IT導入完全ガイド
「売れたのに利益にならない」を解消する最新SCMとは
「作ったけれど利益が見込めない」「売れたけれどもうからない」「原価が掛かり過ぎ」が発生する理由は? サプライチェーン管理だけでは見えにくいモノづくりと「おカネ」の関係を改革する最新SCMの動向を解説する。
「SCM」を見直す
サプライチェーン管理を高度化しようという流れは2000年ごろにいちど盛り上がりを見せたテーマだ。というのも、当時は、円高などの影響もあり、日本国内の製造業では人件費の安い東・東南アジアに製造拠点を移す動きが顕著になり、部材の調達や製品の輸送を含むサプライチェーンが従来と比較して非常に長くなった時期でもある。
サプライチェーンが長くなったことで、為替や関税、輸送ルートごとのコスト比較など、従来よりも複雑な検討ポイントが増えた。各ポイントでどのように需給バランスを調整するか次第で在庫が想定外に積みあがったり、部材調達が遅れた場合には生産ラインがストップしたりするリスクも大きくなった。
このころ、国境をまたぐ自由貿易協定と地域内の労働賃金格差を利用した低コストでの製造で先行していたのはEU経済圏だ。このとき、課題となったのは「サプライチェーンが長過ぎて、在庫などの財務リスクが把握できない」という点であった。各拠点からの情報を集計するうちにリスクが積み増されていくといった問題が顕著になったのだ。
その時、ITソリューションベンダーが提案したのは、製造(生産)と販売の情報を連携させることだ(バックナンバー参照)。需要と供給の情報を密に連携させることで在庫のムダを解消することに主眼が置かれており、需要と供給のバランスを人間に頼らず均質に効率化するためにITツールが採用された経緯がある。
SCM導入の反省と「第三世代SCM」のトレンド
当時のSCMで課題となったのが、「ITによる最適化をロジックとして盛り込み過ぎたこと」だ。需要と供給の予測をシステム上にロジックとして組み込んでしまうと、突発的なイベントや外部要因などを組み合わせた判断が難しく、変動が少ない、または変動のトレンドが一定の分野でなければ対応しにくくなってしまう。
例えば、突発的なイベントで在庫が逼迫(ひっぱく)したとして、急激に増加した需要を基に「需要トレンドが伸び続ける」と判断してしまうと、イベント終了後に在庫が積みあがる結果になる。一方で、先行してこうしたイベント情報を把握できた場合は一時的に人の判断で生産を増やしておきたいこともある。
こうしたことから、「マニュアル(手動)回帰」が進んだのが2008年ごろ。実績情報を基にしたシナリオシミュレーションと、それを基にした意思決定を推進しようというSCM改革第二のトレンドだ。
このとき、業務で問われたのは実行計画の最適化だけではなく、「変動への追従」や「将来の採算性」といった、機敏に将来を予測する能力だ。外部環境の変化が発生した際すぐにパラメータを調整して計画を組み立てなおす速度が求められたといってもよいだろう。
さらに、さまざまな分野でグローバル化が進み、また消費者側のニーズもさらに多様化してきた現在では、ますます定型的な需給予測のロジックを使い続けることは難しく、むしろイベント発生時にどれだけ迅速に判断できるかが重要になってきている。
業績の上ぶれも下ぶれもマイナス要素に~財務情報との連携
株式市場に上場している企業であれば、業績の見通しに変化があった場合にどれだけ速くリスクや影響範囲を確定して公表できるかが、投資家からの評価指標の1つになっている。
この「業績見通しの把握と迅速な公表」は、万一の災害対応や、リスク情報の開示だけではない。当初見込みを大幅に超える「業績の上方修正」という、通常であれば歓迎されるような情報であっても、開示タイミングが遅ければ、「情報の適宜開示ができない企業」として株式市場からマイナスの評価を受けかねない。
こうしたリスクを回避するためにも、ヒト・モノの管理だけでなく、カネと連動して分析する体制が必要とされている。そこでたびたび注目を集めているのが「Sales and Operating Planning(S&OP)」という考え方だ。この考え方自体は古くからあるものだったが、電子・電器メーカーのように製品ライフサイクルの短い業界を中心に、サプライチェーン情報をひも付けて将来の財務リスクを判断する目的で業務プロセスに取り入れる企業が増えている。また、大規模な設備投資が必要な業界でも、このS&OPを投資判断に役立てようとする動きも出てきている。
後編では、SCMと財務を結び付けるS&OPの考え方を紹介しつつ、第三世代SCMとその活用例、導入のヒントを紹介する。
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IT導入完全ガイド(提供:キーマンズネット)
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