自動運転車の事故はMaaSの「冷や水」か:TechFactory通信 編集後記
配車サービス大手のUberの自動運転車が2018年3月18日(米国時間)、死亡事故を起こしました。この事故は移動をサービスとして提供する「MaaS」に影響を及ぼすのでしょうか。
既に多くの報道がなされているよう、米Uber Technologiesが自動運転車の公道実験中に死亡事故を起こしました。カメラやLiDARなど複数のセンシングシステムを搭載しながら、なぜ、死亡事故という最悪の事態を引き起こしたのか。その疑問に対しては今後の調査を待たなくてはなりませんが、余波は当事者であるUber以外にも広がりつつあります。
北米で自動運転の公道テストを行っているのはUberだけではありません。Uberは事故を受けてテストの中止を決め、トヨタ自動車とNVIDIAも一時的な中止を決めたと報道されています。他社の実験中止は伝えられていませんが、死亡事故という大きな事故を起こした以上、Uberひいては自動運転技術そのものの安全性を疑問視する声が挙がることは想像に難くありません。
自動運転には運転者(搭乗者)の利便性向上という価値もありますが、「自動車」と「運転者」を切り離す技術でもあるため、移動をサービスとして提供する「MaaS(Mobility as a Service:サービスとしてのモビリティ)」の実現手段としても期待されています。今回の事故は、MaaSの実用化にも影響を及ぼすのでしょうか。
ネット上には「モータリゼーション初期のように、新たな利便性や価値を創造する過程での事故は避けられない」「人命に被害が及んだ以上、可能な限り慎重になるべきだ」などさまざまな意見が見られます。ですが、「自動運転車の事故は、MaaSの実用化に影響を及ぼすか」という問いに対しては、イエスと答えるしかないでしょう。
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