大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
「FPGAの闇落ち」とルネサスのFPGA参入に思うこと(2/4 ページ)
この事情はXilinxも同じである。現時点ではまだAMDによる買収の承認が全て得られたわけではないので一応別会社ではあるが、そのXilinxは2018年にVictor Peng氏がCEOに就任した際に示された最初の戦略が“Data Center First”である(図3)。
実際これ以後同社は、特にデータセンターに向けた製品強化が著しい。もうPeng氏就任の段階で、同社のFPGAはトップエンドのVirtexからボトムエンドのArtixまで全製品がTSMCの16nmを使ったUltraScale+に移行することが決定しており、これに従ってちゃんと製品は出てきたが、これに続くTSMC 7nmを使ったVersalはVirtexのさらに上というか、5GとかAIなどを志向したサーバグレード向けの製品であり、ミドルレンジのKintex/Zynqシリーズを含む、組み込みシステムなどで多用されているグレードに関する今後のロードマップは今もって発表されていないままである。
こうした状況も、天野教授からすれば「闇落ち」と表現されるのも無理ないところではあろう。もっともこれらの戦略はAMDによる買収うんぬんの話が出る前からの話であり、その意味では別にAMDに取り込まれたから、という訳ではない。
これはFPGAトップ2社だけの話ではない。例えばMicrochipだが、旧Actelを買収したMicrosemiを買収したことでFPGAビジネスに参入。IGLOO/ProASICというラインアップに、まずはFusionというMixed Signal FPGAを加えたが、現在の主力製品はPolarFireシリーズで、最大500K LE程度のミドルレンジ製品となっているが、昨今はRISC-VコアをHard IPとして搭載するPolarFire SoC FPGAがメインになり、Solution Businessに次第にシフトしつつある。
この動きがもっと極端なのがLattice Semiconductorである。もともとは旧SiliconBlue由来のICE40という小容量FPGAとミドルレンジのECPシリーズというラインアップで、少なくとも2016年ごろまでは従来と同じGlue Logicに特化することを明言していた。Glue Logicというのは要するに「糊(のり)」である。例えば既にASICがあり、ところが製品の仕様追加とか外部チップの更新/変更があってそのままでは従来のASICに接続できない、なんて場合に間にFPGAを挟み、ここで信号だったりプロトコルだったりの変更を行うといった使い方だ。
同社は2015年にSilicon Imageを買収しており、この資産を生かして映像信号の変換といったGlue Logicに同社のFPGAを活用していた。ただこれだけでは今後のビジネスに十分ではないと思ったのか、2018年あたりからEdge AI向けソリューションをIPコアとして提供し始めていた。ところがその2018年にCEOがJim Anderson氏に変わってから、急速に同社のビジネスの方向性が変わってきた。従来のGlue Logicを切り捨てる、とまでは言わないもののむしろFPGAの価値を高める方向に舵を切っており、より大容量のNexusファミリーを投入するとともにLattice Propelという“HDLを記述しなくてもFPGAプログラミング可能な開発環境”やVision/AI/Security/FAといったソリューションスタックを提供。さらにRISC-VコアもPropel経由で利用可能にするなど、まるっきりXilinxと同じ方向性を向いている(Xilinxも最初はSDSoCとかSDAccelといった、HDLを記述せずにFPGAを利用するためのライブラリ/ツール群をまず提供し、ついでVitisと呼ばれるソフトウェアライブラリを提供し、FPGAを知らないエンジニアでもFPGAが利用できるような環境を現在提供している)。
さすがに同社のFPGAの規模ではXilinxの様にサーバマーケット全体を狙うのは無理だが、例えば同社のSecurity FPGAであるMacxhXO3DはIntelのIce Lake-SPサーバ向けのResilient Server(ファームウェアをSecureな状態でCPUに供給する機能)として利用され、最新のMach-NXは来年投入されるSapphire RapidPサーバ向けのResilient Serverとして利用されることが発表されるなど、高付加価値(≒高価格)用途向けを狙う姿勢そのものに違いはない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
この記事の著者
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社 Green AI] AIで脱炭素計画を最適化、初年度からエネルギーコストとCO2を削減する方法 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の普及戦略が公表 政府が目指すコスト・導入量のロードマップを解説 -
市場調査・トレンド
[スマートジャパン編集部] 導入が加速する再エネ・系統向け蓄電システム コスト・収益性の現状分析 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] いまさら聞けない「ペロブスカイト太陽電池」の基礎知識と政策動向 -
技術文書・技術解説
[スマートジャパン編集部] 「ペロブスカイト太陽電池」の開発動向、日本の投資戦略やコスト目標の見通しは?
関連記事
こんなメディアも見られています
TechFactoryに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
特集
- マテリアルズ・インフォマティクスの動向調査
- 研究・開発職のデジタル活用調査
- 設計・解析業務におけるAI活用
- 3Dプリンタ利用動向調査
- CAD利用動向調査
- つながる工場の現状と課題
- 製造業におけるAI開発および活用の実態
- 設計・製造現場における品質管理
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:フィジカルAIが生み出す新たな「設計思想」――電子版2026年8月号
-
2
半導体装置メーカー 業績まとめ【2027年3月期第1四半期】
-
3
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part4)
-
4
一時は時価総額トヨタ超え キオクシア2026年度の動向
-
5
微細配線間の絶縁劣化をどう捉える? 先端パッケージ評価の最前線
-
6
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part1)
-
7
EE Times Japan×EDN Japan 統合電子版:2026年上半期の半導体業界を振り返る――電子版2026年7月号
-
8
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part3)
-
9
CADツールの見直しは本当に必要? 切り替えの理由と効果を7つの質問で検証
-
10
新入社員に読んで欲しい鉄鋼材料の基礎知識まとめ(Part2)
TechFactory SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechFactoryをフォロー