IT導入完全ガイド
ちょっと待って! ウェアラブルデバイス導入前のチェックシート
ウェアラブルデバイスの実運用については、試行錯誤が続いている部分も多い。いち早くウェアラブル時代へ対応するためにも、導入時のトラブルを減らし、スムーズに業務に取り入れる必要がある。ウェアラブルデバイス導入前のチェックポイントを整理してみよう。
ウェアラブルデバイスの導入がいよいよ始まるという機運の中、前回触れた通り、実際の運用については試行錯誤が続いている部分も多い。いち早くウェアラブル時代へ対応するためにも、導入時のトラブルを減らし、スムーズに業務へと取り入れるにはどんなポイントをチェックしウェアラブルデバイスを選べばいいのだろうか? チェックポイントとあわせて整理してみよう。
ウェアラブルデバイス、導入前のチェックポイント
ウェアラブルデバイスの4大機能は自社の業務に影響を与えるだろうか?
前回、前々回とウェアラブルデバイスを紹介し、最新の製品、システム、活用事例を取り上げてきた。それらを総括しつつ、今回は現時点でのウェアラブルデバイス導入時のチェックポイントを挙げていきたい。
まずおさらいしたいのが、業務用ウェアラブルデバイスとそのシステムに現時点で搭載されている主な機能だ。ほぼ共通しているのは以下の4項目。これらの機能に利点を感じないのであれば、ウェアラブルデバイスの導入は時期尚早といえる。
ウェアラブルデバイス・システムの機能
✓ 双方向通信
✓ ハンズフリー操作
✓ マニュアル(AR)表示
✓ 画像・映像データの送受信
既存のスマートデバイスでも、ハンズフリー操作以外は対応できる機能でもある。ウェアラブルデバイスを加える、あるいはシステムを更新するメリットをよく検討する必要があるだろう。
業務アプリケーションや基幹システムと連携して運用できるか?
業務内容がウェアラブルデバイスに適しているのであれば、次に検討したいのは、既に使われている業務アプリケーションや基幹システムとの連携だ。例えばこれまでスマートフォンやタブレットで現場から設備や作業の情報を確認できていたのであれば、ウェアラブルデバイスにも同じ機能を求めるのは当然だ。
特に連携がスムーズなケースは、前回の富士通「ヘッドマウントディスプレイ」のように、スマートフォンの情報をMiracastでHMDに送るという仕組みだろう。これは既存のシステムを使っているスマートフォンの情報をHMDに表示するだけなので連携が容易というよりも、従来のシステムをそのまま使えるのである。
ウェアラブルデバイスをシステムごと導入する場合、これまでの機能が使えるのか確認する必要がある。従来の業務アプリケーションで利用していたタスクリストは、ウェアラブルデバイスのシステムに取り込めるのか? それはどう活用できるのか確認する必要がある。
ウェアラブルデバイスの場合、デバイス単体で導入するケースもある。システムごとパッケージで導入するよりも費用を安く抑えやすいが、基幹システムと連携させるのであれば、導入した企業はウェアラブルデバイス用のアプリケーションの開発など、コストが発生する。アプリケーションの開発環境が用意されているのか、自社開発か外注するのか、その費用、開発時間、性能が見合うのか検討が必要だ。
他システムとの連携
✓ 既存の業務アプリケーション、基幹システムとの連携は必要か?
✓ 導入するウェアラブルデバイスとの連携の難易度は?
✓ 従来のシステムの機能はどこまで使えるか?
✓ アプリケーションの開発環境は?
導入前にウェアラブルデバイスの管理体制を構築
ウェアラブルデバイスを実際に運用する前に、その管理体制も構築しておきたい。導入時には管理部署を選定し、あらかじめ運用ルールを作成することが求められる。
ウェアラブルデバイスは現場に持ち込まれる備品のため、運用されている場所の把握がまず必要だ。さらにデバイス自体が高価で盗難のリスクがある上、スマートデバイスと同じく情報の塊。点検中の設備や工事状況といった情報漏えいは避けなければならない。盗難に遭わないよう現場では保管場所を設置し、さらに万が一盗難にあったとしてもデバイス側にパスワードを設定し、情報流出を防ぐ。また利用する作業員を決め、把握しておくといったことが重要だ。
当然ながらウェアラブルデバイスを装着する作業員だけでなく、ウェアラブルデバイスと通信でつながる管理者側の管理も必要だ。特に現状のウェアラブルデバイスが、点検・保守といった機密性の高い業務で利用される以上、撮影された映像・画像の管理には要注意だ。これらの画像データには位置情報が付与されている可能性もある。アクセス権限やデータの保存先は明確にしておきたい。
利用者が異動や退職した場合は、パスワードの変更やアカウントの停止といった処理を行い、さらにウェアラブルデバイスの導入が進めば、いずれ新デバイスへの切り替えも行われるはず。その際の旧デバイス内の情報の処理、デバイスの処分についても検討しておきたい。
管理体制の構築
✓ 管理部署の選定
✓ 運用ルールの作成
✓ 保管場所の設定
✓ パスワードの設定
✓ 利用者の選定
ウェアラブルデバイスはどれを選ぶべきか?
