東京大学は、ナノファイバーを用いることで半径80μmまで折り曲げても圧力センサーとしての性質が変化しないフレキシブル圧力センサーを開発したと発表した。
東京大学は2016年1月26日、曲げても性質が変化せず、正確に測定できるフレキシブル圧力センサーを開発したと発表した。同大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授、リー・ソンウォン博士研究員らの研究グループによるもので、成果は同年1月25日に、英科学誌「Nature Nanotechnology」オンライン速報版で公開された。
近年、ウェアラブルエレクトロニクスの装着感を低減するため、生体に密着する柔らかい圧力センサーの開発が進んでいる。しかし、柔らかい素材でできた圧力センサーは、曲げたりよじれたりすると、変形に伴うひずみのためにセンサーの性質が大きく変化してしまい、正確に計測できなくなるという問題があった。
同研究グループは、圧力を感知する素材にナノファイバーを用いて、センサーの厚みを2μmまで薄くすることに成功。これにより、曲げても性質が変化せず、正確に測定できるフレキシブル圧力センサーを開発した。直径300〜700nmのナノファイバー同士が繊維のように絡み合う構造を形成し、50mg/m2と薄くて軽量な、多孔性の素材を可能にした。透明で、貼り付けても目立たない。また、同圧力センサーは、半径80μmまで折り曲げても、圧力センサーとしての性質が変化しないことが確認されたという。
さらに、同研究グループは、多点計測できるフレキシブル圧力センサー(多点センサー)も作製した。同センサーは、12×12の格子状に圧力センサーを並べたもので、全体で144点の圧力を計測できる。全体の厚みは8μm。これを、膨らませた風船の表面に載せ指で風船を押しつぶしたところ、指で圧力をかけたところだけ、圧力の分布を正確に計測することができた。
この研究成果を活用することで、今後、柔らかな曲面上に本センサーを装着して圧力を測定することが可能になるという。例えば、圧力を正確に検出できるゴム手袋を用いて、これまで感覚に頼っていた乳がんのしこりの触診をセンサーで定量化するデジタル触診など、ヘルスケア、医療、福祉、スポーツなど多方面への応用が期待される。
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