IT導入完全ガイド
ERP、国内主要3業種での“磨き”をかけるべきポイント
製造業、卸売・小売業、サービス業という日本の主要業種に焦点を当て、ERPをより有効に活用するためのポイントを紹介する。
日本には業界ごとに特有の商習慣や業務プロセス、準拠しなければならない法制度などがある。そのためERP導入時には汎用的なパッケージをそのまま適用するだけでは対応しきれず、独自のカスタマイズを施す企業も多い。それはコスト増や導入期間の長期化を招くことにもなる。そこで重要となるのは「注力すべきところ」をどこにするかだ。本稿では、製造業、卸売・小売業、サービス業という日本の主要業種に焦点を当て、ERPをより有効に活用するためのポイントについて考えてみたい。
そもそもERP導入は何のため?
ERPは統合基幹業務システムとも訳される通り、財務会計や人事給与、生産管理、購買、調達、物流などの基幹業務システムを横断的に統合し、業務プロセスの効率化や全体最適を実現するものだ。大企業を中心に導入が進み、徐々に中小企業へと裾野が広がっている。だが、導入したものの十分に使いこなせていないという声も聞かれる。
多くのERPベンダーが「カスタマイズ不要」をうたう。確かに汎用パッケージを利用するだけで全ての業務処理を委ねられるならばそれに越したことはないが、そうはうまくはいかないのが実情だ。なぜならば業界や企業ごとに独自の商習慣や業務プロセスというものがあるからだ。業種業態別のテンプレートを適用したとしても最終的にはカスタマイズが発生し、それはコストと導入期間の長期化へとつながる。
費用を掛けてカスタマイズするならば、やはり自社のビジネスの強みとなる部分に集中的に投資して磨きをかけたい。一方で財務会計や給与計算といった汎用的な業務処理はそのままERPパッケージに任せるわけだ。これが現実に即した考え方だろう。
とはいえ、注力すべき部分は業種ごと、企業ごとに違ってくる。しかしながら、全てを網羅するには紙面が足りない。そこで今回は製造業、卸売・小売業、サービス業といった日本の主要業種について考えてみよう。内閣府の「国民経済計算確報」によれば、2013年の名目GDPにおける産業別構成比は製造業が18.5%、卸売・小売業が14.5%、サービス業が19.9%。この3業種で過半数に達するのだ。
製造業、卸売・小売業、サービス業の「磨きをかけるべき」システムは?
【製造業】鍵を握るのは生産管理システム
製造業においては、やはり製造プロセスそのものが競争優位性の源泉であり、それを支えるのが生産管理システムだ。例えば原材料の微妙な配合の差が製品の独自性につながる。あるいは競合他社よりも小ロットで生産できたり、短期間で納品できたりといったことも差別化ポイントになるだろう。
ERP導入時には生産管理システムを核に据え、設計・計画プロセスや販売管理プロセス、資材調達プロセスとの連携を図る必要がある。ほとんどの企業で既に独自の生産管理システムを作り込んでいることだろう。この部分についてはERP導入後も継続的に磨きをかけ続けるべきで、それ以外のシステムはERPパッケージが提供する基本機能を活用してコストダウンを図りたい。
消費税率の変更や軽減税率の導入など法制度の改正は今後も頻繁に行われるだろう。その都度、システム全体に影響が及ぶような大規模改修が必要となるケースも考えられる。このような環境変化に備え、さまざまなERPベンダーが継続的なアップデートを提供するサポートサービスを用意している。
【卸売・小売業】顧客や商品の分析は必須機能
卸売・小売業においては、消費者や売れ筋商品などのデータ分析が必須の取り組みとなっている。これらの業種では、顧客や商品の分析をリアルタイムに行う仕組みが競争優位性を生み出すためのコアシステムだ。
どんな消費者にどんな商品が売れているのか、あるいは売れている商品にはどんな傾向があるのか。現在、その分析にはExcelが多く使われている。ERPパッケージにもABC分析や売上推移表を作成するようなデータ分析機能はあるが、営業部門や経営戦略室などの各現場ではERPパッケージから得たデータをExcelで加工して自分たちが見たい形に仕上げているのが現実だ。
ここはERPベンダーごとに取り組み方に特徴が出るポイントだろう。ユーザーインタフェースをWebブラウザとしてHTML5などでデータをダイナミックかつリアルタイムに表示する形で“脱Excel”を進めるベンダーもある一方で、既存の“Excel中心”を前提としたワークフローを阻害することなくシームレスにERPとExcelをつなぐ機能を投入するベンダーもある。前者については次回で詳しく取り上げるので、本稿では後者について紹介しよう。
