IT導入完全ガイド
業務用ウェアラブルデバイス最前線! これでまる分かり、主要6製品スペック一覧
本当にウェアラブルデバイスは必要なのか? 自分たちのビジネスに役立つのか? 最新の業務用ウェアラブルデバイスを比較することでその可能性を探る。
腕時計、眼鏡、ヘッドマウントディスプレイ、さまざまな形のウェアラブルデバイスが登場している。これらを業務改善につなげようと考えている企業は多いだろう。実際に導入が始まっている企業もある一方で、新しいデバイスということもあり、今のウェアラブルデバイスはどのような性能で、どんな業務に活用できるのか、まだ情報収集段階という企業も多いことだろう。本当にウェアラブルデバイスは必要なのか、メリットはあるのか、最新の業務用ウェアラブルデバイスを比較することでその可能性の大きさをご紹介しよう。
企業が活用するウェアラブルデバイスとは
企業に求められるウェアラブルデバイスは「Apple Watch」……ではなかった!?
昨今話題となっている「ウェアラブルデバイス」。この端末が世の中を変えようとしている。「Apple Watch」をはじめとしたスマートウォッチの発売、眼鏡型の「Google Glass」は記憶に新しいことだろう。
この新しいデバイスを自社にも取り入れ、業務改善に活用したい――。そう考えている企業は多いはずだ。実際にウェアラブルデバイスのベンダーからもさまざまな企業から引き合いがあるとの声が聞かれる。しかし企業で期待されているウェアラブルデバイスは、一般的に販売されているウェアラブルデバイスとは大きく異なる。
そもそも現在のウェアラブルデバイスは大きく分けて2つのグループがある。1つは主にヘルスケア、健康増進やスポーツのサポートといった、個人的な用途のデバイスだ。この分野ではアップルの「Apple Watch」が有名だが、Androidを搭載したスマートウォッチもソニーやサムスンといったスマートフォンメーカーから投入されている。最近では時計メーカーでもあるカシオ計算機も参入し、選択肢が大幅に増えている。またFitbitのような1日の活動を記録するリストバンド型端末も今では珍しくなくなった。
これらのデバイスは日々の運動量や、歩数、消費カロリー、脈拍数といった行動、身体の状態を記録し、連携しているスマートフォンやタブレット、PCで管理、さらにアドバイスを受ける、といったことが可能だ。また、ヘルスケア以外の機能がある場合もあり、例えばスマホのアプリの簡易版がスマートウォッチの小さな画面に表示され、スケジュールの確認や着信に気付くといったことも可能になる。
これらの機能が業務に役立つということもあるだろう。ヘルスケア機能だけだとしても、企業が導入して全社員に配る、といったことをすれば、健康増進や意識改革、モチベーションの変化といった有意義な結果が得られるに違いない。だが、多くの日本企業が求めているウェアラブルデバイスは、現在直面している深刻な課題「人材不足」へ対処するためのデバイスだ。少子高齢化が進み、ベテラン従業員の大量退職が急速に進んでいる一方で、新たな人材が加わることは少なく、若手への技術の継承が思うように進んでいなかったり、時間がかかっていたりする企業は多い。
さらに人手不足によって、現場の作業員やベテランの経験者に過度な負荷を与え、ミスの多発といった悪循環につながる不安もある。そこでウェアラブルデバイスを装着することで、これらの問題を解決しようというのである。
多様なウェアラブルデバイスをスペック一覧表でチェック!
「人材不足」を解決するウェアラブルデバイス
「人材不足」解決に役立てるのが、上述した2つ目のグループ、「Google Glass」のような眼鏡型のスマートグラスやヘッドセット、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)だ。つまり、ディスプレイを使い目の前に情報を表示する、あるいは目の前の情報をデバイス外に送るといった「情報の送受信」のためのデバイスだ。
代表的な機能は、カメラを使った双方向の通信だ。装着者が見ているものを、リアルタイムの映像で管理者が確認できる。管理者は遠隔地から指示を出すことができ、装着している作業員はベテランと同行せずに1人で作業ができるようになる。これにより人件費の削減につながるのだ。
さらに通信でマニュアルを送る、あるいは作業員が写真を撮影し、管理者に送るといったことも可能だ。もちろん通信をしなくても記録を単に撮るというだけでも有用だろう。昨今では建築現場での施工不良やデータ改ざん、不十分な品質チェックが発覚したケースもあるため、今後作業員の記録(証跡)を残すことが重要になる可能性も大いにある。また、使用しているデバイスやシステムにもよるが、現場の作業だけでなくレポート、報告業務も同時に自動的に行うことができ、作業員の負担軽減にもつながる。
これらのウェアラブルデバイスには音声コマンドや、搭載センサーを活用したジェスチャー(首の動きなど)操作に対応しているデバイスもあり、ハンズフリー操作を実現している。スマートフォンやタブレットではどうしても手を使った操作が発生し作業が滞るものだが、ウェアラブルデバイスであれば作業の中断も減るだろう。
つまり現在のウェアラブルデバイスは、「現場(作業員)」と「管理者」で情報を送受信するための「遠隔サポート」デバイスと言ってよい。実際にニーズが高い業務は、点検・保守、建設、組み立て、物流といった“タフ”で作業員と管理者の間に物理的な距離のある“現場”が中心となる。
