ダイハツ「スマートアシスト」がデンソー製ステレオカメラ採用:ダイハツ スマートアシスト
ダイハツ工業が衝突回避支援システム「スマートアシスト」の改良版となる「スマートアシストIII」にステレオカメラを採用する。これまではレーザーレーダーと単眼カメラの組み合わせだった。歩行者対応の自動ブレーキが実現するなど、性能向上を図っている。
ダイハツ工業は2016年11月30日、衝突回避支援システム「スマートアシスト」の改良版となる「スマートアシストIII」(以下、スマートアシスト3)を開発したと発表した。現行のスマートアシストII(以下、スマートアシスト2)では単眼カメラとレーザーレーダーを組み合わせていたが、新しいシステムはステレオカメラに置き換えて対歩行者の自動ブレーキに対応した。
スマートアシスト2の設定は廃止し、一部改良や全面改良に合わせて軽自動車だけでなく登録車にもスマートアシスト3を展開していく。スマートアシスト3は、軽自動車「タント」と軽福祉車両「タント スローパー」「タント ウェルカムシート」に搭載して同日から発売する。タントの車両価格は122万円から、スマートアシスト3搭載モデルは非搭載モデルから6万4800円増の128万円からとなっている。
ステレオカメラで作動速度が向上
スマートアシスト3の機能面での改善点は、対歩行者の自動ブレーキに対応したことだ。スマートアシスト2では、歩行者を検知して衝突の可能性を警告する段階までしか対応していなかった。
また、車両や歩行者との衝突する可能性を車両側が検知し、ドライバーがブレーキを踏んだ場合、ブレーキアシストを作動させる機能も今回新たに搭載している。時速25km以上でオートハイビームが作動する機能も、スマートアシスト3で実現している。
単眼カメラとレーザーレーダーの組み合わせから、ステレオカメラのみのシステムに変更したことにより、システムが対応可能な速度域が拡大して検知性能が高まった。
対車両の自動ブレーキは、スマートアシスト2では走行速度の上限が時速50kmまでだったが、スマートアシスト3では時速80kmまで向上した。また、作動可能な速度差の範囲も拡大した。対車両の衝突警告機能は、スマートアシスト2では速度差が時速60kmまでだったが、新システムは時速100kmの速度差まで対応している。
スマートアシスト3の初採用をタントにしたのは「最量販モデルに搭載することで、衝突回避支援システムの普及につなげたい」(ダイハツ工業)のが理由だ。また、「登録車の開発は軽自動車で磨いたノウハウを起点にする」(同社)ため、直近で発売したコンパクトハイトワゴンの「トール」(トヨタ自動車は「ルーミー」「タンク」、富士重工業は「ジャスティ」としてダイハツ工業からOEM供給を受けて販売)にはスマートアシスト3を搭載しなかった。搭載車と非搭載車の価格差は、スマートアシスト2の設定とほぼ同等だ。
デンソー製の世界最小ステレオカメラ
スマートアシスト3のステレオカメラは、デンソーがサプライヤーだ。左右のカメラの間隔は80mmで、ステレオカメラとしては「世界最小」(ダイハツ工業)としている。
軽自動車でのステレオカメラ採用は、スズキが先行している。スズキもスマートアシスト2と同様にレーザーレーダーを使ったシステム「レーダーブレーキサポート」を搭載してきたが、2015年5月からステレオカメラを搭載する運転支援システム「デュアルカメラブレーキサポート」の展開を始めた。なお、ダイハツ工業がスマートアシスト2を廃止するのに対し、レーダーブレーキサポートの設定は存続している。
スズキが使うステレオカメラのサプライヤーは、富士重工業の「EyeSight(アイサイト)」のステレオカメラも手掛けている日立オートモティブシステムズだ。同社は、軽自動車や小型車にも搭載可能なステレオカメラが求められていることに対応し、2つのカメラの間隔を同社の従来製品と比較して2分の1に縮小。搭載性を高めたことにより、スズキでの採用に至った。
小型化が性能に与える影響は?
スズキが採用しているステレオカメラは軽自動車/登録車ともに、2つのカメラの間隔が160mmだ。デンソーはこれよりもさらに小型化を図ったステレオカメラを市場投入してきたことになる。ステレオカメラはカメラ間の距離が大きくなるほど左右方向や上下方向の位置ずれが大きくなり正確な検知が難しくなるが、測定範囲は広くなる。カメラ間の距離だけでは運転支援システムとしての優位性は出ない。
性能を比較すると、スズキのデュアルカメラブレーキサポートは、走行速度が時速100kmまで衝突被害の軽減や回避支援が可能だが、ダイハツのスマートアシスト3は対車両で時速80kmまでだ。反対に、歩行者に対して衝突回避が可能な速度は、デュアルカメラブレーキサポートが時速30kmまでとなっているが、スマートアシスト3は時速50kmまで対応する。
スズキもダイハツ工業もコスト低減を重視していることから、ステアリングの制御と連動しなければならないレーンキープアシストや危機回避アシスト、加速の制御も関わるクルーズコントロールには対応していない。
ステレオカメラのみをセンサーとする運転支援システムが、軽自動車や小型車でさらに増えていきそうだ。メーカーごとの性能が比較される自動車アセスメントの結果に注目が集まる。
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