IT導入完全ガイド
水や電力の需要予測、災害・犯罪対策など……“社会インフラ”IoTのユースケース
今後、日本がIoT分野で世界をリードできる可能性が高いのが「社会インフラ」の領域だ。今回は、社会インフラ領域に関連するIoTのユースケースを見てみよう。
IoTで日本が世界をリードできる可能性が高いのが社会インフラ領域だ。デバイスをはじめとする要素技術に優位性があるばかりでなく、防災対策や省エネルギー対策、交通システムなど、政策として世界でも先進的な取り組みが進んでいる分野がいくつもある。これらの効果が具体的に出てくれば、やがては日本のIoTベースのインフラが世界に輸出できる時代になるかもしれない。まずは社会インフラ領域でのIoTのユースケースを見てみよう。
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防災・気象情報や交通管制では世界トップレベルにある日本
社会インフラ領域で日本がアドバンテージを持っているのは防災・気象情報のインフラ、ITS(Intelligent Transport Systems/高度道路交通システム)に代表される道路交通管制システムや鉄道システム、BEMS/HEMSの進展に見られるエネルギー最適利用技術といったところ。他には、GPS(全地球測位システム)とGIS(地理情報システム)を組み合わせて活用する「G空間」技術や、道路・橋・トンネルなどの保守情報・トラブルの予兆検知技術などにも一定の強みはある。上下水道の配管管理や遠隔制御の一部技術も重要だ。
IoTが業界や地域を超えて発展すると、こうした優位性ある技術が結び付き、情報連携により単独では無理な利便性向上や的確な予測に基づくトラブル予防対策や、避難などの防災対策、機器の自動制御による危険回避など、さまざまな利点が生まれる。社会インフラが高いレベルで合理化されれば、その技術はゆくゆく世界へと輸出できる可能性がある。以下では、そうした社会インフラに関連するIoTユースケースについて具体的イメージをいくつか紹介しよう。
社会インフラの高度化に貢献するIoTソリューション
未来を予測するソリューション
日本が世界に誇る気象情報の収集・管理・分析技術や災害予測・防災対策技術などを利用して、いくつものユースケースが考えられている。その中でも蓄積された過去のデータと現在のデータを突き合わせて分析して未来を予測する、高度なビッグデータ解析を利用したソリューションは、防災やライフライン確保などに重要な働きを期待されており、安全・安心な社会を低コストに実現する鍵と見なされている。
■水需要予測
気象情報と過去の実績情報の十分な蓄積をベースに、水の需要予測を高精度に行う実証実験が行われており、ソリューションとして提供される予定になっている。この実験では、浄水場、送水場、配水池、配水網のそれぞれの水圧や流量、水質などの情報をセンターに集め、その状況と気象情報・実績情報を照合して分析する異種混合学習技術と呼ばれるベンダー独自のアナリティクス技術が応用されているとのことだ。正確な需要予測ができることにより、無駄な造水を行わずにすみ、電力コストを適正化しつつ、水資源の有効活用を可能にすることが見込める(図1)。
■土砂災害検知・予測
河川や傾斜地のセンサーからのデータを分析し、災害の起こりそうな場所や時期を予測する防災ソリューションも提供されている。図2は、土中の水分量をセンサーで計測し、情報をセンターに吸い上げて分析して斜面の崩落などの土砂災害の発生を検知・予測するシステム(実証実験)の例だ。危険度が水分量センサーの値だけで算出できる分析アルゴリズムが肝心なところだ。このアナリティクス技術があるために、従来土砂崩落の予測に必要とされたセンサー数を約3分の1に低減することができ、より広い範囲の斜面のモニタリングを行うことができるという。実験では災害の危険性ありと判定した10~40分後に斜面崩壊が発生したといい、危険の通報や避難などの対策をとる一定の余裕が期待できるようだ。
■電力需要予測
スマートグリッド実現に向けて電力需要の予測も大事な要素。スマートメーターを用いたBEMSやHEMSの情報と、天候やカレンダーイベント、さらに施設ごとの過去の電力消費量に基づく電力需要傾向などのデータを突き合わせて分析することにより、今後の電力需要量を30分単位で高精度に予測する電力需要予測システムも実用化されている。電力事業者の発電計画や電力調達計画などに役立てることが可能だ(図3)。
・電力需要量に関係しそうな影響因子(施設ごとの過去電力消費量、天候、カレンダーイベントなど)の種類が多いほど、異種混合学習技術が効果を発揮
