宮田健の「セキュリティの道も一歩から」(38)
IoTセキュリティの強い味方はハンドブックの形で現れる(2/2 ページ)
IoT機器を“利用”する立場からは製造者はこう見える
特に製造業やIoT機器製作に携わる者にとっては、第2章「パソコン・スマホ・IoT機器のより進んだ使い方やトラブルの対処の仕方を知ろう」を見ておくべきでしょう。これはIoTを「使う」側視点での、サイバーセキュリティ対策といえます。ここでは、IoT機器が進化したことによる「セキュリティのリスク」に関するガイドが記されていますが、その中にはこのような厳しい注意書きもあります。
もう一つ留意したいのは、IoT機器の販売がブームとなり、さまざまな企業が参入する状況でありながら、その企業全てがサイバーセキュリティについて詳しかったり、防御することを十分に留意して設計を行っているわけではない点です。中には明らかにスパイカメラのように、情報を不正に外部に送信するようになっているものすらあります。
IoT機器はきちんとしたネットワーク機器を生産した実績がある企業のものを優先して選択することが現状の安全策です。
IoTベンダーは数え切れないほど増え、消費者から選ばれるにはどうしたらいいか、多くの方が悩んでいるかもしれません。しかし、もう「値段が安いだけ」では怖いということも分かり始めています。「実績がある企業のものを優先して選択することが現状の安全策」という前提で、この章に書かれている利用者視点の注意点が、製品としてクリアできているかをチェックするためにも、このハンドブックは有用かと思います。
万が一のとき、誰を頼るか?
第3章「被害に遭わないために、加害者的立場にならないために」、第4章「会社を守る、災害に備える、海外での心構え」は、多くの組織にとってまさに誰も教えてくれなかったことを教えてくれます。攻撃を受けないためにできることだけでなく、万が一の備えを行うことこそが、小さな組織でいま必要なことだからです。
特に注目したいのは、78ページ「それでも攻撃を受けてしまったときの対処」です。何も知らないと、証拠保全という重要なステップをすり抜け、攻撃されてしまったけど原因が全く分からない、ということになってしまいます。そうならぬよう、転ばぬ先のつえとしてまずはこの章を読んでおきましょう。
そして、さらに重要なのは「相談」「届け出」というステップ。もし皆さんのなかに、攻撃を受けた後どこになにを相談すべきなのかがよく分からない場合、このハンドブックが指針になるはずです。この一点だけでも、この無料のハンドブックをダウンロードする価値があるでしょう。
組織のトップや情報システム部担当だけが読めばいい?
そしてこのハンドブックの対象者は、何も経営者や情報システム部、セキュリティ担当だけではありません。サイバーセキュリティに関係する人、つまり“国民全員”が読むべきです。だからこそ、内閣サイバーセキュリティセンターはこのハンドブックを無料で提供していると考えるべきかもしれません。
冒頭、このハンドブックでは「サイバーセキュリティは全員参加!セキュリティは“公衆衛生”の時代に」と述べています。公衆衛生とは、例えば風邪をひいたときに公共交通機関ではマスクをするだとか、インフルエンザが流行りそうなことが分かれば事前に予防接種を打つなど、共同生活をする上でみんなが守るべきルールです。サイバー世界でも「コンピューターウイルス」と称して現実世界の病気のように名付けられていますが、現実世界とサイバー世界はとても近いものになりつつあります。だからこそ、そこに住む私たち全員が“公衆衛生”として、サイバーセキュリティを学ぶ必要があるのです。
セキュリティの世界は面倒くさいです。それはとてもよく分かります。が、ほんの少し私たちも、そこに歩み寄る必要が出てきました。詐欺や犯罪の被害に遭うと金銭的な被害だけでなく、精神的にも落ち込むでしょう。そのような世界にしないためにも、これを人ごとだと考えず、多くの人にこのハンドブックを手にしてほしいと思います。(次回に続く)
◎併せて読みたいお薦めホワイトペーパー:
» 制御システムの「安全神話」は既に崩壊している
» WannaCryが明らかにした、生産システムセキュリティ「2つの問題点」と「2つの対応策」
» 2つの事例で理解する工場セキュリティ対策の考え方とソリューション導入
» 5分で分かるMirai
» セキュリティリスクから工場/生産ラインをどう守る?
著者紹介:
宮田健(みやた たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。
2019年2月1日に2冊目の本『Q&Aで考えるセキュリティ入門「木曜日のフルット」と学ぼう!<漫画キャラで学ぶ大人のビジネス教養シリーズ>』(エムディエヌコーポレーション)が発売。スマートフォンやPCにある大切なデータや個人情報を、インターネット上の「悪意ある攻撃」などから守るための基本知識をQ&Aのクイズ形式で楽しく学べる本です。
筆者より:TechFactoryでの本連載では、ITセキュリティの「あるべき論」「正論」だけでなく、モノづくりに携わる方たちに「気楽に」「楽しく」セキュリティを考えていただけるように、さまざまな話題を取り上げたいと思います。「セキュリティっていわれてもねえ……」と思わず考えてしまった皆さまに覚えていただけるようなコラムにしたいと思います。お楽しみに!
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宮田健の「セキュリティの道も一歩から」
「モノづくりに携わる人」だからこそ、もう無関心ではいられない情報セキュリティ対策の話。でも堅苦しい内容はちょっと苦手……という方に向けて、今日から使えるセキュリティ雑学・ネタをお届けします。
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