東京工科大学 創立30周年記念公開講座
AI研究の第一人者、松原教授が語る「人工知能は未来をどう変えるのか」(4/5 ページ)
目に見えた成果を出すディープラーニング
3回目のブームとなる今回はこれまでと何が違うのかというと、最近のブームはディープラーニングを中心とする機械学習が成果を出していることに端を発するからである。
機械学習とはコンピュータに大量のデータを与えて学習させることを指す。エキスパートシステムでは人間があらかじめルールを与えていたが、機械学習は人間がルールを教えなくとも、大量のデータから自ら学習する、コンピュータが自習するというものだ。
「猫」の概念を学習するとき、それまでは人間が「猫とは、ヒゲがこういう形で、耳の形がこれで、毛の色は……」というように「こういうものが猫」とその特徴を教えていた。それに対し、ディープラーニングでは、大量のデータから特長そのものをコンピュータが自ら学習する(猫の判別であれば、数万匹~数十万匹の猫の写真、猫と対比するものとして人間の写真などから猫の概念を学習する)。
囲碁でプロ棋士に勝ったAlphaGoもディープラーニングを使って学習している。「ディープラーニングがいい」(学習成果が出る)ということで、いま、人工知能がさまざまなことができるようになっている。
ディープラーニングが成果を出しているもう1つポイントはクラウドだ。クラウドにはいまビッグデータが集まっている。猫の写真にしても数十万、数百万という大量のデータがすぐに手に入る。猫の概念を学習するのに、人間なら数十匹程度の猫(写真や実物も含めて)で事足りるが、一方ディープラーニングでは数万匹~数十万匹の写真が必要になる。人間に比べてコンピュータはデータがたくさんないと学習できない。それが、ビッグデータの時代になって材料に事欠かなくなった。
大量のデータは必要となるが、人間が教えなくても自動で学習する、これがこれまでの人工知能研究からすると一線を画すポイントだ。それが最近の人工知能ブームのきっかけではあるが、注意しておきたいのは「機械学習をするものが人工知能」ではない。要は「結果的に賢いふるまいができれば、そのコンピュータは人工知能」ということだ。
将棋に見る、人工知能と人間の関わりの今後
これから、いろいろな分野で人間の能力をコンピュータが追い付き追い越そうとする。コンピュータと人間のシンギュラリティ(技術的特異点)が2045年に来ると声高に言われることもある。それに部分的な能力であったとしても、コンピュータが人間を越えることに脅威を感じる人が多いのも事実だ。
松原氏 シンギュラリティという言葉がありますが、人工知能の能力が総合的に人間を越える、2045年に来る、来ないという。これは分からないです。専門家の間でもシンギュラリティなんて来ないと言っている人も多いし、来るにしてもそれが2045年なのかという議題もあります。しかし将棋についてはシンギュラリティが既に訪れている。
基本的に人工知能は人間にとって道具なので、道具が賢く便利になると生活はその分、豊かになります。それは喜ぶべきことですが、プロ棋士が将棋ソフトに負けると不快になり、人間の尊厳を損なわれるような気がする。それは当然あると思います。いま、ちょうど将棋がそういうところに来ています。今後の人工知能と人間の関わりを考える上で非常にいい題材になると思います。
コンピュータ将棋は既にプロ棋士と対局しても勝つ時代になっている。強くなったコンピュータ将棋にはいくつか面白い特徴があると松原氏は指摘する。創造性、コンピュータが苦手で人間が得意だと思われている、人間らしい能力を発揮し始めているという。
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