大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Folding@Homeに多数のユーザーが集まった理由(3/4 ページ)
COVID-19で注目集めるFolding@Home
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)にまつわる話はいろいろあるが、その中で注目を集めているのがFolding@Homeである。このプロジェクトは分散コンピューティング環境の上で分子動力学シミュレーションを動かし、タンパク質のフォールディング(畳み込み構造)を解析するというものである。この解析結果がアルツハイマーやパーキンソン病、癌やさまざまなウイルスの研究に役立つという学術的なものである。そのFolding@Home、2020年2月23日にCOVID-19によく似た2019-nCoVという近縁種のコロナウイルスのタンパク質構造を解析してモデル化することで治療薬の開発に貢献する取り組みを発表したことで、俄然話題となった。それまでのFolding@Homeの処理性能は、例えば2016年5月11日の時点でおおよそ100PFlops近くと発表されていた。その後もじわじわ増えてはいったのだが、2020年2月23日の発表の直後からFolding@Homeに参加するユーザーが急増。2020年3月20日の時点でおおむね958PFlopsに達している。ちなみに2019年12月23日の時点だと98PFlopsほどだから、3カ月で演算能力が10倍になった形だ。その後もさらに演算能力は増え、2020年3月25日は1.5EFlopsに到達。この原稿を執筆している2020年4月9日現在だと、なんと2.3EFlopsに達している(写真3)。
先日HPE/AMDがDoDとの間で1.5EFlopsの演算性能を持つEl Capitanというスーパーコンピュータを2022年に納入する契約を結んだ事が発表されたが、これを上回る性能が、民間ベースで実現してしまったことになる。
この分散コンピューティング、古い所では例えば1997年に暗号解読を目的としたdistributed.netが設立されるなどしているが、1999年にスタートし、先月末に正式に終了したSETI@Homeの方が日本でもなじみの方が多く有名ではないかと思う。これは地球外生命体の証拠を検出するために、アレシボ天文台の電波望遠鏡の観測データから、何らかの信号と見なせる可能性のある特徴を抽出するという作業で、全世界で520万人以上が参加したとされている。このSETI@HomeはBOINC(Berkeley Open Infrastructure for Network Computing)と呼ばれるミドルウェアの上に構築されている(というか、当初SETI@Homeは独自のフレームワークで構築されたが、これに代わる新しいフレームワークとしてBOINCが開発され、置き換えられた)結果、このBOINCを利用した分散コンピューティングプロジェクトが多数生まれており、その意味ではSETI@Homeのもう一つの目標(「ボランティア・コンピューティング」という概念の検証)は十分に果たせたのではないかと思う。
Folding@Homeの方は、実はプロジェクト開始は2000年10月とかなり早く、それもあってBOINCベースではないが、何度もバージョンアップしており、十分に洗練されたI/Fを持っている。SETI@Home同様にボランティアベースの分散コンピューティングなので、あまり設定とかを難しくすると参加者を増やす障害になる、ということも当然あるだろう(写真4)。CPUだけでなくGPUも利用することができるため、これを利用すると急速に性能が上がるという特徴がある。
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