大原雄介のエレ・組み込みプレイバック
Z-WaveのOpen化/CobhamのRISC-V参入/FPGAが続々RISC-Vに対応(2/3 ページ)
CobhamがRISC-Vに参入
ここからはRISC-Vネタを2つほど。まず1つ目はCobhamのNoel-Vの話である。「Cobhamなんてメーカー知らない」という方が多数かと思うが、ごく一部、ロケットとか衛星に関係したビジネスに携わっている読者ならご存じかもしれない。Cobhamは英国のメーカーで、もともとの社名は“Flight Refuelling Limited”だった。要するに軍用機に装備される空中給油装置を作っていた、軍事企業である。もちろん、今では幅広い範囲の製品を扱っている。
このCobham(正確に言えば、Cobham plcの米国子会社であるCAES:Cobham Advanced Electronic Solutions)は、LEONというプロセッサを航空宇宙向けに提供している。要するに衛星などで利用される高放射線環境でも利用可能な製品である。LEONはもともとはESA(European Space Agency:欧州宇宙機関)が開発したSPARC V8ベースの32bitプロセッサのIPであり、実際にはESAの委託を受けてGaisler Researchが作業を行ったが、このGaisler Researchが2008年にAeroflexという会社に買収され、そのAeroflexが2014年にCobhamに買収された結果、Cobham傘下のCAESがこのLEONの開発元となっている。オリジナルのLEONはDual License(無償のLGPL/GPL FLOSSライセンスと有償の独自ライセンス)形態になっており、無償で入手して自身で製造を行う事もできるし、有償ライセンスを入手してサポート付きで利用することもできる。それもあり、研究機関などの予算が厳しい所では無償版のLEONを利用し、商用衛星などでは有償版を使うなんてケースが一般的である。
実のところこうした航空宇宙向けとなると、一般のプロセッサなどを利用した場合、大気圏外に出た瞬間に宇宙線の影響を受けてまともに動作しなくなる。この分野にはCobhamのほか、e2v(現在はTeledyneに買収されTeledyne e2v)がPowerPCをベースに航空宇宙向けグレードにしたプロセッサ、それとFPGAに関してはActel(現Microchip)が製品を展開しているほか、昔は多くのプロセッサメーカーが軍用グレードとして耐放射線特性の高い製品を用意していたが、最近はCOTS(Commercial Off-The-Shelf:民間向け製品を軍用に転用することでコスト削減)の流れもあって、軍用グレードの製品を扱うメーカーが大幅に減っている。
そんな訳でCobhamのLEONは衛星とかロケットなどでは広く利用されているプロセッサである。LEONはその後LEON 2/3/4と来て、最新のLEON 5はDual issueの7段パイプラインで、4.52 CoreMark/MHz程度の性能を持つが、これはCortex-M7(5.04 CoreMark/MHz)より遅い程度でしかない。おまけにSPARC V8だからまだ32bitアーキテクチャのままであり、さすがに航空宇宙向けとしてもそろそろ不足を感じてきたようだ(ちなみにTeledyne e2vは2019年11月に、64bit PowerPCであるe5500を搭載したQorIQ T1042の航空宇宙向け版をリリースしており、その前の4月にはCortex-A72を搭載したNXPのLS1046Aの航空宇宙向け版が発表済みである)。
そこでCobhamは次は64bit SPARCに移行するのか? と思ったところ、いきなりRISC-Vに転じる決定を下したようだ。最初のデザインであるNoel-VはRV64GC(64bit RISC-Vの基本命令セットをサポート)で、性能は4.69 CoreMark/MHzと、LEON 5よりちょっと高速な程度であるが、最初の製品であることを考えれば妥当な構成だろう。同社からはBSP(Board Support Package)に加え、現在のLEON向けと同等のソフトウェア開発環境を提供予定としている。
こうしたHigh Reliabilityが必要になる分野にもRISC-Vが進出しはじめた、という格好の事例になった気がする。
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これを読めばここ1カ月のエレクトロニクス/組み込み業界の動きが分かる連載。注目すべき市場動向と注目すべき製品を取り上げます。
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