屋外、あるいは屋内だとしても、管理棟から大きく離れたプラントの点検、あるいは通話が不可能なほど騒音に包まれる工事現場、それも海外ということだって考えられる。現在のウェアラブルデバイスはそのような過酷な現場を意識して開発され、実際に現場で試用した上で導入が進められている。
無論、他にもさまざまな業態でウェアラブルデバイスの試験的な運用は行われているが、まだまだ研究の余地があり、全ての業態のニーズを満たせるとはいえない。以下に現在発売、開発中の企業向けウェアラブルデバイスを表にしているが、デザイン1つをとっても、まだまだ利用できる業態は限られている。
ウェアラブルデバイス・スペック一覧
では、現在主に業務用として提供が開始されている主要なウェアラブルデバイス6製品のスペックを見てみよう。
ウェアラブルデバイスの課題と外せない仕様
ウェアラブルデバイスの当面の課題は、バッテリーにある。ある程度連続使用時間を長くするためには、バッテリーそのものが大きくなり、デバイス全体も大きくならざるを得ない。そのため給電や予備バッテリーの用意が必須なのだ。
このバッテリー1つをとっても、各社搭載方法が大きく異なる。日立製作所 インフラシステム社のHMDの場合、内蔵バッテリーは1340mAhと大きくはないが、microUSBを使い外部バッテリーから手軽に給電できるのが売りだ。内蔵バッテリーだけならば通常2時間の連続使用となるが、給電を行うことで連続8時間以上の使用も可能となる。
一方、大容量の3300mAhバッテリーを搭載した富士通の「ヘッドマウントディスプレイ」は、そのサイズを見ても他社のデバイスと比べ、大きく重いことが分かる。しかしながら、バッテリーを含めて人の頭部に搭載でき、どんな使い方でも連続使用4時間という長時間使用を特長としている。途中で給電することなく連続4時間作業に集中できるわけだ。もちろんバッテリー交換も可能だ。
ヘッドセット型のエプソン「MOVERIO」シリーズは、パーソナルシアターとして有名な眼鏡型のBT-200が販売されているが、表に掲載しているのはその業務用である「BT-2000」。このデバイスの特長はヘッドセット部だけでなく、コントローラも有線ケーブルでつながっており、このコントローラにバッテリーを2個搭載している点だ。コントローラ内のバッテリーは着脱可能で、「ホットスワップ」と呼ばれるデバイスの再起動を必要としない電池交換に対応している。4個同時に充電可能なバッテリーチャージャーもオプションとして販売されており、電池の交換で連続使用時間を伸ばすことが可能だ。
このように少しでも大きく、多くバッテリーを搭載し、前述のようなタフな現場での使用を想定すると、眼鏡型よりもHMDやヘッドセット型の大型のデバイスが選択肢の中心となる。
これらのデバイスは外観を見ると相当重く見えるが、冷静になって数字を見ると重くても300g程度で、見かけに反して軽いことが分かる。デバイスの重心も考えられており、実際に装着してみても軽く感じ、装着時に頭がフラフラすることもない。
ただしエプソンの「MOVERIO BT-2000」はコントローラを、ブラザー工業の「AiRScouter WD-200A」ならコントロールボックスと呼ばれるデバイスを、ヘッドセット/ヘッドマウントとは別にケーブルで接続する必要がある。一箇所で長時間組立作業をするような場合は邪魔にならないだろうが、移動しながら点検を行うような場合は、頭部以外にもデバイスを装着するのは行動に制限が出てくるだろう。
また屋内での軽作業が中心であればヘルメットを使わない現場もあるだろうし、本格的にタフな現場となるとヘルメットの着用が普通だ。導入を検討しているウェアラブルデバイスがヘルメットやその他への装着を前提としているかどうか、また実際の現場のヘルメットなどにしっかり装着できるかも、しっかり確認したいポイントだ。
そういう意味では眼鏡型のほうが誰もが装着しやすい、というメリットがある。しかしエンタメ要素が強く、またどうしてもバッテリーの問題でHMDのような大きいデバイスに劣る。耐久性を考えても、タフな現場は想定されていない。
HMDほどの大型のデバイスを求めていない場合は、現状ヘッドセット型を選ぶことになる。HMDのように頭をしっかりとホールドするわけではないので、比較的デザインに自由度がある。例えば「Telepathy Jumper」は「首掛けウェアラブル」とうたっており、特殊なアームを使い首から耳に掛けるように装着する。「InfoLinker」であれば眼鏡に装着するため、眼鏡型・スマートグラスに近い使い方が可能だ。
また一方で、眼鏡メーカーJINSが開発した「JINS MEME」のようなウェアラブルデバイスもあるが、スマートウォッチのようなヘルスケアデバイスに近く、業務で活用するにはまだ工夫が必要だ。しかし眼鏡型デバイスはそのデザイン性の高さのおかげで、小売・サービス業といった接客業やオフィスとの親和性がある。将来的には導入する企業が増えるかもしれない。
このように業務用ウェアラブルデバイスは、想定される利用シーンや遠隔サポートを中心とした使い方こそほぼ共通だが、1台1台の操作性は大きく異なる。数多くのデバイスが登場しているため、慎重な検討が求められるが、自社のニーズに高度に合致するデバイスを見つけられれば業務へのプラスの効果も大きいはずだ。
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