大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
CPUを「3度」手放したImagination 背景にRISC-Vのレッドオーシャン化(2/3 ページ)
CPU IPビジネスを3度手放したImagination
実はImaginationがCPUを捨てるのは、これで「3度目」となる。1度目はMETAである。Imaginationは2000年3月、イギリスのEnsigmaという会社を買収し、ここの持っていたDSP IPを自社のものとする。当初はモデム向けなどを想定していたのだが、Imaginationはこれを魔改造して「META-1」というプロセッサを開発する。DSPコアにMulti-ThreadやMMUのサポートを追加して汎用向けCPUに仕立て上げたという、2000年の頃にしばしば見かけた「奔放な構成の」プロセッサ(図6)であったが、STBなどの特定用途向けに採用されるにとどまった。それでも2012年11月にMIPS Technologiesを買収するまでこのMETAアーキテクチャをずっと開発、販売し続けてはいたのだが、MIPS買収に伴いMETA部門は閉鎖され、METAに携わっていたエンジニアは全てMIPSに携わる事になった。これが最初の放棄である。
2度目は言うまでもなく、その買収したMIPSである。2012年11月に買収をアナウンス、2013年2月に買収を完了したのだが、この前年にMIPSは第5世代となるAptivシリーズアーキテクチャを開発して発表しており、ImaginationではこのAptivを引き継ぐ形でWarriorシリーズをまず2013年~2014年に発表。さらに第6世代も同じくWarriorシリーズの名称のまま2014~2015年に発表しているが、Design Winは若干獲得した(例えばIntel子会社のMobileyeの「EyeQ」シリーズ)ものの、それはImaginationの売り上げの柱となりうるほどの大きなものではなかった。結局Imaginationは2017年9月、Canyon Bridgeに5億50000万ポンドでMIPS部門を丸ごと売却した(MIPSコアは中国の手に渡るのか)。これが2度目の放棄である。
これに比べると、今回は発売から放棄までの期間が非常に短い。実質3年弱といったところか。ただここでポイントになるのは、CPUアーキテクチャそのものを放棄したわけではないことだ。恐らくだが、Imaginationは今後もCapapult MCUをGPUの内部コントローラーとして使い続けるだろう。GPU内部にはMCUが必要だし、現在のCatapultを刷新する理由がどこにも無いからだ。またImaginationは引き続きAI向けにGPU IPを提供する。このGPU IPはAI処理の9割以上を処理できる(何しろ主要な処理の9割以上が畳み込みニューラルネットワークだからだ)が、GPUではうまく扱えない処理はわずかながら残る。そのためのサポートプロセッサを組み合わせるのが一般的であり、恐らくここにAPXM-6200が引き続き使われることになるだろう。ホストまで戻して処理を行うより、GPU内部のサポートプロセッサで処理する方がコストが低く、性能を上げやすいからだ。なので、放棄といってもCPU IPの資産そのものを放棄するわけではなく、あくまでCPU IPとして販売する事を放棄しているだけ、というのがこれまでとは違う点になる。これも推察だが、恐らくCPUの開発部隊そのものは今後もImagination内部に残るとは思われる。ただしそれはあくまでも社内向けというか自社製品向けにとどまり、外部に販売する際に必要となるテクニカルサポートなどは削減されることになるだろう。
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