「世界初」で「世界最高性能」、ルネサスから28nm車載マイコン:ルネサス RH850/E2x
ルネサスが28nmプロセスを採用したフラッシュメモリ内蔵車載マイコンのサンプル出荷を開始した。28nmプロセス採用のフラッシュメモリ内蔵マイコンのサンプル出荷は「世界初」であり、フラッシュメモリ内蔵車載マイコンの処理性能としても「世界最高」をうたう。
ルネサス エレクトロニクスは2018年3月27日、28nmプロセスを採用したフラッシュメモリ内蔵車載マイコン「RH850/E2xシリーズ」のサンプル出荷を開始したと発表した。動作周波数400MHzのプロセッサを最大6コア集積しており処理性能は9600MIPSに達する。フラッシュメモリも最大16MBの容量を内蔵。28nmプロセス採用のフラッシュメモリ内蔵マイコンのサンプル出荷は「世界初」(ルネサス)、フラッシュメモリ内蔵車載マイコンの処理性能としては「世界最高」(同社)としている。
パワートレイン向けとなるRH850/E2xシリーズは「エコカーに対応する高い演算性能」「コネクテッドカーに対応する大容量フラッシュ」「自動運転に対応する機能安全」を特徴としている。
エコカーに対応する高い演算性能では、最大6コアの400MHzプロセッサによる処理性能、9600MIPSで実現した。40nmプロセスを採用する従来品「RH850/E1xシリーズ」と比較すると、消費電力当たりの性能比で約3倍に向上したとする。また、高精度な車載制御機能に必要なセンサーインタフェースを強化して搭載しており、ECU(電子制御ユニット)の統合化も図れるという。次世代の低燃費エンジンに用いられる新たな燃焼方式の制御や、EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)などの電動システムの高効率化や小型化には、車載マイコンにより高い演算性能や高集積化が求められていた。
コネクテッドカーに対応する大容量フラッシュでは、RH850/E1xシリーズの4倍となる16MBのフラッシュメモリを搭載した。ECUのソフトウェアを無線通信により自動でアップデートするOTA(Over The Air)では、従来よりも大容量のフラッシュメモリが求められており、これに対応した。シリアルインタフェースについても、従来のCANよりも高速なCAN FDを最大10チャネル、Ethernetを1チャネル搭載。Evita Mediumに対応したセキュリティ機能にも対応し、安全かつ短時間でのソフトウェアのOTAアップデートが可能になるという。
自動運転に対応する機能安全では、自動車向け機能安全規格のISO 26262で最も高い安全要求レベルであるASIL Dに対応すべく、2個のプロセッサコアを使って演算の同一性を担保するデュアルコアロックステップ方式の構成を最大4セット搭載した。RH850/E2xシリーズの最大6コアのうち、4コアをデュアルコアロックステップ方式の構成にすることが可能だ。28nmプロセスの車載マイコンを搭載する自動車では、完全自動運転と呼ばれるレベル4以上の自動運転技術への対応が求められる。ルネサスの自動運転技術への対応は、ISO 26262への準拠を強みとしており、RH850/E2xシリーズはさらにそれを推し進めた格好だ。
なお、RH850/E2xシリーズはTSMCが生産する。ルネサスとTSMCは2016年9月に28nmマイコンの開発で協業することを発表しており、RH850/E2xシリーズはその成果だ。フラッシュメモリ技術としては、ルネサスが2015年9月に発表したSG-MONOS型を用いている。SG-MONOS型は、先端ロジックプロセスとの親和性が高く、28nmプロセスのフラッシュメモリ内蔵マイコンを実現する上で重要な役割を果たしたという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 問われる「自動運転車」の安全性、Uber死亡事故が突き付ける現実
今回の出来事を教訓に、安全性に対する議論がより良い方向に進むことを望みます。 - トヨタも取り組む次世代モビリティ戦略の一手、「MaaS」とは何か?
自動運転やコネクテッドカーといった自動車技術の発展と同時に、ライドシェアに代表されるサービスとしての乗り物「MaaS(Mobility as a Service)」への関心が高まっている。このMaaS市場に向けて各種モビリティサービスを手掛けるディー・エヌ・エー(DeNA)が、MaaSの概要とその可能性について事例などを交えて解説した。 - JAXAと自動車工業会、自動運転車AIの品質保証に連携
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、自動運転車など人工知能(AI)によって自働化するシステムの品質保証に向け、日本自動車工業会との連携を開始した。 - 東芝が「世界最高」性能の自動運転車向けライダー、測定距離が2倍に
東芝は、自動運転システムのセンサーなどに用いられるライダー(LiDAR)向けの計測回路技術を開発した。従来の車載用ライダーと比較して測定可能距離が2倍となる200mを実現しており、その性能は「世界最高」(同社)だという。 - トヨタらがAIで乗客の需要を予測、タクシーの売り上げは2割増
トヨタ自動車と日本交通子会社のJapanTaxi、KDDI、アクセンチュアは、タクシーの需要予測を車両に配信する配車支援システムを共同開発し、東京都内で試験導入を開始した。