製造業VR
9兆円市場に成長するVR、「本命」用途へ足りない要素(2/2 ページ)
視覚体験の共有がVR市場を大きく押し上げるとしても、まだデバイス側の進化も必要であるとPette氏は主張する。解像度や視野角、フレームレートの改良はここ1~2年で劇的に進んでいるが、視野角はまだ狭く、フレームレートについても「VR用途に用いるならば片目あたり90fps、できれば120fps欲しい」(Pette氏)とさらなる処理能力が求められる。
加えて言えば、遅延問題も完全には解決されていない。Pette氏によれば遅延が20ミリ秒以上発生すると利用者は気分が悪くなるという研究結果が出ているそうであり、単純なレンダリング速度だけではなく、利用者の視線や姿勢変化に合わせた描画の高速化(遅延対策)がまだまだ必要だと結論づける。
映像の他にも音響やハプティクス(触覚)、VR空間に映し出す映像生成などにも課題は残されているとPette氏は述べるが、NVIDIAとしてはアプリケーション(プログラム)の実装を支援するSDK作成などの手段でプロ向けVRを推進していきたいという。加速度や熱といった視覚に影響しないパラメーターは同社提供のSDKに含まれていないが、自社ビル建設に際して用意したVRモデルには、熱に関するパラメーターを取り入れている。
Oculus Riftの提示した視覚を中心とした「体験」によって、VRの注目度が高まり産業領域も含んだ市場が立ち上がりつつある。しかしながらPette氏が指摘するよう、VRデバイスだけを取り上げても完成の域に達したとはいえない状態であり、産業向けとしてはまだ期待感の先行する状態だ。
Pette氏も「映像を見るだけがVRではなく、今後はVRを利用する局面に入るはずだ」と現在が過渡期であるとの認識を示す。言い換えれば「VRを導入した方が良い」「導入することでパフォーマンスが向上する」ような局面をより多く提示できるかどうかが、関係者の課題といえるだろう。
現在は「VR=没入型ゴーグルでの没入体験」としての訴求が多く行われ、それがVRの全てであるような誤解を生んでいる。しかし、本来、VRは「見ること」に限定されるものでなく、そこから発展するARやMRという概念も含んで発展していくものである。設計が紙からデジタルへ変化したことで大きな変化が起こったよう、VRの登場と普及は産業界にも大きな変化を与える可能性を秘めている。
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