大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
パッケージのリードタイムがほぼ1年に?/Armが中国子会社の経営権を奪回(3/3 ページ)
Armが中国子会社の経営権を奪回
2022年4月29日、Armは同社の中国子会社であるArm Chinaの経営権を奪回したことを発表した。奪回、という表現は穏やかではないのだが、実態はまさしく奪回である。
そもそも事の起こりは2018年にさかのぼる。当時(というか厳密には今もだが)Armの親会社だったSoftbankは、中国におけるArmのIP事業を立ち上げるため、当時Arm Ltd.が保有していたArm China(安謀科技:Arm Technology China Co., Ltd.)の51%を中国の投資コンソーシアムに売却した。これによりArm ChinaはArmの子会社から関連会社に移行した訳だが、このArm ChinaのCEOを務めていたのがAllen Wu氏だ。問題はこのWu氏が利益相反(具体的にはArm IPのライセンス料を割り引く代わりに、自身の会社への投資を顧客に要求した)が発覚したことだ。この結果、ArmとSoftbankは2020年にWoo氏の追放を決定。Arm Chinaの取締役会も賛成多数でWu氏を解任する。
問題は、中国ではこうした決定には社印が必要であり、その社印をWu氏が保有していたことである。なので取締役会の決定にもかかわらずWu氏の解任は成功せず、それどころかArm Chinaが取締役会を提訴するという騒ぎになった。この時点でArm Chinaは事実上Wu氏が独占支配することになった。もちろんArm本社は最新のIP(Armv9もここに含まれる)の提供を中止するなどしたが、Arm Chinaは従来のIPに代えて独自のXPU IPを提供すると発表するなど、もう完全に制御が効かない状態になっていた。ただSoftbankの子会社であるウチはいいが、今後ArmがIPOを目指すとなると、この中国関連会社の独走を放置するわけにはいかない。実際今年2月にArmの再IPOが発表された後で行われたオンラインのQ&Aセッションにおいて
Question「中国においてArm ChinaとArmが対立している問題はIPOに影響しないのか?」
Haas CEO「Arm Chinaの問題はともかくとして、中国においてもArmは広く普及しており、またArm Chinaも良い業績を上げている」
Singh CFO「IPOをするしないにかかわらず、Arm Chinaの問題は当然関心事であり、IPOを行う場合には(Arm Chinaの)収益の可視化や売掛債権の確認が重要となるだろう。われわれ(とArm China)は相互依存の関係である。ただまだIPOの発表から半日しか経っていないので、現時点ではこれ以上の説明はできない」
と歯切れは悪いながらも何かしらの対応が必須、という事は表明されていた。今回リリースによれば、
Arm Ltd、HOPU Investment、およびソフトバンクグループは、Arm Chinaの直接および間接株主として、Arm China取締役会の全会一致の決議を経て、同社の長年の企業統治問題が解決したことを発表する。
Arm China取締役会は中国の中国の法律を完全に順守し、Dr. Renchen LiuとDr. Eric Chenを会社の共同CEOに任命した。またDr. Liuは、当社の法定代理人およびGeneral Managerとして正式に登録され、地元の深セン市政府当局によって受理されている。
と表明しており、恐らくは51%の株式を持つHOPU Investmentからの圧力か何かでWu氏は社印を返還する事になったのではなかろうか(もしくはもっとアクロバティックな何かがあったのかもしれないが、そのあたりは分からない)。
気になるのはWu氏が独自に提供を発表していたXPU IP群であるが、2020年の時点ではまだ発表しただけで提供には至っていなかったはずであり、なので提供を中止する方向で幕引きになるものと思われる。取りあえずはIPOに向けて、懸念事項が一つ減ったのは間違いない。
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