組み込みエンジニアの現場力養成演習ドリル(22)
英語が苦手なエンジニアのための『英文メールの書き方』 ~ 30分で作るための7つのポイント(2/3 ページ)
解答と解説
筆者は、大学で「技術英語2」の授業も担当しています。授業では、メールによる技術的なやり通り、仕様書や設計文書を英文で書く方法や、英語から日本語への翻訳方法、英語によるプレゼンテーションを解説しています。
学生にいつも言っているのは、「皆さんは、英語が苦手で、会社へ入ったら、英語から逃げられると思っているでしょうが、その逆です」「この授業で学ぶのは、『英文解釈』『英作文』『英会話』ではありません。世界のエンジニアの共通言語である英語による『コミュニケーション能力』です。イチロー選手や錦織圭選手が持っている『実践的なコミュニケーション力』を身に付けてください」です。
コミュニケーション手段として、メールは非常に重要です。速く、早く、正確に英文メールを作る基本的な指針として、筆者が学生に指導しているのは、以下の3点です。
- 日本語で普通にメールを作成する。
- 作成した日本語のメールを国際メールの作法に従い、内容を調整、変更する。
- 「Google翻訳」で英語化する。
「30分で英文メールを書くコツ」は、Google翻訳をうまく使いこなすことですが、上記の日本語メールをいきなりGoogle翻訳に入れると、以下のような、「一見それらしいが、意味不明なメール」が出力されます(ぐちゃぐちゃしていて、何が書いてあるか、よく分かりませんね)。国際的に通じる「日本語のメール」の書き方を以下に7つのポイントで解説します。この「日本語メール」を機械翻訳すれば、「国際的に通じる英文メール」に変換できます。
Title: Request
Dear Sir Richard Smith
At the end of the year, it was a busy season, but we are delighted that you are doing well.
Well, it is a bug that your company pointed out (the smartphone freezes when you receive an email with an attached file), but as a result of investigating in our company, while watching a youtube video on the smartphone, voice calls If you receive an email with an attachment of 1Mbit or more when you are talking on an incoming call and the capacity of the mail reception buffer is 500Kbit or less, the input buffer will be devoured due to a memory release leak bug in the mail control program, It turns out that the bug you pointed out caused the phone to freeze.
A modified version of the source code of module "mail_handler_01-03" is attached to this email. Sorry for the inconvenience, but please include this module for final testing. I'd be happy if you could let me know the test results by December 21st.
Thank you very much for your busy schedule.
Ichiro Yamamoto
上記の日本語メールは、日本国内の技術者に送る典型的な形式をしています。日本語のメールとしては、これで十分に意味は通じますが、これをどうすれば海外で通じるメールになるでしょうか。
上記の3つの基本指針と、上記メールの問題点を見ていきましょう。特に重要なのは、「2.日本語のメールを国際メールの作法に従い、内容を調整、変更する」です。
ポイント1:スパム扱いされないよう、題名をキチンと書く
メールは、非常に手軽で速い通信手段ですが、無視される可能性が非常に高いコミュニケーション手段でもあります(図1参照)。
プロジェクトマネージャーのもとへ、1日に100通単位でメールが来ます。1通を読んで返信するのに3分かかるとしても、全部のメールを処理するのに5時間もかかります。そんな悠長にメールを見ている時間はありません。で、題名を見て、読まずに捨てたり、メールハンドラが自動的にスパムメールの箱に入れたりします。題名として、「Hello」「Meeting」「Thank you」「Request」は問題外。即、スパム認定されてゴミ箱行きです。
今回の題名である「お願いの件」は、もっと具体的に、緊急性がある雰囲気を出すべきです。私なら、「12月21日までに修正版を確認してください」とします。題名には、日付やプログラム名などを入れて、具体性を出し、スパムでないことを積極的にアピールすべきです。
ポイント2:時候の挨拶は不要。いきなり用件に入る
日本人は超級真面目で、手紙でいきなり用件に入るのは失礼だと思っています。まずは、時候の挨拶を述べてから本題に入るのが日本式ですね。日本人同士のメールはそれが礼儀ですが、国際的なメールでは、いきなり用件に入るのが正式です。例えば、ホワイトハウスのトランプ大統領から、鷲(ワシ)が13本の矢をつかんでいるレターヘッドが付いた公式文書が届いても、時候のあいさつは一切なく、いきなり1行目から用件が書いてあるはずです。
