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岸和田ハリケーンズ vs ボストン・レッドソックス ―― CMMIの落とし穴(その2)組み込みエンジニアの現場力養成ドリル(31)(1/3 ページ)

CMMIは、ソフトウェアを開発する会社が、どの程度きちんと開発できる能力があるかを示す「通信簿」。このCMMIの最高評価であるレベル5の認定を受けたソフトウェア開発会社はインドや中国にたくさんあります。そんな会社は本当にスゴイのか? そんな会社にオフショア開発を発注すると完璧にこなしてくれるのか? そんな疑問に答えつつ、そもそもCMMIとは何か、どこに落とし穴があるかを解説し、CMMIとうまく付き合う方法を書いていきます。

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 前回に続き、CMMI(Capability Maturity Model Integration)を取り上げます。CMMIは、ソフトウェアを開発する会社が、どの程度きちんと開発できる能力があるかを示す「通信簿」で、レベル1からレベル5までの5段階で評価します。このあたりは、小学校の通信簿と全く同じ発想です。レベル5は、ボクシングの世界チャンピオンみたいにすごそうですが、意外な落とし穴があります。

 CMMIの最高評価であるレベル5の認定を受けたソフトウェア開発会社はインドや中国にたくさんあります。そんな会社は本当にスゴイのか? そんな会社にオフショア開発を発注すると完璧にこなしてくれるのか? そんな疑問に答えつつ、そもそもCMMIとは何か、どこに落とし穴があるかを解説し、CMMIとうまく付き合う方法を書いていきます。

前回のおさらい

 前回は、CMMIの基本的な考え方を解説しました。1980年代の米国で(特に、国防総省関係で)、民間に発注したソフトウェア開発がスケジュール通りに納入されず、しかも、機能の実装漏れがあったり、バグだらけであったりすることから、国防計画が思うように進みません。当時の米国は、ソビエトとの冷戦の真っ最中だったため、国防総省は全力で解決策を模索しました。

 理想的で精度の高い解決策は、政府が公募するソフトウェア開発の競争入札に参加するソフトウェア開発会社を対象に、これまで作ったソフトウェアを過去5年分ほどチェックし、納期を順守したか、バグの発生具合と品質制御のデータ、生産性のデータ、見積もりと実際の差などを分析することです。入札してくる数百社の会社にそんな面倒なことをする時間の余裕も予算もありません。そこで、「きちんとした開発会社であれば、納期通りにバグのないソフトウェアを予算内で作るはずだ」と考え、「入札する会社が、きちんとしているかどうかをチェックすればいい。評価組織に、各社がどれぐらいちゃんとしているかをレベル1から5までで評価させ、レベル3以上の組織に入札への参加権を与えよう」となりました。

3つの問題点

 CMMIの考え方は、「しつけの厳しい家庭であれば、そこの子供は礼儀正しく、正義感にあふれ、他人を思いやることができ、学業の成績もよい」と考えるのと同じです。そう思う気持ちは理解できますが、問題が3つあります。

 問題その1は、「ウチの子に限って」症候群です。

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