これまでデータをExcelに取り込むにはERPからCSV形式でエクスポートするのが一般的だった。だが、最近のERPパッケージの中には、ERP側で作成した集計表の一部をコピー&ペーストでExcelシートに張り付けられたり、集計表を所定のExcelフォーマットに自動変換して報告書を作成できたりする機能がある。
さらにはERP側で作成した売上明細表から、部門別、日付別という項目を指定して、両者を掛け合わせた集計表を自動作成したり、ボタン1つでグラフを作成したりすることもできる。こうした機能は、今日の卸売・小売業の現状を考えると必要不可欠な機能だろう。
また、店舗で働く人員のスキルや店舗面積など、販売データには含まれないデータを使って分析したいというニーズもある。このようなデータを扱うための集計専用データベースをERPパッケージから独立した形で提供するベンダーもある。外部DBには、人事系データや店舗面積などのデータに加えて会計システムのデータも取り込める。更に外部のBIツールやレポーティグツールとも連携しながらデータを活用することを可能にする。
【サービス業】人材こそが企業競争力の源泉
サービス業では、何と言っても人材こそが企業競争力の源泉となる。例えば、飲食店なら店舗スタッフ、システム開発会社ならシステムエンジニアのスキルが自社の売上や利益を大きく左右するだろう。
この人材の管理に関わってくるERPパッケージの機能が人事管理や就業管理、給与管理だ。いわゆる人件費を管理するためのものだが、給与をきちんと支払うことは当たり前のことで、これらをきちんと行っているからといって自社の競合優位性が保たれるわけではない。重要となるのは人材の“能力”をきちんと把握し、適切な場所に配置することで自社の強みを伸ばしていくことだ。
小規模事業者では社長の一言や好き嫌いで人員の配置が決定されるケースが全くないわけではないが、これは適切な人事の在り方とはいえない。ここまで極端なのはレアケースだが、一般的には各従業員の適性とその分野における習熟度、すなわちスキルを十分に考慮した上で、戦略的な人員配置を行う必要がある。いわゆるタレントマネジメントと呼ばれる取り組みだが、一般的なERPパッケージの標準機能として提供されているわけではない。専用システムと連携させる必要があるだろう。
例えば、ERPパッケージの人事管理モジュールから各従業員データを、経費管理モジュールから人件費データを、就業管理モジュールから勤怠データをタレントマネジメントシステムに取り込む。このようにして総合的に適性とスキルを分析し、適切な人材配置を行い、その結果を再び人事管理モジュールにフィードバックすることで、人材に磨きをかけていけるわけだ。
従来の少子高齢化に加えて、近年ではベテラン社員の介護離職も経営者の頭を悩ませる要因となりつつある。優秀な人材の確保がより困難になっていくことが容易に予想される。今いる従業員の特性を十分に把握した上で配置転換を行ったり、人材育成に注力したりする必要性が高まっているのだ。
■コラム:配置転換は決して“左遷”ではない
参考までに営業部門を例にしてタレントマネジメント機能を紹介しよう。まず、縦軸にスキル、横軸に適性を取って、このグラフ上に現メンバーをマッピングする。右上にプロットされたメンバーは営業担当者としての適性もありスキルも高いモデル社員に相当する。右下の象限にいるメンバーはスキルは低いが適性はある。適切な教育を施すことでモデル社員への成長が期待できる。
一方、左下にプロットされたメンバーは適性もスキルも低い社員ということになる。よってこの象限のメンバーは配置転換を行い、違う環境で仕事に取り組ませることで新たなタレントを発揮する可能性がある。このように各従業員の特性を見える化し、個々人に最適なパーソナルプランを作っていくことが肝要だ。
軸の情報設定
縦軸に「営業スキル」
横軸に「営業適正」
分析結果
【育成対象者】
右下の社員→適正は高いがスキルが足りていない社員
【配置転換候補者】
左下の社員→適正もスキルも低い社員
【育成対象者】
右上の社員→適正もスキルも高い優秀な社員
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IT導入完全ガイド(提供:キーマンズネット)
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