エンジニアリングやモノづくり分野の技術進化が、今まで以上に地方の課題解決や魅力発掘の後押しとなる。本連載の主役は、かつて“製造業不毛の地”といわれていた沖縄。第5回では、FABスペースを備えた開発拠点「スタートアップカフェ・コザ」のオープンを記念して開催されたイベントや個別取材の内容を基に、「沖縄」でモノづくりに取り組む意義を考えてみた。
那覇空港から高速道路を使って北上することおよそ40分。沖縄本島の中部に位置するのが「コザ」と呼ばれる街だ。米軍基地の影響を受けハードロック文化が根付き、夜の街は異国情緒が溢れる。ハードロックのライブを楽しめるお店があったと思えば、すぐ近くには沖縄民謡を聞けるスナックもある(図1)。
そんな音楽と芸能の街で、これまでの街のイメージをガラリと変えるような新しいセミナー/講座が立て続けに開催されている。例えば、こんなタイトルだ。
首都圏に住む読者は、IoT? 3Dモデリング? 3Dプリンタ? そんなテーマのセミナーや講座なんて山ほどあるじゃない……と思われるかもしれないが、沖縄在住の筆者にとっては衝撃的だった。
理由は2つ。沖縄にはIoTや3Dプリンタといった、モノづくり分野の新しい技術テーマに取り組む企業はあっても、一般の参加者を広く募るセミナーや講座は非常に少なかったこと。そしてそれが、コザという街で開催されていることである。筆者を含めた多くの沖縄県民にとって、コザは音楽や芸能の街という印象が強く、モノづくり分野の新しい技術テーマにはなじみがなかった。
これらのセミナー/講座を主催するのは、2016年8月5日に正式オープンしたばかりの「スタートアップカフェ・コザ(STARTUP CAFE KOZA)」だ(補足1)。
スタートアップカフェ・コザは、沖縄市の「創業・起業総合支援事業」の支援を受けてオープンした。沖縄市やハナハナワークス沖縄をはじめ、複数の企業/団体が運営に携わっている。
スタートアップカフェ・コザは、起業家やスタートアップ企業を支援することを目的にした開発拠点。そのFABスペースとして併設されている「沖縄ミライファクトリー(OKINAWA MIRAI FACTORY)」では、誰でも自由に使える(有料)3Dプリンタや3Dスキャナー、レーザーカッター、CNC切削機といった工作機械を備える。沖縄ミライファクトリーの管理人を務めるのは、3Dプリンタを使ったモノづくりや開発支援に長年取り組んできた西村大氏である。
沖縄にはこれまでも、スタートアップ企業を支援するさまざまな制度や施設があったが、モノづくり分野に特化した事例は新しい。スタートアップカフェ・コザのオープンを記念して2016年8月5日に開催された「スタートアップチャンプルー PROXIMO」と題したイベントの内容や個別取材の内容を基に、沖縄ミライファクトリーが目指すことや、「沖縄」という地方都市でモノづくりに取り組む意義を紹介しよう。
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