディオ製品への注力は近年の指針に反するように見えるが、パワーデバイスであってもオーディオ用LSIであっても、半導体インゴットからチップデザイン、フォトマスク製造、パッケージング、さらには販売までも手掛ける垂直統合モデルを最大限に生かした結果であることは共通する。
同社は今後開発するオーディオ関連製品について、基本的には音質設計技術の思想を導入する意向を示しており、それはより「同社らしさ」の現れた製品を世に送り出すことにつながる。スペックと価格に支配されがちな電子部品の業界においては異色のアプローチといえるが、高級オーディオの世界において、「搭載部品のブランドで製品を選ぶ」ことはそう珍しくない。
既に高級オーディオ機器への搭載を想定したハイレゾ対応DACやスピーカーアンプの開発が計画されており、「ローム搭載」がオーディオファンの間で話題になるのもそう遠い未来のことではないかもしれない。
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