大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
M&A順調も炎上も/RISC-Vエコシステムの急速な興隆(3/3 ページ)
Imagination Technologiesは言うまでもなくGPU IPを提供する会社であり、かつてはMetaと呼ばれる独自のCPU IPも提供していたものの、旧MIPS Technology買収の際にMetaのリソースは全て破棄してMIPSに全賭けした揚げ句、Tallwood Ventureに買収された際にMIPS部門を切り離しており、以後はGPU IPの提供に専念している。厳密に言えば同社のGPU IPの内部の管理用にRISC-VプロセッサIPを活用しており、なので比較的早期からRISC-Vエコシステムには参加していた同社だが、CPU IP単体を提供するというのはまた別の話であって、逆に言えばそこに商機があることを見出したということになる。
実はその分離したMIPS TechnologyもいったんはAIプロセッサを開発するWave Computingというベンチャーに買収されたものの会社更生法の適用を受け、2021年3月にMIPSとして事業を継続する事が明らかになったが、そのMIPS事業の次世代コアはMIPS ISAとRISC-V ISAの両対応になることが2020年11月にオンライン開催されたEmbedded Forumで明らかにされた(図2)。
ただ同社はその後水面下に潜ったというか、あまり新しいニュースは公開されていないのだが、2021年12月にCPU IPの検証プラットフォームを提供するImperasが新しいImperas DVという検証プラットフォームをRISC-V向けに提供した際のリリースの中に、そのImperas DVを利用する企業の名前にMIPS Technologyの名前が入っており、ここからRISC-V対応プロセッサ(2020年の発表ではI8100/I8500/I8800の3つがアナウンスされていたが、2021年中に提供予定とあったものの、まだ遅れているようだ)を引き続き開発中であることが伺い知れる。
別の観点で言えば、2021年はサーバ向けCPUにArmアーキテクチャが大躍進を見せた年であり、特にCloud ProviderのSaaS向けにArmベースのSoCが多くの採用が目立った。ただこれについても、NVIDIA/Armの買収が成立した場合、将来的が不明確になるのは変わらない。幸いにもこうしたProviderはx86からArmへのスムーズな移行を実現できただけに、これを再びRISC-Vに切り替えるのは、x86→Armへの移行に比べると容易だろう。既にソフトウェアベンダーの側はRISC-Vへの移行を念頭にさまざまなミドルウェアのRISC-V対応を進めているし、SiFiveのP650とかAndes TechjologyのAX45MP+NX27Vなど、こうしたマーケットに向けたIPも徐々に増えつつある。他にも仏Cortus SASが2021年6月にHPC向けのRISC-V CPU IPの開発を行っている事を明らかにするなど、サーバ向けも次第に充実する傾向にある。今後Armコアの利用が難しい、という状況に陥った場合は急速にこうしたIPに光が当たることになるだろう。
逆にArmとNVIDIAの買収が破談となった場合、結果的にはRISC-Vエコシステムへの追い風の片方がかなり弱まることになる。とはいっても先に書いたように、買収の是非の決着がつくのはおそらく2023年以降になると見られるわけで、今年も(多少弱まるとは言え)引き続き追い風は続きそうだ。RISC-Vエコシステム(というか、RISC-V Internationalと、それを率いるCalista Redmond CEO)にとって2022年とは、NVIDIA/Armの買収が破談になって追い風の片方がほぼなくなった状態になったとしても、引き続きRISC-Vエコシステムの勢いを衰えさせないような体制作りを求められる年となりそうである。
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