IoT社会はセンサーネットワークによって実現する:アナリストオピニオン
IoT(Internet of Things)社会の実現には情報収集手段が不可欠であり、データ収集を目的とする“センサーネットワーク”への期待は今後より一層高まってくる。
センサーネットワークはIoT社会実現の基盤テクノロジー
近い将来に到来が見込まれるIoT社会。その実現には情報収集手段が必要であり、そこで注目されるITテクノロジーに“センサーネットワーク(センサーシステム)”がある。
センサーネットワークは従来、投資効果が明確なカテゴリー(エネルギー監視、機械警備、自動車など)で実用化が進んだ。そして現在では、モバイル環境の高度化・低廉化、無線通信技術の向上、ビッグデータ/データ解析技術の進展、機器・デバイスの低廉化といった環境変化があり、そのビジネスの裾野が広がっている。
IoTで実現する社会構造
IoT社会で実現することは、「(状態や環境データなどの)見える化」「意思決定支援」「自動認識・自動制御」「遠隔監視/IoTモニタリング」「測位・位置情報」「(データ解析/AIと連動した)予知・予測・予防」「(不動産などでの)価値向上」「新たなビジネスモデルの創出」などである。言い換えれば、“つながる社会”になることで、今までになかった社会構造を実現するものである。
現在、IoTは「データの見える化」→「収集データの解析」→「付加価値の創出/新たな知見の獲得」へと進んでおり、より実効性の高い仕組みに移行している段階にある。
繰り返すが、センサーネットワークはこのIoT社会を実現する上での重要な要素技術であり、注目されるスマート工場やスマートハウス、さらにはスマートシティー/スマートコミュニティーなどを実現する上での不可欠なテクノロジーである。そして一層のIoT社会の深化に伴い、センサーネットワークへの期待は一層高まってくる。
データ活用の活性化には法制度の見直しもポイント
センサーネットワークの目的はデータ収集である。特に、製造現場や運輸・物流、エネルギー監視、自然・環境監視などでは、データの利活用方法によっては大きな価値を生むことが期待される。
しかし現状、これらの分野での有効データは、企業や事業者などが内部で抱え、いわゆる「ネットワークに乗ってこない」場合がほとんどだ。言い換えれば、企業・事業者サイドでは積極的に内部データを外部に出す風潮がない(逆に情報は秘匿傾向が強い)。
また、日本では、企業や事業者が持つデータの利活用や売買、保護に関する法制度が追い付いておらず、この部分もデータ活用での阻害要因になっている。
しかし、日本でも、2017年の日本再興戦略(成長戦略)において、データ利用に関する新たな指針を反映した“ビッグデータ活用”を、そこでの柱の1つとする方向性が出てきた。
今後、法整備が進めば、ビッグデータの売買や流通、共同利用などが進展し、新たなビジネスやサービスの創出、産業育成、社会全体のスマート化などが期待される。
将来的には、個人の健康診断記録やカルテ情報(診察情報、疾病情報)など、より高度な機微情報の扱いも俎上(そじょう)に上ると考えられ、これらのデータを活用することで、健康寿命延伸への寄与も期待される。これは社会保障費の抑制といった国家課題への貢献にもなる。
このようにセンサーネットワークとデータ活用は不可分の関係にある。今後のIoT社会において、データおよびデータ活用が有効性を持つためには、その基盤としてのセンサーネットワークが必須となってくる。併せて、データ活用をスムーズに行えるような仕組みや制度を整えることも、データ活用社会の実現には不可欠であると考える。
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