大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Intelの工場新設やTSMC/UMC/Samsungの巨額投資、半導体各社が生産能力拡充(2/3 ページ)
図1は2020年度のIntelのForm 10-Kからの抜粋だが、前CEOのBob Swan氏がCEOを務めていた2018年から2020年の間、同社はひたすらフリーキャッシュフロー(FCF)を積み増すことに専念していた。Swan氏の前のCEOだったBrian Krzanich氏がM&Aを連発し、これに資金を費やしていたのとは好対照である。
ちょっとキツい言い方をすれば、
- Krzanich氏:M&Aによって新しい収益の柱を作る事を目指した(そして失敗した)
- Swan氏:既存の製品ポートフォリオの中で最大限の収益を目指した(そして成功した)
というあたりだと思う。Swan氏は、新しい時代にIntelを適合させるための戦略は、ついに最後まで立てられなかったと筆者は考える。そもそもInterm CEOとして急きょ登壇する羽目になり、そのままPermanent CEOに昇格してしまったSwan氏にとって、新しい時代にIntelをどう適合させるかの戦略を立てるのは明らかに荷が重かったのだろう。ただSwan氏は誠実であった。戦略を自分で立てられないのであれば、戦略を立てられる後継者が来るまでの時間稼ぎをする必要があり、これはきちんと実行された。10/7nmプロセスの不調やAMDによる猛攻をしのぎつつ、Swan氏の時代にIntelは売り上げをきちんと立て、FCFを積み増すことに成功しているのだから、その意味ではSwan氏はきちんと仕事をこなしたと言える。
2020年末で211億米ドルのFCFがあるということは、理論上はアリゾナへの200億米ドル投資は無借金で可能だし、ニューメキシコの35億米ドルも(今年中に稼ぐキャッシュフローを追加すれば)ぎりぎり無借金でも可能である。EUの工場新設まではカバーできないが、オレゴンやニューメキシコについても別に今年中にそれを全部支払う必要はない訳で、しかも毎年それなりにキャッシュフローを積み重ねている同社の財務状況からすれば、無理な投資では全くない。ただ、これでSwan CEOの時代に積み重ねていたフリーキャッシュをほぼ使い切る事になる。その意味では、現CEOであるPatrick Gelsinger氏はキチンと戦略を立て、そこにある意味全振りしたとも言える。
変な言い方かもしれないが、ここに来て急速に半導体の供給不足が騒がれる様になり、また先端Fabがアジア(前工程が台湾と韓国、後工程が台湾・韓国・中国・シンガポール)に集中するという地域偏在が問題になり始めたことで、同社のIDM 2.0という戦略はその地域偏在を是正するという観点からも支持されるようになってきた。
ただそもそも何でこんなに偏在したのか? というと、もちろんIBM/Globalfoundriesが先端プロセス量産から撤退したのも大きな理由ではあるが、それに加えてIntelが14/10/7nmの開発で後れを取った事も大きな理由である。この結果としてIntel自身も2019年あたりから次第に製品供給が滞るようになり、これがAMDの躍進やTSMCの供給ひっ迫の遠因になっているのもまた事実である。
その意味では、IntelがIDM 2.0を成功させられるかどうかは、7nmプロセスが本当にGelsinger CEOが言うように「問題が解決した」かどうかにかかっている。これが本当に解決して、Intel社内の需要を満たすだけでなくFoundry Serviceを立ち上げて外部の需要を満たせるようになれば、長期的には地域偏在の是正にも貢献する可能性がある。
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