大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Folding@Homeに多数のユーザーが集まった理由(4/4 ページ)
Folding@Homeの特徴は、“Point”と呼ばれるクレジットシステムを採用している事だ。つまり、いっぱい計算するといっぱいPointがたまるという、分かりやすいシステムである。ただショップと異なりPointが溜まったからといって支払いに充てられる訳ではないが、その代わり「どれだけPointを貯めたか」を競う仕組みを取り入れている。さらに“Team”を組んでそのTeam間で獲得Pointを競うといった形で参加の動機付けを行っている。もっとも同様のシステムを採用する分散コンピューティングプロジェクトは少なくないが、今回は「COVID-19の対策に貢献できる」という事が、Folding@Homeに多数のユーザーが集まった最大の理由ではないかと思う。逆に言えば、こうした動機付けなしにボランティアベースの分散コンピューティングに多数のユーザーが集まる事は、普通は考えにくい。実際少なからぬ数の分散コンピューティングプロジェクトが、あまり演算性能を獲得できないまま終了している。
プロジェクト主催者の側から見ると、適切なクライアント側ソフトウェアを用意すれば、あとは集計するサーバの手当てだけを行えば良く、その意味では非常にコストパフォーマンスのよい仕組みである。ただ、プロジェクト全体としてみると、必ずしも効率がよいとは言いにくい。筆者の環境(Ryzen 9 3900X+GeForce GTX 1660)で実行してみたところ、CPUだけをフルに動かすと200W、CPU+GPUだと300Wほどの消費電力となった。すごくラフな試算であるが、こちらに準じて考えると、12コアで200Wだから、本日付(記事執筆時の2020年4月9日)のWindowsマシンのCPU Core数(537万1818)がそれぞれ12コアあたり200W消費すると試算すると、実にCPUだけで89.5MWを消費する計算である。Linux/macOSXも同じ割合で消費電力が掛かるとすると、153.9MWほどの消費電力になる。GPUの分も加味すると、300MWオーバーは堅いだろう。2.3EFlops/300MWとすると、1EFlopsあたり130MWほどになるだろうか。夏場だとさらに部屋の冷房に使う分も加味する必要があるだろう。
一方で最近のスーパーコンピュータは? というと、2019年11月のTOP500で1位になったORNLのSummitで148.6PFlops/10.1MWほどだから、1EFlopsあたり68MWほどであまり効率は良くないが、逆に効率の良さを競うGreen500の1位を取った富岳の試作機の場合、2PFlops/118.48KWだから1EFlopsあたり59.2MWである。これらに比べると、Folding@Homeは倍以上電力効率が悪い、ということになる。この電力効率はそのまま電気代に転換されるわけで、要するに高い電気代を参加者に転換できるからこそ成り立っている訳だ。そんなわけで、ボランティアに参加しよう(そして電気代を支払おう)という動機付けをきちんとできるかどうかが最大の鍵であり、Folding@Homeはこれに成功した稀有な例、と言えると思う。
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