大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
M&A順調も炎上も/RISC-Vエコシステムの急速な興隆(2/3 ページ)
RISC-Vエコシステムの急速な興隆
そのNVIDIAによるArmの買収のメリット(?)を最大限に享受したのがRISC-Vエコシステムである。理由は簡単で、現在のArmの顧客のかなりの部分がNVIDIAの競合だったりするからだ。そうした顧客にとって、ArmがNVIDIAに買収された場合には、自社製品の将来のロードマップそのものが変わってしまう事を意味しかねない。となれば、プランBとして代替案を用意するのは必須であり、ところがMIPSもPowerPCもSPARCも事実上廃れた昨今、代替になり得るアーキテクチャはRISC-Vしかないことになる。
RISC-Vエコシステムの作り方も、こうした問題に対する優れたアプローチとなっている。仕様策定を担うRISC-V Internationalはあくまでも命令セットの標準化に対して責任を負う(し、今後はマーケティングや教育などに力を入れていく)一方、あくまでもオープンな非営利団体として運営されており、RISC-Vの命令セットを自分で使う分には一切コストが掛からないし、なにせ非営利団体だからどこかに買収される危険性も非常に少ない。
もちろんCPUを作るにはそれなりの手間とエンジニアリングコストが掛かるから、IPを購入する事もできるが、それはRISC-Vエコシステムに多数あるパートナー企業から好きな様に選ぶことができる。そうした選択は純粋にユーザー(つまりこれからRISC-Vを使ったSoCなりASICなりを開発しようという企業)の都合だけで行える。Arm ISAと異なり、特定の企業からのIP強制を購入されることもない。加えて言えばカスタム命令を自由に追加することができるのもRISC-Vのメリットである。Armはやっと最近Cortex-M向けに限られたカスタム命令機能を提供し始めているが、まだCortex-A向けには未提供のままである。
この結果、例えばルネサスのように「当初は外部からIPを買うが、長期的には自社内で開発する」といった戦略(図1)を取ることも可能になった。こうした柔軟さは、Armを使っている限り得られないものである。
この「Armエコシステムに参画し続ける場合の将来への不安」と「RISC-Vエコシステムに参画することで得られるメリット」が、RISC-Vへの追い風の両輪となっているのがより明確になったのが、RISC-Vエコシステムにおける2021年の最大の成果としてよいかと思う。その一つの象徴ともいえるが、Imagination TechnologiesのCatapultの発表であろうかと思う。
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