・膨大な計算量が必要となる学習部分をNECの大規模計算サーバで実施することで、初期導入コストを低減
・過去の電力消費の実績データを基に、NECの異種混合学習エンジンが電力需要予測式を生成、電力需要予測システムに定期的にアップロード
・電力需要予測システムに逐次過去の実績データを入力して電力需要予測を行い、発電計画や電力調達計画の立案などへの効率的な運営を支援
■災害・犯罪の早期検出・対策
現場の状況を把握する手段は必ずしも数値化された情報ばかりではない。例えば河川の氾濫や土石流・火砕流などの発生予兆を的確にモニターするには、動画や静止画を利用して人間が目で見て判断するプロセスも大事。そこで監視カメラによる映像も統合した監視ソリューションも考えられている。河川の場合なら、水位計の情報とカメラによる動画データをセンターに送り、気温・湿度・風力・気圧などの気象情報などと突き合わせて、予兆を自動的に検知し、必要なら管理者が映像を確認して、避難勧告などに結び付けることができる(図4)。同様の仕組みで、犯罪発生を迅速に検知して被害を最小限に抑えることも可能だろう。
■公共駐車スペースの需要予測を基にした安定供給
都市圏では駐車場スペースの有効活用が欠かせない。しかし道路状況の少しの違いでほとんと隣接しているような駐車場でも混み方に大きな違いが生まれるときもある。空車状況をリアルタイムで通知してくれるサービスは既にあるが、もっときめ細かく、需要予測に応じた料金の変更を行い、空車が多いときには割引料金をカーナビやスマートフォンなどに通知し、高稼働率のときには早期出庫のサービス料金を通知して出庫を促進、入庫には割増料金を設定するといった仕組みにより、収益を上げながら駐車スペースを安定供給するビジネスモデルも提案されている。
駐車場の入出庫の検出と車両画像の取得はセンサーとカメラで行える。入出庫データとカメラ画像から自動認識したナンバー情報をセンターに送ると、センターではデータを分析して最適料金設定を行って登録ユーザーに通知する。駐車場の稼働率や過去データ、近隣のイベント情報、周辺道路の渋滞状況など、各種の過去データやリアルタイムデータを加えて分析すると、当日の駐車場稼働率がかなり正確に予測できる。それに応じて適正な割引料金や割増料金を自動設定することができるわけだ。
一人一人のヘルスケアや各種ケアサービスへの貢献
■高齢者などのヘルスケアや見守り
高齢者や障害者、病気の人などを対象にしたケアサービスも重要な社会インフラの一部だ。これには日常生活に組み込まれた各種のヘルスケア機器に備わるセンサーが収集する情報を、無線でつながるスマートデバイスなどがセンターに送信、異常がないかどうかを確認可能にし、必要があれば家族や介護サービス事業者などが対応できるようにアラートや通知を行う仕組みなどが考えられている。もちろん同じ仕組みで日常生活の状況をリアルタイムにモニターして「見守り」に活用することもできる。
収集する情報は、体温、心拍、血圧、体重、体脂肪率などの一般的な計測器からのデータだけでなく、脳波、心電、筋電、あるいは歩行や運動状況、移動状況、寝たきりの場合のベッド上での寝返りの状況など、各種のセンサーが利用できる。
■迷子や子どもの危険防止のための位置情報管理
アミューズメントパークやショッピングモールなどで子どもの迷子や危険場所への立ち入りを防止することもIoTのソリューションの1つだ。これには子どもが身に着けることができる計測デバイス(加速度センシングや位置計測を可能にするデバイス)を使い、子どもの動きや位置情報を、施設のマップなどの情報と突き合わせて把握し、現在地の特定や移動状況をモニターすることが考えられている。施設の従業員や保護者が手元のスマートデバイスなどで地図上の子どもの位置を確認し、必要なときには子どものいるところまで行って保護や案内などの対応を行うことができる。
以上、社会インフラに関連するIoTユースケースをいくつか見てきたが、全てセンサーやカメラなどのデバイスからの情報をセンター(IoTプラットフォーム)に集約し、分析や他の情報とのマッチングを行って、現場で必要な情報にして提供する仕組みになっている。自動化機器と組み合わせて、電力調整や水配管の水流調整などのような自動制御ももちろん可能だ。センター機能はどこにあってもよいのだが、多くの場合はクラウド上にあることを想定している。その方が広範に散らばるデバイスの情報を集めるのに都合がよいからだ。そして、集められたデータはビッグデータ分析技術を利用して分析される。そして分析結果をもとに、社会インフラの適切・効果的な利用を図るのがIoTの真骨頂だ。
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