製造業VR
9兆円市場に成長するVR、「本命」用途へ足りない要素(1/2 ページ)
ゲームやエンタテイメント分野で存在感を発揮し始めているVRだが、本命は製造や建築など産業用だとの見方がある。しかし、「その本命」で普及するには欠けている要素があるように思える。
5年前なら「SF」といわれていたVR環境が今現実に
概念自体は古くから存在してたVR(Virtual Reality:仮想現実)だが、2016年にはゲームをはじめとしたエンタテイメントのいち手法として強い存在感を発揮するまでに成長した。強い存在感こそまだエンタテイメント分野に留まっているが、製造業や建設業の設計から製造、マーケティング、販売、メンテナンスといった産業用領域にも影響を及ぼしつつある。
「VR環境は5年前ならば“SF”、2年前なら“いつ実現する?”と呼ばれただろうが、今では現実のものになっている。調査会社によればVR/ARは2025年までに800億ドル(約9兆円)の市場へ成長するといわれているが、現在注目されているゲームはそのなかで1割程度を占めるにすぎないだろう。大半は映画製作や医療、自動車、製造、建築などといったビジネスの中で使われるだろう」(NVIDIA Bob Pette氏)
VR映像の生成に欠かせないGPUを手掛けるNVIDIAも産業領域を強く意識している。2017年1月26日に開催された「NVIDIA Pro VR Day 2017」では、ビジュアライゼーションの分野で25年以上の経験を持つ同社のBob Pette氏(Vice President, Professional Visualization)はこのように、VR/AR市場の“本命”は産業用だと語る。
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VRは9兆円市場に、その9割は産業向け
前述したよう、何らかの手段で仮想空間(現実)を作り出して体験させるVRや、現実の世界に映像やデータを付与して拡張するAR(Augmented Reality)といった概念は以前から存在する。近年注目されてることになったきっかけは「Oculus Rift」の登場(プロトタイプ公開は2012年)だが、単純に映像をHMDに投影するだけではなく、装着者の動きに合わせた映像を投影し“体験”を提供することで大きな話題を呼んだ。
「仮想の物体を体験できる」という点に着目したのはゲームや映画などエンタテイメント分野のプレーヤーだけではなかった。Pette氏が発言したよう、設計や製造分野のプレーヤーがいま、VRに熱い視線を注いでいる。特にオートデスクやダッソー・システムズといった3次元設計に関連する企業は、映し出す元になるデジタルデータの扱いを得意とすることから、VR研究のラボを立ち上げ、一部企業へ実験導入を行うなど積極的な動きを見せている。
これまでVRといえば視角デバイス(HMD)とそれによる没入体験が耳目を集めていた感があるが、ここ1~2年はより広い範囲でVRのメリットをどう訴求するかに議論の中心が移り、コンテンツやインタラクションに関する部分が注目されている。製図台での設計からCAD、そして3D CADという設計者の「体験変化」を熟知するオートデスクやダッソー・システムズといった企業が注力するのも、この注目点のシフトが1つの要因だ。
とはいえども、現時点はHMDとコンテンツ生成側PCの性能が上がったことによって、「より写実的な映像への没入ができる」という段階であることも事実。Oculus Riftと並ぶ定番であるHTC「VIVE」には、実在の物へ取り付けることでその軌道を取り込めるトラッキングデバイスである「TRUCKER」が新オプションとして用意されたが、これはインタラクションより映像を優先しなければならなかったというVRの現状を示すものといえる。
現在のVRにおいてインタラクションは課題の1つであるとPette氏も認識しており、「産業向けVRにおいてインタラクションの必要性は高まるはずだ。私見だが“VRで共有すること”の重要性は更に高くなると考えている」とまずは産業向けVRとしては、デザインレビューなど仮想物体の共有体験が有望だろうとの意見と述べる。
ただ、「VRという概念をどう取り込み、どのような体験を提供するか」によってデバイスの仕様は大きく変わる。Pette氏の発言はHDMにVIVEやOculus Riftといった民生機器を業務用途に用いるケースを想定していると思われる。VR機器に本格的なインタラクション機能を実装するならば、アプリケーションとのすり合わせが欠かせず機器側のコストも増大するからだ。
2012年より販売されているキヤノンの設計開発支援MRシステム「MREAL」はHMD単体でも900万円(上位モデル「MD-10」の価格)という価格設定がなされている。将来的には何らかのインタラクション機能が標準的になるだろうが、まずはHDMによる「仮想視覚体験の共有」が需要として生じ、そこから市場が拡大していくだろうというのが、Pette氏の予測だ。
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