戦略コンサルの論考を変革のヒントに(2)
ハード屋がソフトの世界で成功するための5つのヒント(1/3 ページ)
戦略コンサルティング企業が発信する論考や調査レポートから、モノづくり業界の皆さんに示唆をもたらす記事を紹介する連載の第2回。今回は、ボストン コンサルティングが提言する「ハードウェアメーカーがソフトウェアの世界で成功する方法」をピックアップ。その“5つのキーポイント”を読み解きます。
根源的な問い掛けに直面するハードウェアメーカー
われわれはハードウェアメーカーではない。ソリューションプロバイダーである!
製造業界でこのようなメッセージを社内外に打ち出す企業が現れたのは、決して最近のことではありません。筆者の記憶にある限り、20年ほども前からそうした企業はありました。筆者が知らないだけで、もっと以前から存在していた可能性もあります。
「ソリューション」はもともと物理的な製品を持たないITシステムやソフトウェアの業界で好んで使われていた用語だと理解していますが、やがて製造業界でも
われわれの価値は、突き詰めると、ハードウェアとしての製品それ自体を提供することではない。それを介してお客さまの課題を解決すること、すなわちソリューションである
という考え方が生まれたのでしょう。
しかし、そのように唱えつつも、これまで長らく、ハードウェアメーカーが顧客に提供するのは物理的な製品でした。例えば半導体チップメーカーの「○○ソリューション」は、「○○というアプリケーションに必要な機能を実現するチップ群とミドルウェアをまとめて提供する」ものです。ソリューションの構成要素にソフトウェアも含まれてはいますが、それ自体が売り物というわけではありませんでした。あくまでも売り物はチップであり、それを買ってもらうために必要な周辺要素としてソフトウェアを用意したというのが実情に近い表現でしょう。
しかしここにきて、ハードウェアメーカーを取り巻くビジネス環境に大きな変化が訪れています。
その背景にあるのは、今やビジネス報道で目にしない日がないキーワード、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」です。さまざまなモノに、ネットワーク接続機能とセンサー、コンピュータ、ソフトウェアが搭載されていくことで、新たなビジネスが次々に生まれ、中には旧来の伝統的なビジネスを侵食/代替するほどの破壊的なインパクトをもたらすものもあります。
戦略コンサルティングの有力企業である米ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、同社の論考サイトbcg.perspectivesに2016年5月に掲載した「How Hardware Makers Can Win in the Software World(ハードウェアメーカーがソフトウェアの世界で成功する方法)」の中で次のように指摘しています。すなわち、ハードウェアメーカーは今、製造する機器の種別によらず、根源的な問いを自らに投げ掛けており、それは「自社をハードウェアと組み込みシステムの企業ではなく、ソフトウェアのソリューションやサービスのプロバイダーだと再定義すべき時か?」だと言います。
ソフトウェアやデータをハードウェアの付属物ではなく、単体製品として売る
同社は例として自動車を挙げて説明を続けます。高性能コンピュータとインターネット接続機能を備えた現代の自動車は、車両の位置や性能、乗員の状況などについて毎時数十Gバイトものデータを処理できます。自動車メーカーは、そうしたデータを将来のモデルの設計やメンテナンスサービスにもちろん生かせますが、可能性はそれにとどまりません。“新たな商材”として外部に販売できる可能性があります。
例えば、都市設計者が交通の流れをより効率的に管理できるような、詳細なデジタルマップを提供するサービス。あるいは、保険会社が顧客一人一人のリスク傾向に合わせてカスタマイズした保険条件で商品を設計できるようにするサービスなども考えられるでしょう。
自動車にとどまらず、“幅広い領域のハードウェアメーカーに同様の機会が広がっている”とこの論考は指摘しています。従来型のハードウェアメーカーの中でも特に先行しているのは、医療機器や、ビル/工場向け管理機器、農耕機器などを手掛ける企業だとしており、既にソフトウェアやデータ分析に基づくソリューションビジネスに投資していると述べています。
先行企業の成否はまだら模様
ただし、そうした先駆者全てが成功を手にしているわけではありません。ソフトウェアやデータのソリューションで利潤を生み出している企業もあれば、収益目標を達成できていない企業もある、“まだら模様”が現状だとしています。
ソフトウェアのソリューションやサービスへの転換を成功させた企業に共通する特性としてボストン コンサルティングが見いだしたのは、「自社のソリューションが、特定の属性の顧客にどのように価値をもたらすか」をきちんと認識していることです。
そうした特定顧客層の経験や課題、ニーズを理解した上で、
- ソフトウェアの世界に向けた新しいビジネスモデルを策定し、そのモデルに合致するようにソフトウェアの提供方法を、ハードウェア組み込み型などの従来の方法から“新たな形”に切り替える
- ソフトウェアソリューションに適した新たな市場参入戦略を描くとともに、それを実行するために新しい営業/サポート部隊も編制する
- ソフトウェアビジネスにおいて成功の進捗を把握し、成長を可能にするための指標を導入する
――これらが、成功企業の特徴だといいます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
戦略コンサルの論考を変革のヒントに
大企業の上級役職者や経営企画室メンバーでもなければ、仕事で関わる機会がほとんどない戦略コンサルティング企業。でも、モノづくり業界の皆さんにも役立つ論考や調査レポートを、実はたくさん発信しているのです。そうした情報を筆者がピックアップして紹介する連載。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー