東京工科大学 創立30周年記念公開講座
AI研究の第一人者、松原教授が語る「人工知能は未来をどう変えるのか」(2/5 ページ)
例えば「Siri」や「Cortana」「しゃべってコンシェル」などの音声対話だ。音質や環境によってはなかなか聞き取ってくれないなど理解力に不満はあるが、それなりに聞き取ってくれるレベルになっている。ECショップなどのレコメンド機能(購入した商品に関連する商品をお薦めしてくれる)、乗り換え案内サービス、いずれも人工知能の成果だ。また、お掃除ロボットの思考部分(バッテリーが少なくなると自分で基地に帰って充電するという機能など)、そういうところにも人工知能が使われている。
いま勢いがあるテーマの1つが自動運転だが、これは「もうすぐ実現しそうというレベル」。AIの運転レベルは免許を持っている人間の標準技術より上だとする研究者もいるが、まだ実証実験段階だ。日本ではレベル3(運転免許を持っている人が運転席にいて何かがあったときには制御を引き取る)までの実験しか行われていないが、シンガポールなどではレベル4の自動運転(一番上のレベルで運転席に誰もいない)の実験まで進んでいる。
ただ、レベル4の自動運転には、AIの運転で事故があったときに誰がどれくらい責任を持つのかという法整備が必要となるなど、どのように社会実装するかが重要な課題になってくる。
松原氏 総理大臣が東京でも2020年にレベル4の自動運転をすると宣言したので、多分、特区で実証実験を行うのだと思います。それ(レベル4自動運転)ができると本当にラクですね。
飲み屋には自分で運転していって、飲んだら後部座席に寝て気がついたら自分のうちの駐車場で起こされるということも可能。あるいは具合が悪くて病院にいくなど、自動運転ができると非常にラクだなと思います。高齢化してお年寄りが危ない運転をしなければならないとか、酒気帯び運転とかが問題になっていますが、自動運転で解決できる可能性がある。
一方、こうした実用的な分野以外でも、創造性やクリエイティビティの面における人工知能研究も行われている。芸術的な絵を描く、作曲するという「コンピュータに創造性を持たせる」研究だ。
松原氏がいま進めている研究に、コンピュータに小説を書かせるというプロジェクトがある。「ショートショートの名手・星新一のような小説を書かせる」というのが目標だ。ご遺族から、こういう研究するなら本人も喜びそうだと研究のために1000作以上ある作品のデータを提供してもらった。
松原氏 創造性を持たせるのは難しいので、なかなかうまくいかないのですが、私たちのプロジェクトでも人工知能が作品もどきを作っています。
星新一賞という文学賞がこの研究と同じ頃に始まって、募集要項を見ていただけると、人間以外の応募も可という趣旨が書かれています。かっこして人工知能など、と。これまでは私たちが読んだ段階でこれで応募は……と2回ほどためらってきました。ですが、だんだんプレッシャーを感じてきまして、2015年に応募しました。四次審査まであるんですが、一次審査を通りました。
最終的にはストーリーもAIが考えて日本語にするところもAIが作るというのが目標ですが、いまのところストーリーの骨格は人間が与えて、ストーリーを日本語にする部分をAIがやっています。私たちから見ると、「うーん」というところはあるんですが、そこはあえてコンピュータが書いたものをそのまま出しています。まだ先は長いですね。まだ大したことはないと思っています。
もちろん、コンピュータは言われたことしかできないのだから創造性を持てるはずはないという意見もある。松原氏は「そういう人たちを納得させるためには、コンピュータが作った創造的なものを目の前に見せて、こんなものをコンピュータが作ったんですよというしかない」と言う。
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