大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
本格離陸はまだ遠い? 光電融合技術の最新動向を解説(1/4 ページ)
今回は、光電融合技術の一つであるCPO(Co-Packaged Optics)関連の話を取り上げる。IntelとBroadcomは、「Hot Interconnects 2024」「Hot Chips 2024」で最新のCPO技術について講演した。
2024年8月は相変わらずのIntelの苦境が伝えられ、また「Raptor Lake」の問題もまだ解決していないのだが、その辺の話は既にいろいろ報じられているのは見送るとして。NVIDIAの決算が良かったにもかかわらず、投資家からの評判がいまひとつで株価が下がった話も、技術的というよりは財務的な問題であって筆者のカバーする範囲ではないので見送らせていただく。
その代わりと言っては何だが、8月21日から「IEEE Hot Interconnects 2024」が、8月25日からは「IEEE Hot Chips 2024」がそれぞれ3日間ずつ開催された。ここからちょっとCPO(Co-Packaged Optics)周りの話をまとめてご紹介したいと思う。
光関連技術の現状
CPOは名前の通り、半導体パッケージの中にOptical部品をどう結合してゆくか、という話である。ちょっと昨今のOpticsの話を最初にしたいと思う。もともと、プロセッサの処理性能がどんどん上がってゆくと、それに応じて外部のI/Oに求められる帯域も当然上がる事になる。ところが、そのI/Oの帯域を上げようとすると、いろいろ不具合というか問題が立ちふさがる。基本帯域を上げるには、バスの幅を増やすか、信号速度を上げるか、である。ところがバスの幅を増やすと物理的に面積を食う事になるし、あんまり本数が多いとその配線にも苦労する事になる。特に信号速度を上げるためにDifferential(差動信号:2本の配線の電位差でデータを表現する)を使うと本数が倍になるし、さらに多数の信号を同期して転送を行う場合、Skewを最小にするために等長配線が要求されたりするから、さらに配線が面倒なことになる。
では信号を高速化するか?というとこちらも限界がある。これは配線長にも関わってくる話で、例えばチップレット間の接続で使われる、つまり数ミリメートルから1~2cmのオーダーであれば、50Gbps(ギガビット/秒)程度は比較的容易だ。ところがメモリの接続(数センチオーダー)だと、特にSingle Endedでも20Gbpsが上限で、エラー補正を挟んでも30Gbpsには届かない程度。Differentialにすると32Gbpsあたりが視野に入る。I/Oバス(PCIeカードとか)などもっと長距離の、数十センチオーダーの物だとDifferentialで64Gbpsあたりまで。最近だとThunderbolt 3がPAM3変調で何とか120Gbpsを狙う(つまり信号速度そのものは80GT/sec)という感じで、おおむね100GT/secを超えるのは難しいとされる。さらに長いNetwork接続では数メートル(サーバラック内の接続)で100Gbpsを通すという規格もあるが、こちらは猛烈なエラー訂正を併用して何とか実現できているレベルである。
この電気信号の速度の頭打ちという話は以前からあり、そこでより高速化が可能な光信号を使ってInterconnectを構築しようというアイデアはずっと存在した。ただ、これまでは光信号の回路をチップに実装するのが到底不可能なほど大きいため、チップからまず電気信号の形で外にI/Fを出し、その先に電気信号と光信号のコンバーターを置いて光信号を出すという実装にならざるを得ず、これが結構なサイズになるためになかなか実用化が難しかった。あと、電気と光の変換のLatencyや消費電力が、ばかにならなかったという問題もある。
Optical周りを小型化してチップレット的に搭載する
ただここ数年は技術の進歩で、このあたりに幾許かの目安が付いてきた。CPOというとSilicon Optics、つまりOptical周りを全てCompute DieのSiliconに統合するというのが長期的というか現状ではまだ見果てぬ夢に近いのだが、そこまでは望まなくとも取りあえずCompute Dieとは分離する形でOptical周りを小型化し、チップレット的に搭載しようというものだ。なぜ分離するか? といえば、現在Silicon Photonicsのインプリメントを行っているプロセスは、CMOSベースと言いつつもプロセスノードは90~40nm程度(メーカーによって異なる)で、FinFETですらないプレーナータイプであり、一方Compute Dieは最低でも7nm世代、実質的には5nm~3nmのFinFETプロセスで、この先は2nmのGAAプロセスに移行しようとかいう話になってる訳で、ここにSilicon Photonicsをぶち込むのは
- 現在のSilicon Photonicsの構成部品はプロセス微細化の影響をほとんど受けない:つまりCMOSのプロセスノードに関係なく一定の大きさになる。なので、同じダイサイズだと製造コストが急騰する先端ノードを使うのはコスト面で不利である
- 先端プロセスでは高速化のため電圧を下げる方向に進んでいるが、Silicon Opticsでは(相対的に)高電圧を使うので相性が良くない
という理由があるからだ。現状では一つのダイに無理やり結合するよりも、複数のダイに分離した方が現実的という判断が行われたわけだ。
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