クアルコム
「AIチップの単純な機能競争に意味は薄い」、クアルコム幹部が語る
NXPの買収を進めるクアルコムの幹部が来日、同社の事業戦略を語った。半導体企業の新要素として期待されるAIについては「電力もしくは価格当たりの効率性能が大きな意味を持つ」と、モバイルで鍛えられた企業ならではの見解を示した。
スマートフォン向けSoC(System on Chip)で大きな存在感を持つクアルコムだが、近年は「脱スマホ」の動きを強めている。産業機器分野に向けてSnapdragon 410E/600Eといった製品を投入する他、組み込みソフトウェア企業との提携、NXPセミコンダクターズの買収によって車載やIoTデバイスといった分野でも存在感の発揮を狙う。
NXPの買収は2018年にずれ込む公算が高いものの、来日した米Qualcommのラジ・タルーリ氏(Raj Talluri、Senior Vice President Product Management)は「NXPの買収が完了すれば、さらに充実した製品を提供できる。Snapdragonのハイエンドを充実させてボトムへ波及させるという戦略に変化はない」と戦略に変更はないと明言する。また、AI(DNN/CNN)チップについては、「電力もしくは価格当たりの効率性能が大きな意味を持つ」とモバイル市場で鍛えられた企業ならではの見解を示した。
デバイスへ「知性」を持たせるために
約5兆円(当時)という巨額資金を投入してのNXP買収が発表されたのは、2016年10月27日(米国時間)のことだ。スマホ市場の成長鈍化という市況分析もあり、スマホ向けSoCとライセンス収入が売り上げの9割を占めるクアルコムからすれば、車載半導体やIoTデバイス向けマイコンに強いNXPの買収劇は、必然性からの行動といえる。
来日したタルーリ氏が語った事業戦略は「モバイル(スマホ)からのイノベーション加速」という従来の主張に「エッジコンピューティングの重要性」を加味したもので、タルーリ氏はエンドデバイス側の能力を拡大する流れはさまざまな産業/業界に波及していると述べる。
確かにIoTの普及に従い、全ての処理をクラウド側で行うのではなく、ある程度の処理をデバイス(もしくはゲートウェイ)で行うという考えは賛同者を増やしており、「エッジコンピューティング」や「フォグコンピューティング」といった言葉を聞く機会も増えている。
こうした考えにおいては、エンドデバイスとクラウドのそれぞれに対してどのような機能の割り当てをするかがシステム設計上のポイントになるが、タルーリ氏はエンドデバイス側で実装すべき機能(要件)の筆頭としてセキュリティを挙げる。その上で、ネットワーク接続された監視カメラのような利用であれば、監視カメラに搭載されるチップの能力向上によって「エンドデバイスで判断、クラウドは映像保存」といった役割分担が現実可能であるし、望ましいだろうと述べる。
「エッジコンピューティングは(デバイスとクラウドを直接つなぐと発生する)遅延とコストの問題を解決する。そしてデバイス側のインテリジェンスが増すことで、さまざまなことができるようになる。デバイスにインテリジェンスを持たせることが、あらゆる面で最高のソリューションだ」(タルーリ氏)
デバイスに「インテリジェンス」を持たせるため、SoCの高機能化を進めていく。LTEモデムや画像処理エンジンといった機能はもちろん、GPUやDSPなども強化していく。DNN/CNN実行用のニューロエンジン(AI機能)も対象とするが、AIチップの実装をうたう競合に対しては「単なる処理能力ではなく、電力当たり、もしくは価格当たりなどの効率性能が大きな意味を持つと考えている」と、かつてインテルらが繰り広げたCPU周波数競争のような単純比較に乗りたくないという考えを示す。
Snapdragonシリーズのバリエーション拡大については「サイズとコストを勘案しながら進めていく。ハイエンドを充実させたのちに下位を充実させる戦略に変わりは無い」と慎重な姿勢を崩さないが、現在買収手続きを進めており、i.MXシリーズを有するNXPとの買収が完了すれば「さら充実した製品を提供できるはずだ」とNXPのポートフォリオに期待する発言もあった。
NXPの買収もあり市場的には車載やIoTにかじを切るように見えるクアルコムだが、これらの市場は基本的に搭載チップの少量多品種生産が求められ、スマホ向けSoCのように製品数を絞り込んで収益性を高める戦略は取れない。ただ、この新市場に向けた戦略は思った以上にシンプルだった、
「有望視している市場は3つ。スマートウォッチやVR用HMDなどのウェアラブル、スマートスピーカーなどの家庭用機器、POSなどといった産業用の3つ。向こう5年間でどのような成長極点になるか、見極めていきたい。思った通りにならないかもしれないが、そうならば切り替える。シンプルな進め方だろう?」(タルーリ氏)
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