時候の挨拶として、「北国からは雪の便りが届く今日この頃、ご健勝のことと思います」を「We receive letters saying the arrival of the snow season from the northen countries these days, but I think you are sound and healthy」と訳してメールを出すと、それを受け取ったシリコンバレーのリチャード・スミスさんは、同僚に、「おい、デイビッド、このメールを見てみろよ。イチロー・ヤマモトが俳句を送ってきたぞ」「おぉ、これが、ハイスクールで習ったハイクの本物かぁ」と大騒ぎになるでしょう。英文による国際的なメールでは、「俳句」は不要です。
ポイント3:「起承転結」方式ではなく、「結・起承転」方式で書く
問題として挙げた日本語メールは、典型的な「起承転結」構造になっています。「バグの原因が分かりました」→「修正版のソースコードを作りました」→「修正版でバグが解決できたか、確認してください」→「12月21日までにお願いします」。この構造だと、最後まで読まないと、リチャード・スミスさんには、「山本一郎さんが、私に何をしてほしいのか」が不明です。最後まで読まないと用件が分からないのでは、受け取ったプロジェクトマネージャーは、無駄に時間を取られるため、大きなストレスになります。
国際メールの基本は、「○○をしてほしい。なぜなら××だからだ」と、結論を書いて、事情を説明します。プロジェクトマネージャーは忙しいので、「○○をしてほしい」と書いてあった時点で、それをする時間的、人員的な余裕があれば、「引き受けよう」と考え、以降の文章は斜め読みし、真面目には読みません。
ミステリーで言えば、いきなり、「犯人はこいつだ」と明かし、後からその理由の述べる倒叙形式(この方式の代表が、人気テレビ番組の『刑事コロンボ』と『古畑任三郎』)で書くのが、国際的な技術メールの基本です。
ポイント4:箇条書きを多用する
論文や文芸作品では、箇条書きは使いませんが、技術メールでは、たっぷり使いましょう。特に、今回のメールで、バグが発生する条件を描いていますが、非常に分かりにくい。ここは、箇条書きで書くところですね。
箇条書きにすると、時系列がはっきりしますし、相手がそれに回答や反論する場合、「ところで、(3)ですが、こちらでは該当しません」と、ピンポイントで書けます。誤解が生じる余地がありません。
ポイント5:文字で書いてあることがすべて。「忖度」はない
英文の手紙では、書いてあることだけをそのままの意味で解釈します。一方、日本語の手紙は、「文章」と「文化」をミックスさせて解釈します。「北海道へ旅行に行ってきました。つまらない物ですが、あなたにお土産を買ってきました」と書くと、日本人なら、「とてもいい物なのに、気を遣わせまいと謙遜しているんだな」と思いますが、英文メールでは、文字通り、「えっ、私にガラクタを買ってきたのか?」と解釈します。
この「文化的な違い」は意外に対策が簡単ではありません。日本特有の「謙遜」や「へり下り」は、英文メールでは別の表現にしましょう。謙遜せず、しかも、自慢気な雰囲気も出さずに、言いたいことを表現するのは、非常に高度な言語能力が必要です。私は、プレゼントを渡す時の常套文句、「プレゼントを買ってきました。つまらない物ですが」の英訳は、「Here's something for you. I hope you like it(プレゼントです。気に入っていただけるといいのですが)」がいいと思っています。
ポイント6:上司にCCを送る。
ビジネスメールでは、CCを上司に送るといいでしょう。CCは、「カーボン・コピー」の略で、コピー機のない大昔、白紙の上に墨を塗ったカーボン紙を乗せ、その上にさらに白紙をもう1枚乗せてそこに文面を書いて、複写していました(学生には、「カーボン紙」が何か説明しても、分かってくれません……)。
要は、CCは、「同じ文面を上司にも送ったよ。だから無視すると、上司から叱られるよ」との圧力をかけていることになります。
ポイント7:google翻訳が「食べやすい」ように、日本語を調整する
日本語は、「主語や目的語を省略するほど、日本語らしくなる」という非常に特殊な言語です。以下に例を挙げます。
【例1】
童謡の「シャボン玉飛んだ。屋根まで飛んだ」を聞くと、海外の人は、「なるほど、シャボン玉は飛ぶよね。えっ、屋根もまた飛んだの? 台風の状景なのか?」とビックリするはずです。
日本語に堪能なら、「屋根まで飛んだ」は、「(シャボン玉は)屋根の高さまで飛んだ」と自動的に思いますが、機械翻訳は、「屋根」が飛んだと解釈します。
【例2】
A君「昼ご飯、食った?」
B君「食ったよ」
A君「君んちの猫、昨日、ブロッコリーを食ったんだって?」
B君「食ったよ」
B君の最初の「食ったよ」と2回目の「食ったよ」は意味が異なります。正確には、最初は、「僕は昼飯を食ったよ」であり、2回目は「猫がブロッコリーを食ったよ」になります。主語と目的語が省略されると、機械翻訳は非常に困ります。
原文の日本語を機械翻訳しやすいように、全ての文に、愚直に主語と目的語をつけましょう。英語が得意な人は、無意識にこれを頭の中でやっていて、英会話をしているのです。
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組み込みエンジニアの現場力養成ドリル
このコラムでは、組み込みエンジニアが日々の開発で実際に遭遇する「小さなトラブルを」取り上げ、演習形式で解説します。
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