矢野経済研究所 パワー半導体市場
パワー半導体市場の将来予測、2025年は300億ドル超
2015年のパワー半導体世界市場規模は、前年比7.0%減の148億2000万ドルとマイナス成長となる見込み――。矢野経済研究所はパワー半導体の世界市場に関する調査結果を発表した。
2015年のパワー半導体世界市場規模は、中国および欧州市場の景気減速の影響による需要の低迷、民生機器向け電源の成長鈍化、参入メーカーが増えたことによるコスト競争の激化などを要因に、前年比7.0%減の148億2000万ドルとマイナス成長となる見込みだ――。
矢野経済研究所は2015年9月~2016年1月の期間、パワー半導体メーカー、ウエハーメーカー、システムメーカーなどを対象にパワー半導体の世界市場に関する調査を実施。この結果を踏まえ、パワー半導体世界市場規模に関する2015年の見込みと、2020年および2025年の予測について発表した。
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需要低迷が続いた2015年
中国市場向けパワー半導体の出荷が好調であった2014年に比べ、2015年は需要低迷が続いた。2014年にメーカー側は白物家電用IPM(Intelligent Power Module)の生産数量を引き上げており、2015年の前半はその在庫調整の状況にあったという。また、汎用インバーター向けIPM、IGBTモジュールに関してはコスト競争に入っており、低価格な中国ローカルメーカーの製品が増加している状況だ。
欧州市場に関しても景気後退の影響により設備投資が停滞。産業機器向けのIGBTモジュールの需要が不調であった。
一方、民生機器についてはPCやフラットパネルディスプレイ用電源向けMOSFETの受注が2015年から落ち込み始め、同年1~6月の上期は低調に推移した。この影響により、民席機器向け電源の生産拠点が集中するアジア向けのダイオード、MOSFETの出荷金額が落ち込み、前年比マイナスとなっている。同年下期からは在庫調整が一段落し、2016年製品モデルへの受注が入り始めており、緩やかな回復が期待されている。
懸念されるコスト競争に関しては、中国の新興パワー半導体メーカーが増加したことにより、ダイオードだけでなくMOSFETについても低価格競争が進んでいるという。さらに、PCやタブレット端末、フラットパネルディスプレイについては性能よりもコストを重視する傾向が強まっていることから、中国メーカーのMOSFETが伸びているとのこと。同じく、IGBTに関してもモジュール品を量産する中国メーカーが製品を投入しており、低価格汎用インバーターでは中国メーカーのIGBTモジュールを採用するケースが増加しているという。こうした状況を受け、日米欧の主要半導体メーカーは、低オン抵抗・低損失が求められる分野に注力し、数量拡大を狙っている状況である。
自動車やスマホがパワー半導体市場をけん引!?
注目すべき動向として挙げられるのは、サーボモータおよびUPS(無停電電源装置)向けである。2015年は自動車とスマートフォンの出荷が好調であったことから、産業用ロボットやNC工作機械の需要が伸び、サーボモータ用IPMの数量も伸びた。UPSに関しては、北米のデータセンター向けの需要が安定しており、耐圧1200VのIGBTモジュールが増加している。「IoT」という大きなトレンドの影響で、データセンターの整備が進むものと考えられているため、大容量UPSの需要も期待。これに伴いUPS向けIGBTモジュールの数量増が見込まれる。
自動車向けパワー半導体も堅調。電装品の増加により、車両1台当たりのECU数も増大し、ECUに実装されるダイオードやMOSFETの需要も伸ばしているという。今後は、HV/EV市場の拡大、LEDライトの普及、ISO 26262対応、ADAS向けセンサーの数量拡大が、自動車向けパワー半導体の新しいけん引役となる見通しだ。
パワー半導体世界市場の将来予測
2020年のパワー半導体世界市場規模は、231億ドルになると予測。2014~2020年の年平均成長率は(CAGR)6.4%で、2020年の市場規模は2014年の1.5倍になるという。それ以降も産業および自動車分野が市場をけん引し、2025年には339億1000万ドルの市場規模に成長していると予想する(2020~2025年のCAGRは8.0%)。
需要増が期待される産業は、新エネルギー、サーボモータ、UPS、鉄道向けパワー半導体。新エネルギー分野に関しては、太陽光発電が日本と米国、風力発電が欧州が需要をけん引するとみられる。さらに産業用ロボットやNC工作機械、半導体製造装置も堅調に伸びる見込みであることから、サーボモータ向けIPMが増加するという。鉄道については、東南アジア、インド、南米といった中国以外の市場に投資が見込める。2020年以降は、東南アジアや中南米でも電力設備などのインフラ投資が活発化するとみられ、耐圧3.3kV以上のIGBTモジュールの出荷数量が伸びる見込み。
また、自動車向けパワー半導体は欧州の自動車排出ガス規制(EURO VI)に対応するため、車両の電動化が進む。これに伴い、車載向けMOSFETやIGBTの出荷数量は増加。新たな領域としては、車載向けLEDライトの普及やISO 26262対応に伴うECUの2重化、ADAS用センサーの採用拡大などが期待され、MOSFETやダイオードの出荷数量の増加に大きく貢献するものと思われる。
SiC、GaNパワー半導体の世界市場規模
SiC、GaNパワー半導体の世界市場規模は2020年に14億5000万ドル、2025年に31億3000万ドルに達する見込みだという。2014~2020年のCAGRは47.6%、2020~2025年のCAGRは16.6%と予測。
既に先行して市場が立ち上がっているSiCパワー半導体は、6インチSiCウエハーでの量産が本格化する2020年からSiCトランジスタ、フルSiCモジュールの採用が増加する。需要の中心は耐圧1200V以上の領域で、既に搭載が進んでいる鉄道や産業機器用高周波電源、太陽光発電用パワーコンディショナー向けの数量拡大が見込める。自動車向けは、車載用充電器から採用は始まっており、2020年までは耐圧600V以下の昇圧コンバーターやDC/DCコンバーター向けが中心となる見込み。2020年以降は、主機モータ用メインインバーターへの採用も始まり、自動車向けフルSiCモジュールの需要も増加するとしている。
一方のGaNパワー半導体は、2016年からサーバや通信基地局、PC用ACアダプター、フラットパネルディスプレイなどの電源回路にGaNトランジスタの採用が始まるという。高周波スイッチングによりインダクターなどの受動部品のサイズダウンにつながり、電源回路の小型・薄型化を実現できる。また、GaNトランジスタでHV/EV向け車載用充電器やDC/DCコンバーターを検討している自動車メーカーや電装機器メーカーもあり、2020年ごろから量産車への採用が進むという。さらに、非接触給電システムや自動運転用レーザースキャナーへの応用も研究されており、2020年以降は自動車分野での搭載用途拡大も期待されている。
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