大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
失敗できないEUV採用Intel 4、Intelが採った手堅い方法とは(3/4 ページ)
そうした一般的な認識は、今回Intelによって明確に否定された(図4)。明示的に“M0をSAQPで構築している”とあるのは、要するにパターン構成のためにEUVは使っていない、という事である。ということは、M0だけでなくトランジスタ層のFinの形成もDUV+液浸のSAQPを使っている公算が非常に高い。
ただしIntelは「複数層でEUVを使っている」と明言しており、これは要するにパターン形成そのものは従来のDUV+液浸のマルチパターニングを踏襲しているが、いくつかのクリティカルな工程(例えばパターンカットとか、VIA用の穴あけ)などでEUVを利用している、と考えるのが自然である。Intel 4では“Gridded Interconnect Architecture”なる新しい配線のための工夫が実装されている(図5)が、この図で言うなら横方向の配線をギリギリ縦配線に引っかからない様にカットするという工程をSAQPで行うのはなかなかに困難(なので左側の様に、横方向が中途半端な位置でカットされていた)だが、EUVを使うとこれを高い精度でカットできる様になる。こうした用途を限られた層(トランジスタ層とM0/M2/M4あたりだろうか)でEUVを使って処理した、というあたりで利用をとどめている可能性が高い。
この理由は3つほど考えられる。一つはEUVを広範に使うには、まだ完全に製造装置が足りない可能性だ。EUVの露光装置は従来のDUV+液浸に比べて数倍以上(何と比較するか次第ではあるが、1台100億円近い)だから、Intelの資本力をもってしてもそうそう台数は用意できない(おまけに調達元がASML一択であり、ASMLの供給能力にも限りがある)。加えてIntelはIntel 4の量産以外にIntel 3/20/18Aやさらにその先のプロセス開発にもEUVを使うから、Intel 4に割り当てられるEUV露光機の数は多くない。図6はIntel 4の量産状況を示したものだが、そもそもの開発と初期の量産はオレゴンのFab D1で行っている。ただFab D1はIntel 4以外ノードの量産も行っており、全部合わせて月産4万ウェハほど。つまりFab D1はIntel 4のために全リソースを割けるような余地はまるでない。こうなると、Intel 4のためにEUV露光装置を大量に割り当てるのは困難だし、必然的にEUVの適用範囲を最小限に抑えることになる。Fab 34の方はもう少し余力はあるだろうが、Copy Exactlyの原則を適用する限り、やはりFab 34でもEUVの利用は最小限になるだろう。
2つ目はまだEUVの使いこなしが十分にできているか怪しい事だ。Gelsinger CEOは7月に行われた2023年第2四半期の決算報告の中で「最初のEUVノードであるIntel 4の開発は実質的に完了した」としているが、これはEUVの利用する範囲を極めて限ったからこその話であって、今後もっと広範にこれを利用しようと考えた場合、ここまで迅速に立ち上げできるかどうかは定かではない。
3つ目はコストの問題である。EUVは例えばDUV+液浸のSAQPと比べた場合、露光の回数が1回で済む分、処理コストそのものは下がると説明されている。実際必要となるマスクの枚数や露光機を利用する回数そのものは明確に減る。ただし、EUV用のマスクはDUV+液浸用のマスクよりも高価格だし、なにより問題は露光機の稼働コストというか消費電力がDUVの10倍以上になる(これはEUVの発生のために大量の電力を必要とするため)ため、EUVを多用すればするほど生産コストが上がる。これを抑えるためには、EUVの利用を最小限に抑えるのが効果的である。
といったあたりである。実のところIntel 4はIntelにとってあまり重要なノードではない。というのは、量産するのはMeteor Lakeのみであり、しかも原則としてIFSでもIntel 4は提供されない(例外的にSiFiveのHorse Creek SoCがIntel 4を使うが、これは中の人が明確に「あれはテストチップだ」と述べており、まぁ実際そんな扱いである)。メインとなるのはIntel 3であり、Intelで言えばコンシューマ向けのArrow Lake、サーバ向けのSierra Forest/Granite RapidsがIntel 3を利用する。Intel 4はそのIntel 3の量産をスムーズに立ち上げるための、いわば露払いの位置付けにある。逆に言えばIntel 4の寿命はそう長くないと考えられ、Fab 34もあるいは2025年ぐらいにはIntel 3に移行するかもしれない。
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