大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
黄昏の時期に入ったx86(3/3 ページ)
何でこんなことが起きるか? 背景にあるのは、PCにせよサーバにせよ、Intelは圧倒的(粗利で50%を超え、営業利益でも30~40%に達する)な収益を上げている一方で、PCやサーバベンダーは営業利益が数%(下手をすると1%未満)という厳しいビジネスをここ40年近く強いられてきたことにある。とにかくIntelのCPUやチップセットなど一式がものすごく高価なのがその理由であり、昨今AMDがそれでもIntelより値段が安く、しかも高性能ということでシェアを伸ばしてはいるが、根は同じであって、AMDにしたから価格が10分の1になったりはしない。それでもWindowsマシンを顧客が求めている限り、IntelやAMDから仕入れない、という訳には行かなかったわけだ。ところがx86でなくArmでもWindowsが動くとなったら、話は当然変わってくる。QualcommのACPC向けチップセットはやや高価ではあるが、Intelに比べたら極端に安い。サーバ向けSoCもかなり安価である(こちらは本当に一桁とか二桁、価格が違う)。こうなってくると、Armにすることで価格を下げながら利益を増やせることになる。
一度弾みがついたら、流れを逆転させるのは難しい。まだオンプレミス向けのスケールアップサーバに関してはIntelやAMDに多少のアドバンテージはあるが、スケールアウト向けとかエッジ向けではArmベース製品が急速に進展しつつある。クライアント向けでも、12月にQualcommが発表したSnapdragon 888はまだACPC向けではないが、遠からず同じように5nmプロセスを利用したSnapdragon 8cxシリーズの後継製品が投入されることは疑う余地がなく、そうなるとデスクトップとかゲーミングノートはともかく、2-in-1とかに関してはArmに流れていくことは目に見えている。
この流れを食い止める方法はあるのか? といえば、なくはない。AMDにしてもIntelにしても、チップの値段を下げればよい。それだけでArmに移行する理由の半分くらいが消えることになる。さらに言えば、x86のIPのポリシーを緩め、IntelやAMDがArmの様にx86コアのIPを外販すれば、エコシステムパートナーをさらに広げることがまだ可能かもしれない。そうしたパートナーが見つかれば、もう少しx86が延命することもできるだろう。
ただこうした方策はIntelにせよAMDにせよ、取らないだろう。恐らくはこれまで以上にIPをがっちり固めることになるが、もうMicrosoftとの水面下で蹴りあう蜜月(?)の時期は終わっている訳で、次第に売り上げが落ちていくことは免れない。Armのアーキテクチャライセンスを保持しており、必要ならArmベースのZenを出せる(実際K12はかなりのところまで設計が終わっていた)AMDはともかく、x86が市場のシェアを失ったときにIntelがどうなっているのか、は(昨今のIntelのプロセス部門の不調も相まって)非常に心配である。AMDは単に財務状況改善のためには価格を下げられないだけであるが、Intelはx86で稼いだ金をFabに突っ込んでいる訳で、価格を下げるということはFabにこれ以上金を突っ込めないという話になるからだ。
この記事の最後に不穏なことを書いたが、それはこういう形でIntelのビジネスが急速に成立しなくなっていくことを前提にしている。この先わりと順調に(?)マーケットがシュリンクしていくであろうx86にいまだに頼っているIntelは、どこかでビジネスモデルを転換しないと破綻一直線な気がするのだが。
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