導入するウェアラブルデバイスを検討する場合、チェックすべき点はどこだろうか。第1回で連続使用時間の問題に触れたが、現場での運用を考えると、それ以外にも多くのチェックポイントがある。
まず情報を表示する画面だ。HMDやヘッドセットはディスプレイに情報を表示し、眼鏡型の場合は目の前に投影する。どのデバイスでも目のすぐ前に表示されることから単純なディスプレイサイズはあてにならないため、仮想画面サイズを参考にするとよいだろう。また、ディスプレイ部分もシースルー型と非シースルー型の2パターンがある。周囲が明るい環境下では、非シースルー型を利用した方が画面の視認性が向上するなど環境によって向き不向きがあるので、注意が必要だ。一方、ヘッドセットのエプソン「BT-2000」は両眼にディスプレイを取り付ける仕組み。当然視界を確保するため、ディスプレイはシースルーとなっている。このようなデバイスはARのようなバーチャルの画面を重ねて表示しながら作業できるメリットがある。
ただしARの活用は現場にARマーカーの設置が必要で、例えば点検箇所が膨大になるとそのコンテンツ作成だけでも時間がかかる。またシースルー型は屋外の太陽光といった、強い光の下では画面の表示が見えなくなる可能性がある。そのためデバイスを選ぶ際は、画面の輝度(明るさ)も重要なのだ。
ディスプレイの選定
✓ 最適な画面サイズは?
✓ 片眼or両眼の選択
✓ シースルー or 非シースルーの選択
✓ AR表示は必要?
✓ 光量の強い現場は画面輝度を確認
利用場所が屋内か屋外かでも、ウェアラブルデバイスの選び方は変わる。組み立ての場合はほぼ一箇所から動かずに作業をするため、有線のデバイスでも問題はないが、業務中に装着しながら移動が必要な場合では安全性から選択できるデバイスが限られる。
無線式のデバイスがベターなのはもちろん、無線式であっても視界の広さによっては装着しながらの歩行は推奨されていない。物流のピッキング作業での使用は移動が多いであろうし、巡回しながら遠隔サポートを受ける警備のような場合も、装着しながら歩行することになるので確認が必要だ。
さらに忘れてはならないのが通信方式だ。Wi-Fiを使う場合アクセスポイントを事前に設置する必要があり、屋外での業務では難しい面がある。3GやLTEといった携帯電話回線を使う通信方式にも対応していれば、屋外での通信がしやすいだろう。ただし地下で業務を行う場合は、Wi-Fi、3G・LTEに限らず通信が難しく、アクセスポイント・基地局の増設が必要になる。また携帯電話回線を使う場合、映像を送るには1Mbps以上の通信速度が安定して出ることが求められる。
また通信に関連してセキュリティも考慮したい。業務用デバイスでは当然それ自体にセキュリティ対策が施されているとはいえ、一般コンシューマーへの販売も前提としているデバイスでは簡易的なものもある。システムごと導入する場合は暗号化などの情報漏えい対策、デバイスのみを導入する場合は通信時のセキュリティ設定について確認が必要だ。
通信環境の確認
✓ 有線or無線の選択
✓ 歩行中も利用は可能?
✓ Wi-Fi、3G・LTEへの対応
✓ エリア、アクセスポイントの位置確認
✓ デバイス、通信時、システムのセキュリティは?
屋外での作業が中心ならば天候が悪化することも想定し、防水性能は必須といえるし、砂塵(じん)の多い建設現場では防塵性能もほしい。また万が一の落下や乱暴に周囲と接触することまで想定すれば耐衝撃性能も求められる。雨程度であれば業務用のデバイスは防水していることが多い。
富士通の「ヘッドマウントディスプレイ」に関しては、米国国防総省の調達基準であるMIL規格に準拠した耐衝撃性能を持ち、1.5m程度から落下しても動作、さらに耐薬品性能も備え最も過酷な環境を想定しているといえるだろう。一方でここまで堅牢な仕様が本当に必要なのか、価格や導入する現場も合わせて考える必要がある。
スペック表を見れば分かる通り、1台で数十万円というのが当たり前だ。また1台だけの導入で業務が変わるわけでもなく、数十、数百台、あるいはソリューションとしてシステムごとパッケージで導入することになるため、単純に価格を比較するのは難しい。デバイスの保守、交換は可能なのか? 代替機は常にストックされているのかも導入前に確認したいポイントだ。
耐久性の確認
✓ 防水・防塵性能は必要か?
✓ 耐衝撃性能は必要か?
✓ デバイスの保守・交換は可能?
✓ 代替機は用意されるのか?
さらに現場に導入してからの従業員への教育も重要だ。人材不足やベテランからの技能継承という視点で考えると、ウェアラブルデバイスの操作が容易であることはもちろん、管理者側がPCなどで扱うソフトも分かりやすいUIでなければならない。現場の作業員も管理者もITスキルが高いとは限らないからだ。
特にハンズフリー操作では音声コマンドや頭の傾きといった特殊な操作を要する。この操作をすぐ習得できるのか、むしろコントローラーなどの操作デバイスを用いた方がいいのか、現場の従業員の声をしっかり反映したい(それはベンダーに伝えることで改善できる場合もある)。場合によっては、多くの機能よりもシンプルなデバイス・システムを選択した方が最初の導入にはよいだろう。
操作性の確認
✓ 作業員、管理者が容易に操作できるか?
✓ ハンズフリー操作の内容は簡単か?
✓ コントローラーの有無
さらに各企業は自社の現場に合わせた細かいスペックの確認が必要だろうが、業務用デバイスの常として、詳細な内容が公開されていないことが大半だ。これがまた導入を考える企業にとって悩ましいが、ただウェアラブルデバイスを先行して導入している企業を見ると、まずは「試用から」というケースが大半だ。新しいデバイスということもあり、現場で開発者の想定していない使い方、問題点が起きる可能性もある。まず試用期間を設け、改善点を洗い出し、現場に合わせたカスタマイズを要望した上で正式な導入を考えてみてはいかがだろうか。
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IT導入完全ガイド(提供:キーマンズネット)
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